悪いのは誰かと考えてみよう。そんな道徳の時間です。
目が覚めたら知らない天井でした。
う〜んマンダム。
現実逃避はさて置いて、ちょっと最近のわたし倒れすぎじゃない?
魔力使って倒れ、シルクに抱き締められ倒れ、拐われて倒れ…トータルすると、魔力のコントロール力が無いのが悪いのね。
魔法祭が終わった後には魔力の使い方の授業も始まるし、ちゃんと勉強しよう。うん。
「お嬢様!?目覚められましたか!?」
「アナ?部屋模様替えしたのかしら?」
「お嬢様違います。ここは治療院です。」
「そうよねぇ、流石に一気に変え過ぎだと思ったわ。それでね?わたしは何事も無く大丈夫だから…アナ?泣かないで?」
手を伸ばせば、その手を優しく包み「ご無事で良かった…」そう涙をほろほろと流すと、手でサッと拭き「皆様心配されております。お呼びして宜しいですか?」侍女の顔に戻る。
「ありがとう。アナ。最初にいつものようにあなたの声が聞けて安心したわ。でもみんなを呼ぶ前に座らせてくれる?」
寝起きのせいか力の入らないわたしを優しく起き上がらせ、背中にクッションを入れ、服も寝巻きの上にカーディガンを羽織らせて、素早く見た目も整えてくれる。ありがとうアナ。お父様に御給金あげてってこっそり頼むことしようと心に決める。
「では宜しくね」
アナが廊下に出ると隣の部屋から声がする。
安心したとか良かったとか…本当心配ばかりかけてすみません…
部屋を見回せば、個室で窓から見下ろした感じ3階程度の高さみたい。
日は高くてかなり長いこと寝ていたのだと分かった。
そして入って来たのは家族3人。
元気アピールに笑顔を向けながらも、特にシルクに怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、わたしの顔を見た途端涙を流したのは…シルクだった。
お父様もお母様も驚いて、両端からシルクの頭や背中を撫でている。
「シルク…わたしは大丈夫よ?」そう手を広げれば、飛び込む様に抱きしめて「無事で良かった」と震えしゃくりあげながら涙を流した。
でも前回の教訓なのか、めちゃくちゃ優しく必要以上に力入れない様にしてるのが少し可笑しい。
「お父様もお母様も心配ばかりかけてごめんなさい。魔力をまた下手に使ったせいかこんなですけど、わたしは特に被害もなく無事ですわ」
そうシルクに抱き締められた隙間から声を掛ければ、2人とも優しく微笑み返してくれた。
「ユーリ。今回ばかりは肝が冷えたよ…ただ本当に君が無事で良かった…」
「ユーリちゃん?お転婆も程々にするのよぉ?あっ!今度ユーリちゃんを救ってくれたクロモリちゃんもお母様にも会わせてねぇ〜」
「あ!お母様おかえりなさい!伯母様の家どうでしたか?」
「楽しかったわよぉ〜滞在伸ばして帰ってきちゃったものぉ。あっユーリちゃんも今度一緒にいきましょうねぇ〜」
「えぇ是非また今度」
うふふあははと笑って居たら、
お父様に呆れたように「こんな時まで君達は変わらないね」なんて苦笑いをされてしまった。
「長く滞在しても疲れさせてしまうしね。そうだ、ユーリ。ロイ様とお友達のアベイルさんには特に感謝する様にね。彼らのお陰でユーリが早く見つけられたからね」
「アベイルさん?えぇ、わかりましわ」
「みんな心配して居るから僕らは一度帰らせて貰うよ。…あぁ、シルク。アナと共に君は残りなさい。夜には帰ってくるんだよ?」
シルクは黙って頷きベッドの横の椅子でハンカチを顔に当て息を整えている。
昔もうまく言われた事が出来ない時、こっそり隠れて泣いてるのを見つけると、いつもこうしてハンカチ当ててたなぁと思い出して…
「あっ!!シルク!?わたしの髪留め知らない!?ゴロツキのせいで落としちゃったのよ!」
「え?髪留め?」
「そうよ!シルクが昔くれた髪留めよ!?無くした!?壊れた!?許すまじ!あの大悪党ども…!!」
「姉さん落ち着いて!!髪留めは聞いておくし!ゴロツキがいきなり大悪党にランクアップしてるし!それよりそんな事で興奮しないで!?」
ベッドの上に立ち上がろうとするわたしを必死で止めるシルク。ヤダヤダと駄々捏ねるわたしを必死で宥めて「もし見つからなかったらまた買いに行こう?カフスボタンの御礼に今度は僕からプレゼントさせて」とか言われたら、頷くしか無い。お姉ちゃんだからね!
「お嬢様、先程先生に確認いたしましたら、明日の昼には屋敷にお帰りになって大丈夫だとの事です」
お茶を2人分入れながら、アナが微笑んで伝えてくれた。
「ところで…今日は何曜日?」と聞けば「光だよ」とシルク。
「え!?じゃぁ明日の魔法祭見れないじゃ無い!!」
「姉さん?」
あ、ヤバい笑顔のシルクだ。
「はい。我慢します」
アナも大きな溜め息と共にお茶を出す。
え?そんなあからさまにヤレヤレ感だしちゃう?
いやいつもの事だけれども!!御給金上げてってお願いするのやめようかな!嘘!いつもありがとう!!
「ロイ様はあまり自分がここに入り浸ると有らぬ噂が流れても困るからこちらには来られないと、ですのでまた後日屋敷の方に顔を出されるそうです。お嬢様のお友達からも、学校でお待ちしているとの伝言をお預かりしております」
あらぬ噂…そうよね?御令嬢の誘拐だものね…。
そうして身震いをする。
怒りで我を忘れていたけど、我が身も危険だったと改めて感じる。
「皆に心配…かけたわね…ごめんなさい」
「姉さんも気を付けてね」
「いえ、シルク様。失礼を承知で言わせて頂きますが、悪いのは誘拐した犯人で、ユリエル様は悪く御座いません」
キッパリと言うアナに思わず涙が出た。
自分では思ったけど誰かに言ってもらえた嬉しさと、今回拐われたのがもしミラさんだったら?一般の子で徒歩で通っていたなら?
気をつけていても、もっと目撃者もなく拐われて、こんな早く見つけられる事もないだろう。
「アーーーーナーーーーー!!」
呼びベッドから落ちそうになりながらアナを抱き締める。
「お嬢様、もう大きくなられたのだから、ベッドから落ちての怪我にはお気をつけくださいませね?」
「うんうんうんうん!!ありがとうアナ!!大好きよ!」
後ろからシルクが「ごめん…そうだ。姉さんは悪くなかったのに…」そう苦しそうに呟いているのが聞こえる。
「シルク?わたしが迂闊なのは分かってるし、シルクが言いたいことも分かるから気にしないでね?」
アナに飛びついたまま言ってると「いい加減重いです」とベッドに戻された。いけずなおひと。
しょんぼりしてるシルクの頭を撫でながら、
「お姉ちゃんは大丈夫だからね?気にしないでね?だから明日の魔法祭行ってもいいかな?」
「「だめです!!」」
どさくさ紛れに言ったけどめっちゃ怒られた。
「本当に気をつけなさい」とか「ちゃんと自覚しなさい」とか、サラウンドで言われて、もうどちらに言われたのかわからんくらい怒られた。ぴえん超えてぱおんてこんな時に使うんだと思う。
御指摘頂き一部変更いたしました!
その言葉がどうしても出なかった!!スッキリ。
ありがとうございます!





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