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【書籍発売中】悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい  作者: そらいろさとり
高等部 一年生編

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苺狩り桃狩り梨狩りからの、紅葉狩りと聞いた時食べるのかと思った人は挙手


「紅葉狩り…ですか?」


「あぁ、今週の光の日、セルリア公爵の許可は取り付けてある」


昼休みに突然ロイさんに誘われて園庭を歩いていると、なんだか少し緊張した様子で言われたので、予定の記憶を探るが、まぁ相変わらず休日誘ってくれる友達も居ないし、レッスンも休みなら特にこれといった予定は無い。


「シルクは?」


「公爵の許可を得てるのに、何故弟の許可が必要なんだ?」


「一緒に行くのかなぁって思いまして」


「いや、2人きりだ。…いや、勿論従者は居るし、護衛も少しは付くし、公爵とも遅くならないと約束してある!」


なんだかオタオタしたロイさんが可愛くて笑ってしまう。


「いいですよ。お父様の約束もあるならわたくしが断る理由はありませんわ」






***



「姉さん、気をつけてね!!」


王家からの迎えの馬車が着いて、乗り込もうと近づけば、シルクが手を掴んで心配してくれて、そういえばこの子が来てから丸一日義弟と離れた事が無いと気がついて、軽くハグして、ポンポンと背中を叩く。


「大丈夫よ。ロイさんもいらっしゃるしね。お留守番お願いね?」

「だから心配なんだよ!?」

「だから?えっと、護衛の方もいらっしゃるしね?」

「そうじゃなくて!」

「心配ありがとう。待たせてるし遅くなってしまうから行ってくるわね?」


心配そうなシルクに笑い掛けて、馬車に近付けばロイさんが乗るエスコートをしてくれる。


わたしが馬車に乗り込むと、両親とシルクに頭を下げていて、王族なのに我が家に敬意を示してくれている事に嬉しくなった。


「さぁ行こうか」

「お待たせして申し訳ありませんわ」

「いや、構わない。楽しみだな」

そう言って優しく微笑んでいて、思わずつられて笑みが溢れた。


外を見れば秋晴れで、揺れる馬車は王家にしては見た目は少し質素にしてくれているけど、やはり乗り心地は良い。ちなみに服装は紅葉狩りの為、散策しやすい様、濃赤に花柄のロングワンピースにペタンコの靴。

アナにはもう少しお洒落なやつを勧められたけど、歩くんだもの。ヒールなんて要らないと断固拒否。

ロイさんもワイシャツにノータイで、濃いグレーのスラックス。

まるで普通の男の子だと思えて微笑ましい。いやイケメンだけど。改めて見たら…うん、めっちゃイケメンだったわ。そしてぴちぴちのお肌に若さが眩しい!!いや、わたしもピチピチに若いのだけど!



「お天気良くて良かったですね!」

「あぁ」

「あちらの山はもう紅葉がかなり進んでますわ」

「うん」

「わたくし、落ちた葉っぱを踏んだシャリシャリした音好きなんですよ」

「そうか」

「お疲れでしたら帰りますか?」

「あ…いや!聞いてない訳では無いぞ!?」


そう言ったら思わず立ち上がりかけたので「危ないですわ」と告げれば、「すまない」と素直に座ってくれた。


「ここの所、魔力祭に向けての訓練されて、御公務もお忙しいでしょう?今日一日空けるのも大変だったんではございませんか?」


「まぁな…」


「なら無理せずお休みになられたら良かったのに」


思わず困ったような笑いが浮かんでしまう。この頃は大変だからこそ遊びたいとかなるだろうけど、やっぱり休めるときに休まないと。身も心も成長期だしね。


「無理…してるかもしれないが、最近ほぼ会話も出来ていなかっただろう?ユーリは王城にも来ないしな」


「わたくしが行って邪魔になることはあっても、お役に立てることはありませんもの」


今まで何度かは行ったが、もう全員からあの『王子の婚約者様』の扱をされて、それが堅苦しく(うやうや)しくて正直苦手ではあった。立場を考えれば仕方ないし、普通に考えたら当たり前なのだけれども。

でもそれは言わない。この子にとってそれは生まれた時から日常で、指摘してはいけない事だと思うから。


「苦手か?」


「ふぇ?」


驚いて変な声出た。


「ユーリは苦手だろう?城やこちらに来ることが。だからあんなに会いたがっていた弟達にも会いに来はしなかった。…違うか?」


「えっと…その…」

気付かれてないと思ってたから、思わず目が左右に揺れてしまえば、困った様に笑われてしまう。


「その…ごめんなさい」


「謝ることはない。ユーリの家は暖かいからな。この前の誕生日パーティーも楽しかったよ」

その時の様子を思い出したのか楽しげに笑っている。


「えっと、わたくし…」

そっと様子を伺えば、優しく微笑んで見つめられてて更にしどろもどろになってしまう。


「本当に気にしなくていい。俺も問い詰めた様で悪かったな。それに今日はユーリを独り占めさせて貰いたくて、本当は前に約束もしていたし弟達とも会わせたかったのだが、あいつらも予定があって都合がつかなかった。許してくれるか?」


「勿論ですわ!それはまた次の機会に」

次は会えると思えば、思わず笑顔になってしまう。


「ユーリ、あのな…」


ロイさんが何かを言いかけたところで馬車は止まり、思わず外を見れば湖はキラキラと輝き、周りの木々は赤く染まっていて、それを湖は鏡の様に写し出している。


「うわぁ!ロイさん!!もしかして目的地ですか?なんて綺麗…!!降りますか?降りますか??」


浮き足立つわたしを見て、従者にノックし合図すると、扉を開きエスコートして馬車から降ろしてくれた。


「わぁっ!綺麗ですねぇロイさん!!」


サクサクと赤い絨毯の様な葉を踏みしめて歩けば、空からはまた赤い葉が風と共に舞う。


「あぁ、そうだな。今年は今まで見た中で一番綺麗だ」


「ではタイミングが良かったのですね!!」


舞う葉を掴もうとするが、なかなか掴めず地面に落ちてしまう。


「あはっ難しい!」

「そうだな?」


ロイさんはそう言って手を伸ばせば、一回でその手に綺麗な葉が掴み取れた。


「難しくないじゃないですか」

思わずぷうと頬を膨らませたら笑われてしまった。


確かに令嬢っぽくなかったかもしれない。

感動の余り素を出してしまったけど、従者や他の人も居るんだった。


「えっと、失礼しました」


しずしずとロイさんの隣に並んで歩き出せば「気にするな。ユーリはそのままで楽しんでくれたらいい」と微笑んでくれる。


暫く歩くと建物が見えてきて、あそこでお茶にしようと促されたので、シャリシャリと足の下で鳴る音と、水面を見ながら進めば、秋風が心地好くて思わず目を瞑ってそれを感じて幸せだと思えた。


テラスに座ればメイドさんがやってきて、温かい紅茶を入れてくれて、ふと気がついた。


「…ところでここはどこですの?」

「今更か」

また笑われてしまったわ。


聞けば王家の管理している山で、避暑地として使われているという。

そりゃこんだけ綺麗なのに他の観光客とかいない訳だわ。とお茶に手を伸ばす。


視線を巡らせれば、建物の横には先程まで乗っていた馬車がつけられて居る。


「あれ?もしかして…ここまで馬車で来る予定でした?」


「気にするな。でもまぁあんな歩きたがる御令嬢はなかなか居ないからな」


「ごめんあそばせ。わたくし普通の御令嬢ではございませんので」


プイッとそっぽを向けば

「知ってる」と優しく声をかけられる。


なんだか今日のロイさんはわたしに甘いなぁ〜。

いつもはプリプリしてるのに…いや、違うか。そう言えばいつもプリプリしてるのはシルクとの言葉遊びでだったのか。


「お紅茶、美味しいですね」

「言葉、あんまり気にしないでいいからな」

「…大丈夫です?」

そっと周りを伺えば「俺の信頼する者だけだから」と

笑ってくれる。


「公務と魔力祭で疲れてますね。わたしはまだ魔力の使い方も知らないし…でも練習でも使えば疲れるのでしょう?」


「まぁな。でもいいさ。実戦経験に近くはなるし、いざと言う時に守れる力になるならば」


微笑まれてるけどその瞳には力があって、男の子だなぁと思う。


「怪我ないように頑張って下さいね!…でももうちゃんと頑張ってますものね。ではお気をつけてかな?…あっ!そうそう!レイさんやロットさん、最近生徒会室に来れないから伝えられないけど、頑張ってと伝言預かってますわ!あとアベイルさんやシルクも今色々と…」


「あのな、今日は2人なんだからその…ユーリから他の男の話を聞きたくないんだが…」


そっか、ロイさんは一人頑張ってるのに、こちらはお友達みんなで協力しながら頑張ってるのも楽しく見えてしまうかな?なんて気がついて口を噤めば、秋風にブルリと身体が震えた。


「あぁ、すまない」

そう言って手を挙げればメイドさんが膝掛けを持ってきてくれた。「ありがとう」と微笑めば、会釈して去っていく。


「ロイさんも気にしてくれてありがとう。少し冷えて来ましたね」

「なら馬車で泉を一回りしてこよう」

有り難くその提案に頷いた。




ブクマ、☆評価、感想等、ありがとうございます!

物凄く嬉しいです!!!



そして一回やってみたかった次回予告風↓



次回、ロイの前に最大の敵が現れる…ーーー!!

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仁藤先生の美麗な表紙が目印の、2025年8月発売
『悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい』

仁藤先生の素敵な挿絵が入ってます!
どうかご自宅にお迎えいただけると嬉しいです!
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