なんて骨体!真珠られない…!!
ロイさんの横に立てば、学園長代理がトロフィーを持ってやって来た。
場違い感半端なくてとりあえず笑顔キープで頑張って居れば、少し遠くで生徒会長のレイさんが爽やかな微笑みで手招きをしているのに気がついた。
その場をそっと離れ、そちらに行けば大きな花束を渡される。
「ユリエルくん、無事な顔が見れて安心したよ。この花束は優勝者のロイ様に渡して貰えるかな?」
「ご心配をお掛け致しましたが、見ての通り無事ですわ。花束贈呈のお仕事は確かに承りました」
そう微笑んで、元々この最後の花束贈呈はわたしの仕事に振られていたのだと思い出す。忙しい中突然休んだけれど、少しでも仕事が出来たことを嬉しく感じた。
「ユリエルくん。宜しく頼んだよ」
「はい。いってまいります」
学園長代理の挨拶の後ロイさんがトロフィーを受け取り、観客席が盛り上がっている中、背筋を伸ばし向かう。
ちなみにクロモリはずっと横に付いていてくれてる。嬉しいし可愛いけど、目立ってる。知ってる!
ロイさんの前に着くと、観客席が静まり返った。
静寂が怖いわ!お願いだから気にせず盛り上がったままでいて頂戴!?
引き攣りそうになる頬を必死で抑えて「優勝おめでとうございます」と、花束を渡せば、ホッとしたような、蕩けそうな笑顔を向けられれば、あちらこちらの観客席から女の子達の黄色い声が響く。
遠いのによく見えるなぁと思えば、そういえば準備の時に開会式と閉会式の様子は、魔道具によって観客席からは宙に映画のスクリーンの様に映り出されるシステムになってる話を聞いた事を思い出し、アップでのリアル王子スマイルはそりゃ若い子には目の毒よね!わかる!と納得した。
しかしわたしは自分もスクリーンに映されいるかもしれない緊張で、微笑みを貼り付けているのが精一杯なままカーテシーをする。
……さっきまで、「ウオオオオーーー!」「ロイ様ーーー!!」とか盛り上がってたじゃない?
あらやだここは高級住宅街の夜かしら?ってレベルで静か!!!
これは既にあらぬ噂が流れておりますね!!ユリエルに一歩遅かったで賞贈呈。
どうしたもんかと思っても、腐っても令嬢。
表情には出さず微笑んだまま顔を上げれば、ロイさんは観客席に向けて声を上げた。
「聞いてくれ!!ここにいるユリエル嬢は、先日我が国の裏に蔓延る誘拐犯とその一味を捕まえ、牢に入れた!!見ての通り怪我もなく、この様に仕事をこなして居るのがその証拠だ!!」
ロイさんは風魔法を使い、声はコロシアムに広がる。
なんだか大事にされてる気もするけど、これはロイさんが噂を消すためにされているのだと分かって黙て微笑む。
でも会場では納得がいかない様で、ザワザワと皆口々に『そんな訳がない』『彼女を守る為に嘘を言っているのだろう』など、王族であるロイさんへ対して大きな声では言えないからか、コソコソとそんな会話があちらこちらから聞こえてくる。
う〜ん地獄耳が憎いわ。
「疑っているか?」
そう声が響けば皆聞こえてしまったのかと、ピタリと止んだ。
「ならばその証拠に優勝者であるこのロイ・ファルコ・ガルディウスと、ユリエル・セルリア嬢のエキシビジョンマッチを開催させて頂きたい!!!」
両手を広げ、それは堂々として王たる風格すら漂わせ告げるロイさんに驚くが、そんな場合では無いと気がつく。
「ちょ…ロイ様…」
なんとか小声で声を掛けるがどこ吹く風。
いや、リアルにわたしの声は風に乗せてくれないから、みんなの元へは届かないし、むしろロイ様にも届いているやらいないやら…『どこ吹く風』の表現をこんな適切に使われると思わなかったわ。
「さぁ、ユリエル嬢の力を見たいものは、声を上げよ!!!」
静寂の後、大地が揺らぐ程の歓声が上がった。
張り付けた笑顔のままロイさんを見ると、悪戯の成功した子供みたいに笑っていた。
な、な、な、
なんてこったい!!!!!!!!
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