断罪イベントなのです。ある意味。
思わず手に持っていた本が滑り落ちた。
「シルク…貴方本気で言ってるの…?」
「姉さん、僕は本気だよ。当然公爵家の権力なんて使えやしないよ?もう…終わりだよ姉さん…」
「嘘よ…いつだって貴方はわたくしの味方だったでしょう?!」
必死で詰め寄るが、その手を外され首を振られた。
「僕だって、いつまでも姉さんの言うことを素直に聞いてる子供じゃないんだ!」
「嫌よ!わたくしは嫌ですわ!!そんなの認められませんわ!!」
シルクから離れ、髪を振り乱し涙を浮かべ膝をつく。
「もう…茶番は終わりにしてくれよ…ユリエル姉さん…」
「…うん。そうね。そろそろやめましょう。思いの外シルクが乗ってくれたから、未来のシミュレーションができた気もするけど、その時はこんな取り乱さずにするわね」
「なんの話かわからないけど、姉さんの役に立てたならよかったよ…」
わたしのノリに乗ってくれたのに、遠い目するのはやめて欲しい。
わたしの自室なので、端に控えた侍女のアナが「シルクさまお疲れ様です」とか疲れた顔して言うのもやめて。わたしが困った子みたいじゃない。
「よいしょっと…荷物落としたけど、割れ物じゃないし良かったわ。え?でも言ってたのはホントなのね…嘘だって言ってよっ!!」
「ごめん姉さん。2回目はちょっと…。えーっとなんの話だっけ?そうそうさっき学校で言ってたロイさんの弟さん達だけど、まだ暫くは来れないって話だね。仕方ないよ。掲示板、姉さんも見たでしょう?」
掲示板…ってあのモーゼ事件の事か…。思い出すだけでちょっとトラウマになりそうだけど、なんとか冷静を保って話を続ける。
「あぁ、あの来月にある『高等部学園魔力祭』ってやつね。希望者だけだし、まだ魔力の授業のない一年生は不参加じゃないの?」
「いや、僕らは中等部である程度は習っているからね。ロイさんは特に魔力も多いし出るよ。正直それなりに怪我する確率も高いし、結局出るのは騎士や王家に仕える家系の人とか…人数は少ないけど、腕に自信のある人が出るから学園のイベントで一番盛り上がるよ。魔術とは言いながら、魔法さえ織り込んであれば、剣とかの武器も使用出来るし、勿論力業使うのも有りだよ」
「つまりはどこかの天下一な武道会なのかしら…?」
「どこの天下なの?しかも強いて言えば魔道会じゃない?」
「…うん。そうね」
ハッ!!でも、もしかしたら誰かの手から破〜って出るかしら?
この世界魔力あるし、出るかも!?出るかも!!?
太陽みたいな光で目眩しとか!?
指先からビーム!みたいなやつとか!?
「なんかウキウキしてきたわ!」
「姉さんが楽しそうだと嫌な予感しかしないのはなんでだろう」
「赤いジャージか青いジャージ着て踊る?」
「なんでなの?」
くっ…!惜しい!
なんてアホなことはさて置いて、つまりはロイさんは魔力祭に向けて動くので、弟さん達を連れてくる暇が無いから、暫くお預けってことらしい。
悲しいけど、とてもとても悲しいけど、町に行く許可もまだ得てないし、プレゼントも買えないし、準備もできないから、仕方ないからもう少し我慢しよう。
いやどうしたってロイさんが無理と言われれば、そりゃ王家のお家に勝手に遊びに行くわけにも行かないしね。分別ある大人なので我慢しますよ。誰かカフィを連れてきてーーーーーーーーーーーーー!!!
「あ…あの…姉さん?」
気がつけば出て行こうとしてたシルクを後ろから抱きしめてた。
「はっっ!!癒しを義弟に無意識に求めてしまったわ!!シルクもうホント大きくなって。しかしまた背が伸びたんじゃない?もうこのままいくと10年後には3メートル超えちゃうわね」
「「…はぁ」」
シルクだけじゃなく、アナまで溜め息ついたわ!!
往年の親戚の叔父さんギャグが伝わらない悲しみ!!
そういえばそのギャグわたしは好きだったけど、一回笑ったら毎年おんなじ事言うから、思春期の息子が「マジでウザい」って言ってたわね!おじさんの繰り返しの恒例コミュニケーションは若者にも付き合ってあげて欲しい。
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