恋は甘く切なく愛しく甘酸っぱく黒歴史も作るけど良いものよね
空は晴れていても朝の空気が少し肌寒く、制服の上にカーディガンを羽織ったそんな朝。
魔力の減りも昨日のお昼に飲まされた、魔力回復に効くというあまり美味しくない…いや、とても不味〜いよく分からないお茶を呑まされ、確かに今朝になったら動くのには支障が無い程度には回復をしていた。
でも不味い。人生で一番不味かった。
前世で言うなら町内会で御近所さんに身体にいいと薦められて飲んだセンブリ茶以上にキツかった…。良薬口に苦し。
「ところでシルク?昨日は遅かった様だけど、どうしたの?」
「そうだね。少し遅くなったね」
「わたしはお休みしてたし、生徒会に行ってくれてたの?」
「えっと、そうだね」
登校中の馬車ではそんな歯切れの悪い会話が交わされていて、その上シルクはなんとなく目線を逸らして返事をしてる。
まぁ聞かれたくないこともあるのかな?とか考えれば一つ理由が思いつく。
ハッ!彼女かしら?!彼女なのかしら!?いつもわたしについて回ってくれているのだから、彼女と過ごす時間も作れない!いや、しかも弟は公爵家の跡継ぎ!
しかも真面目な子だから、わたし達に遠慮をして叶わぬ恋もあるかもしれない!!
もしそうならどうするべきなのか…今更弟が出来るのは考え難い…いや、考えられるのかもしれないわ。何事も諦めたらそこで試合終了だって言うものね!!お母様は今留守だから、帰ってきたら発破をかけて見るべきかしら。いや、年頃の娘に言われるのは流石に微妙な気持ちになりそうだわ。ならどうすべき?でも正直今から弟なんて……、あぁ!なんて素敵な響きなのかしら!!もう乳母雇わなくて、わたしが育てても良いんじゃない?おんぶ紐とかで背中で背負ってあげるの!とはいえ名前はやはり両親がつけるわよね…でも案を出すくらいなら…
「姉さん?何考えてるの?」
「子供が生まれた時の対応よ」
「…!?姉さん!?まさか!?」
青い顔をしてわたしの手を握られて、ハッとする。
「そうよね!今更弟が来てもシルクは困る事もあるわよね!!でも大丈夫!!貴方の未来はどんな道でもわたしが守ってあげるわ!!」
握り返した手から力が抜けるのがわかる。
いやむしろ全身で脱力された。
「シルク?」
「いや…もうホント、姉さんの思考回路どうなってるの?」
「全くもって正常よ?」
「僕の正常と姉さんの正常は違うらしい…」
首を傾げるが「もういいよ…」って遠い目された。昨日遅かった疲れも出てるのかしら?
「はぁ…まぁいいや。姉さん、僕これから姉さんと別に帰る事もあるかもしれないけど、いいかな?」
思わず目を見開いてから、もしや勘が当たっているのかもと、満面の笑みで「わかったわ!大丈夫よ!」と自分の胸を叩けば、
「うん…馬車だしね。ほぼ市街地だし大丈夫とは思うけど…姉さんの大丈夫に不安しか無いのが不思議だよ…」
なんでそんな半目で言われてるのかは分からないけど、弟の恋路を邪魔してると馬に蹴られてなんとやらだと思って、もうそれ以上聞くのはやめておいた。
密かな恋。
素敵じゃないの。
…ハッ!でも相手がヒロインだったらどうしようかしら!?それはやはり断罪ルートに続く事も…!?
うん。それでも…弟の恋路は邪魔しちゃダメよね。
後悔はつきものだけど、それはこの子のいつか糧になるもの。
それにわたしは昨日シルクを信じようと思ったのだから。
ならわたしは…
「シルク…わたしは、貴方を信じてるわ」
そう微笑めば、
「姉さんは…そういうところがズルいよね…」
なんて顔を覆って伏せてしまった。
恋愛が絡むと幸せもあるけど、沢山悩む事もあるわよね?
それにもしかしてシルクにとっては初恋かもしれないし、思い返して素敵な思い出になってくれたらいいな…なんて、朝日に照らされた街並みを眺めながら、まずは1人帰る時間も寂しくない様、心構えをしなくちゃいけないと思った。
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