悔いる時
どうもあの後、クロモリはお父様とシルクを見ると身体からまた闇が出て、それがまた身体に戻るとお父様達と似た様な服を着ていたらしい。
それを見てお父様は執事長のダラスを呼び、「クロモリくん?どうせならこの格好は出来るかい?」そう言って衣装チェンジしたようだ。
そしてやっと視界を開放して貰いました。
久々の光に目がシパシパする。
そしてお父様が「クロモリくん?少し3人にしてくれるかい?」と言えば、闇になり消えた。
「ユーリ。凄いなぁ。人型になれる召喚獣なんて聞いたことないし、召喚士でもない他の人の願いを聞いてくれる召喚獣なんてあり得ない話だよ。流石は我が家の天使だね。いつも君の起こす事は驚かされてばかりだよ」
「お父様…そのように姉さんを甘やかしては…」
困ったようにシルクが告げれば
「そうかい?でも物事は起きてしまったなら、それに対応していかないと、上手く回す事は出来ないんだよ?」
そう朗らかに笑う。
出来る男の発言だ。流石公爵の座に登った男!
「お父様!カッコイイですわ!わたしその言葉の偉大さをヒシヒシと感じております!」
「ありがとうユーリ。シルク、柔軟性は大事だよ?じゃなきゃこの子と一緒になんて居られないさ」
そう言われて、シルクの顔が強張る。
姉がこんな性格だから…苦労をかけてすまないねぇ…ゴホゴホ…と、脳内で言うが、2人の空気を読んで声には出さない。ユリエル察っせる子。
「改めてユーリ、前にも話したがその時に思っていた以上に君は特別な子らしい。光と闇だけでも凄いのに、更に召喚なんて聞いたことがなさ過ぎて笑ってしまうよ。神様は君を本当に愛してくれているのだね。
でも僕らは神様以上に君を愛していると自負していてね、だから君が傷つく姿を見たくは無いんだ」
そう言って近づき優しい笑みで頭を撫でてくれる。
「だから少しずつでいい。もっと周りを信じなさい?僕らもそうだけど、君を傷つけようとする人は居ないし、居たなら僕らが全力で守るよ?」
それを聞いて、もしかしてお父様は何故召喚獣を呼び出した理由の一つ『1人になっても一緒に居てくれる存在』と言うのを見当をつけているのかもしれないと感じた。
それでも幼き頃に考えた『断罪された時に、この家族は護ってくれる、でもその時に王国から怒りをかったらどうしよう』と、小さなわたしが叫ぶ。
わかるよ?あの頃のわたし。
でも今ならあの頃以上に、きっとこの人達は娘であるわたしをどんな相手だろうと信じて守ってくれると思える。
正直それが怖い。わたしの為に傷つけたくない。
それに…どうしても考えてしまう。
シルクも…家族と一緒に守ってくれるのかな?
いつか…明日にでも誰かが現れて、その人を愛してしまっても。
『ごめん…』と、前世で詫びるあの人を思い出す。
だって、一緒に家族になって生きていこうって言ったのに…、それなのにあの人の道はわたし達と別れてしまった。
あれは前世で、今のわたしじゃないのに、あの時泣けなかった涙が溢れ出す。
「おど…おどうざま…心配ばかりかけてごめんなざ…」
「君は何を背負っているんだい?僕らにそれを話してはくれないかい?」
抱きしめられるが、何を言っていいのか、言っても空言にしか聞こえないこんな記憶を告げることなんて出来ず首を振る。
「そうかい?なら少しずつ僕らを信じて?いつか話してほしいとは言わないから。どうか1人だとは思わないで?」
コクコクと頷くのが精一杯で。
「シルク?君からも言うことは無いかい?」
そう呼ばれて、お父様の胸の中から辛そうな顔を上げるシルクを見る。
「もしかして…僕は…姉さんに信じてもらえて居ないの?だからクロモリを召喚したの…?」
それは見たこともない泣きそうな顔。
「違うわ!今は信じてるの!」
そう叫べば、更に辛そうな顔をされてしまって…
「今はって何!?じゃあ過去の僕?それとも…未来の僕を信じてないの!?」
その悲痛な叫びを聞いて、わたしはやっと悔いた。
前世の記憶に引き摺られて、朧げな本のストーリーに引き摺られて、この子を、周りを見れて居なかった。
でも正直それでも怖い。
信じて信じて…いつまでも家族だと、いつもの様に声を掛けて、いつものような返事を聞きながら、違う誰かに心を向けられ、まるでわたしの存在が邪魔だと、わたしが居ることが誰かの迷惑になるのが怖い。
指先が震える。声を出そうとするのに、喉も震えて声が出ない。
それでも…力の入らない足を、お父様の元からシルクへと走らせる。
倒れそうなわたしをシルクは抱きとめてくれた。
ただ、必死に声が出ろと、出てくれと、過呼吸になった息遣いの中必死で見上げる。
ごめんなさい、ごめんなさい、貴方は悪くないし、大切な義弟なのに…ごめんなさいっ!
頭の中は溢れる記憶と心が入り混じって、ただ溢れる涙と上手く出来ない息遣いに頭がクラクラしてくる。
そんなわたしを抱きとめて居てくれたシルクは、辛そうな顔をして、ギュッと抱きしめてくれる。
「姉さん…喋らなくていいから。無理しなくていいから。僕は待つから。いつか姉さんが心から信用して、側に置いてくれるって…!お父様と一緒で一生僕にも言わなくたって構わない!ただ…いつか信じて貰えるよう頑張るから…」
「ごめ…ね、…だいす…よ?シルク…」
細かく切れる息遣いの中、それだけ言うのが精一杯で、その背に手を回せば、更にシルクの力が強くなる。
無意識にポンポンと、震える指先で背をたたき……
…背をたたき……背を…必死でバンバン叩く。
「ちょ…シルク!?ユーリ過呼吸になってる時にそんなに締めあげたら…!!」
白目剥いて倒れたのも致し方ないと思うの。
翌日シルクには滅茶苦茶詫びられたけど、その様子はいつもと変わらずだったので、ただホッとした。
読んで頂きありがとうございます。
ブクマ、☆評価、感想頂きありがとうございます!!
更新の活力にもの凄い繋がっております( ;∀;)!
そしてかなりの登場人数になってきたので、人物紹介をそろそろ作りたいなぁと思ってます。(希望)





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