仲良きことは美しきかな〜
「ロイ様お疲れ様でした。改めて優勝おめでとうございます。いや流石、見事なものだったね」
「レイさんが出ていたならどうなっていたか」
「ふふっ、過ぎた謙遜は嫌味になるよ?では私は来賓の方々を送らねばならないから、一旦失礼させて貰うね」
そう言って扉を開けて出て行った。
ここは生徒会室。
エキシビジョンマッチも終わり、大盛況のまま魔法祭は終わった。
ロイさんとわたしは観覧者達にパニックで揉みくちゃにされる事を避けるために、レイさんが試合後一足早く生徒会室に連れてきてくれて休ませて貰ってる。
今日は生徒会の2人は元より、シルクもアベイルさんも御礼や送り出し、片付け等に走り回っているらしい。
そんな中、休ませて貰って…うん。休ませて貰ってる。
「あの…あのね?アナ?その怒りオーラどうにかならないかしら?」
私の座るソファの後ろに立つアナにお伺いを立てる。
休ませて貰ってるのに心が休まってないのよ〜!
部屋にはわたしとロイさんとアナ。
扉の外側には今日は王家の騎士が護衛の為に立っている。
「いえ、怒ってなどおりません」
「嘘よ〜!約束破って離れたのは悪かったけど、ロイさんに呼ばれたのよ?怒るならロイさんにじゃない?」
「お嬢様はわたしを不敬罪で首打ちにしたい様でございますね」
「わかったわよ〜!わたしが悪かったわ〜」
「…フッ」
わたし達のやりとりを見てロイさんが思わず吹き出した。
「仲がいいな」
「もうアナはわたくしの姉みたいなものですから」
そう溜息をつけば、ロイさんはアナへ向き直り、
「アナ、悪かったな。そしてユーリに付いて学園に来て貰って感謝する。これでユリエルの無事は皆に伝わり、これから手を出そうとする馬鹿も減るだろう」
「わたくしには勿体ないお言葉でございます。そしてユリエル様への御配慮、誠に有難う御座います」
深々とお辞儀するアナ。わたしとの対応の差。致し方無し!!!
その時ノックの音が聞こえ返事をすればアベイルさんが入って来た。
「ユリエルさん。お元気そうでなによりです!」
「アベイルさん!その節はお世話になりましたわ。あぁ!そうですわ!バタバタとしてロイさんへの御礼も申し上げておりませんでしたわ!!」
慌てて立ち上がり、2人に頭を下げる
「この度はわたくしの不注意でご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。お二人には特にお世話になったと聞き及んでおりますのに、お詫びも御礼も遅くなり申し訳ありませんわ。本当に有難う御座いました」
「ユーリ、顔を上げろ。無事だった。御礼はそれだけで充分だ。それにあの場に着いたところで俺の出番なんて無かったじゃないか」
「えっと…ボクも御礼を言われる様なことは…」
「まぁ騎士団を動かしたのは俺だが、ユーリを早く見つけられたのは、正直アベイルのお陰なんだ」
立ち上がりロイさんがアベイルさんのポンと背中を叩く。
「アベイルさんの?」
顔を上げ首を傾げれば、
「えっと…前にユリエルさんには少し言ったこともありますが…ボクは人の魔力を見ての人探し…みたいのが出来て…、今まで他の人に言ったこと無かったのですけど…今回、お役に立てるならと…」
「あぁ!前にお掃除の時に隠れてたのを見つけられてしまったアレですね!!そうだったのですか。お陰で助かりましたわ。有難う御座いました」
もう一度深々とお辞儀をして顔を上げれば、そこからはわたしの拐われた後の話を聞いた。
あっという間に拐われたわたしを、恐怖で尻餅をついていた為にわたしの前に現れた時同様、垣根の影に入り気付かれなかったミラさんが慌てて生徒会室まで走り、泣きながら必死でレイさんロットさん、それと手伝っていたシルクにアベイルさんに状況を説明。
そこからシルクはロイさんに連絡。
レイさんとロットさんは学校関係者に現場維持の為に動かない様に、そして情報を漏らさない様に走り回ってくれたらしい。
ロイさんは一部騎士団を動かし、学園の門まで来て手掛かりを探そうとすれば、その場に来ていたアベイルさんが震える声で「えっと…ボク…ある程度なら居場所がわかるかもしれません」と申し出てくれたそうだ。
理由を聞けば、わたしの魔力の僅かな残滓があって、それは空気中の水分に付いて見えているそうだ。
アベイルさんの眼鏡は近眼もあるが、そう言った残滓をガラスを通すことで普段見え難くする為でもあるとの事。
そりゃそこいら中に魔力の残滓が見てたら息も吸うのも躊躇っちゃうわよねぇ?
まぁ残滓なので時間が経てば立つほど見えなく風が吹けば飛ばされてしまう様なものなのだそうなので、ロイさんはアベイルさんを先頭に立たせ、それを追った。
しかしある程度まではわかったものの、時間が経つに連れ、それは混ざり、山の雑木林に入ったところでほぼ消えてしまった。
仕方なく虱潰しに山を探してまわり始めた所で、天候が突然変わり森の奥で雷が落ちた。
それを見たロイさんが騎士団を集め、雷の落ちた先に行けば、山中を走り抜けるクロモリが見え、その先の小屋でわたしが立っていた…と言うことらしい。
「なるほど。わたくしの残滓…それは、誰のでも分かりますの?」
「いえ…普通はその場に居なければわからないのですが…えっと…ユリエルさんのは白と黒。そして…その白が輝くほど美しいので…その、街中でも眼鏡を外せば特異点のように見えて…なので…はい。」
「まぁ!!よくわからないけど褒められた気がするわ!!本当にありがとうございました!!…ここだけの話、とてもとてもとーーっても怖かったので、お二人の顔見れた時は安心いたしましたわ。見つけて下さりありがとうございます」
わたしが今出来ることと言えば、大丈夫だと感謝の気持ちを込めて笑顔を見せることくらいだ。
「ところでアベイル、仕事が残っているんじゃないか?行ったらどうだ?」
「あ、大丈夫です。ボクの仕事は…あとは、えっと…今日の控えを忘れる前に書くことなので、この後はこの部屋に居ます」
「そうか。俺がやれる様なら変わるし、遠慮せずに生徒会の仕事を手伝いに行って構わないぞ?」
「えっと…優勝者であるロイさんのお手を煩わせる訳にいきませんので…ボクはこの部屋で、仕事をします」
微笑み合う2人を見て、なんとなく今まで以上の意思の疎通が見えて、仲良くなったのだと嬉しくなる。
「アベイルさんもロイさんもお疲れ様でございました。お茶でも…」
「それならばわたしがお入れします」
そうアナがスタスタと動く。
…そうよね侍女だものね。…またわたし暇だわ。
2人は仲良さげにお話ししちゃってるし…
「クロモリ」
うん。こんな時はクロモリを愛でるに限るわ。
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