戦いの火蓋切られた!!!…ところで火蓋って何の蓋?蓋を切る?…その後の鍋はどうするのかしら?
こうなりゃ女は度胸で愛嬌で女優なのよ!!?
口を挟む暇もなくとんとん拍子で話が進んで、今はロイさんと2人と1匹でコロシアムの中央へ向かっている。
いやいやマジでだれか止めて?キャンセルボタンをわたしに頂戴!?
真面目な話としても、どこまでわたしの魔力が持つかわからない不安もある。
しかーし!今ここには帝国一の魔法士たちも居るはず!!
また魔力切れで倒れたら宜しく頼みます!
あとわたしがシルクとアナに怒られる前にロイさんなんとかして下さいませね!!
とか完全に人任せな事を思いながら、わたしの横に控えるクロモリをナデナデして話しかける。
「クロモリ、貴方もお疲れの所ごめんなさいね?でもこれは好機なのよ。どうか互いに怪我なく無事に、互いの力を見せ合って頂戴?」
首捻られた。そりゃそうか。
「とーにーかーくー!ロイさん怪我させない様にね?」
「ユーリ。俺はそんなに気を使われるほど弱くは無い」
空気がピリつき隣り合うわたし達にのみ聞こえる声で話す。
「勿論ロイさんが強いのは重々わかっておりますわ。でもクロモリの実力はわたくしもまだわかりませんの」
「それはユーリより俺の方が弱いと、そう思っていると言う事か?」
「いえ…そんな事は…!」
焦り視線を向ければ、ロイさんはそのままスタスタと先を歩き、開始の指定位置に立ち振り向いたので、慌ててわたしも指定位置に付く。
「クロモリ!遠慮なく来い!!お前の主人を俺に取られたくなければ必死でかかって来い!!」
剣を構えクロモリに宣戦布告をする。
ちなみに周りは盛り上がってるし、風魔法には乗せてないのでわたし達にか聞こえていない。
殺気を感じたのか、クロモリが低く唸る。
マズい…もしかしてロイさんのプライドを傷付けてしまったかしら!?
ヒィィと慄きそうになるが…そうだわ!これはきっと演技なんだと気がついた!!
わたしを守る為、召喚獣であるクロモリの実力を周りに見せる為の模擬戦みたいなものよ。
ならこれは…
乗るしかないわ!!!
カモン原作ユリエル!!!!
「クロモリ?さぁ!!貴方の実力を見せるときよ!ラブリーチャーミーな貴方の守護の力をお見せなさい!!」
原作ユリエル来なかった!!!!
脳内に息子達と何回見たかわからない、あの某宇宙の乗り物団的な人達がまたセリフに入ってる気がする!!!
あ!!しかもあの人達敵役じゃないの!!ポジション的には悪役令嬢的なとこ!!しかも仲間が猫科!!親近感!!!
風魔法に声は乗せていないので、観客席から見たらわたしも何か叫んで、片手をロイさんに向けポーズを決めただけになってるのが救いだわ。
カッコイイセリフは貴方の心の中にあるのよ!キリッ!
それを皮切りに鐘が鳴り響くと、クロモリが瞬間的に飛び掛かる。
しかし予想通りだったのか、ロイさんが「風よ!!!」と叫ぶと、目の前まで飛び掛かっていたクロモリの真下から上に向けて風が吹き上がり、クロモリはそのまま10メートル程飛び上がると、その場で体を捻らせ風の流れから身を晒し、ニャンコ空中三回転とばかりにスタンと地面にまた戻る。
「流石にこの程度では駄目か」そうニヤリと笑うロイさんにまたもクロモリが飛び掛かれば、今度は「炎よ!!」の声と共にロイさんの周りに炎の壁が出来た。
しかし魔獣には魔法は効きにくいのがわかっているのか、躊躇いなくその中へ突っ込むクロモリ。
入ると同時にその炎の壁は消え、ロイさんの剣には炎が纏われていて、正面から来たクロモリを横になぎ払う。
ロイさんのことだ。学園開催ならば高価な魔剣ではなく、あれはきっと一般的なものに自らの魔法を組み合わせて魔剣としたのだろう。
しかし炎の壁を超えた瞬間、違和感を感じたクロモリは、間合いに入らない様に横に飛んで避けると、まだ剣を振るった体勢から立て直せないロイさんへそのまま体当たりで突っ込むが、ロイさんが剣から片手を離し振りかざせばまた横から突風が吹き、クロモリの身体はバランスを崩し飛ばされる。
そして着地と同時に互いに立て直し向かい合う。
そして思う。
あれ? わたし要らなくない?
心配してた魔力も、結局クロモリ出して、あの子が勝手に戦ってくれてるから、結局黒魔法?天候を動かしてる?とかの無駄な力を使ってないので、別段大した事もない。
つまりわたしの体調不良は、テンション爆上げでの天候変化とかしなきゃなんとかなるってことで…。
まぁクロモリを生み出した時だけは、全身から魔力が抜かれる感じがしたけど、それ以外の呼び出す時にはそんな風に感じる事もないし。
この際アナでも呼んでこの特等席でお茶でもしようかしら?
うわ!!それ悪役令嬢っぽい!!
何故だかちょっと憧れちゃうけど、アナのお茶がホットなのにクールになる事請け合いね!!!
冗談はさて置き、わたくしは自分の立ち位置はちゃんと分かってるのですわ!
邪魔をしない!!!!
これ一択!!
試合を真剣に見てるのも、万一飛んで来た被弾を避ける為。
そして思う。
この人達のスピードを避けれる気が全くしないんだけど!!!
火蓋は、火縄銃の蓋らしいですよ。
鍋蓋ではないそうです。
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