かわいいからかわいい(語彙力低下中)
ピョコンと椅子から飛び降りて、ギリギリ引き摺らない白衣をパタパタとはためかせながら、わたしの前までニコニコと近付いてきてくれた。
「ぼくの名前はカフィトル・マクラウドだよ。はじめまして!」
「はじめまして。わたくし…」
「ゆりえるさまでしょお?ぼく知ってるよ!あっ!ぼくは中等部の3年生です。あっ!センパイだから…『ゆりえるさまですね!ぼく知ってます!』だね!けいご使わなきゃっ!」
一つ年下!?たった一つしか変わらないのに、なんなのこの可愛さ!!?
身長も140センチも無いわよね?成長期はこれからかしら!?沢山栄養あるもの食べさせて大きくしてあげたい!!いやでも、遺伝かもしれないわ!?先入観は良くないわね!年齢は一つしか変わらないのだもの!!しかしなんでこんな可愛いのかしら!?あぁでもここはキリッとちゃんとしていないといけないわ!年上ですもの!令嬢ですもの!
顔は引き締められてるかしら!?うん、よし!教育が生きて、キチンと表情崩さず出来てるわね!!努力の勝利だわ!
「あのぉ〜ゆりえるさま?」
「何かしら?」
「ぼく撫でられすぎて、頭から火が出そう」
「…!!ごっ、ごめんなさい!?えっと、なにかしら!?無意識でしたわ!」
「だいじょぉぶです。よく撫でられることあるので」
困った様に笑う姿もとんでもなく可愛い!!子役なの!?キッズモデルさんなの!?かわいすぎる…
「いえ、歳も変わらないのに失礼いたしましたわ。えっと、カフィトルさんはこちらで何を?」
「えっと。ぼく3年だけど11さいで、中等部じゃ薬品とか足りないから、こっちで実験とかやらせて貰ってるんですよ。ちゃんとせんせぇの許可得てます!」
えっへんと胸を張る。かわいい。
「まぁカフィトルさんは優秀なのですね」
「えっと、カフィでいいですよ〜カフィトルって言い難くないです?ぼく言いづらいです」
テヘヘと笑う。かわいい。
「カフィさん…なんて、愛称で呼んでよろしいの?」
あだ名で呼ぶのは家族や婚約者などの親しい間柄のみとされているのに、初対面で呼ぶのは流石に憚られる。
「う〜ん…ほら、僕も『カフィトル!』だと発音的にも聞きとりづらくって。『カフィー!』って方が呼びやすくないです?」
一生懸命説明してる。かわいい。
「ならカフィさんとお呼びして宜しいのかしら?」
「えへへっ!カフィでいいよ!」
「カフィ?」
やったぁって万歳してる。かわいい。
「それで?カフィはこちらでどんな実験をしてらっしゃるの?」
「えぇっと、魔法って、生まれ持った力が大事で、元々少ない人は少ないままでしょ?だからその差を少しでも無くせないかなぁって。でもやっぱり増やすのはむずかしいから、道具を使ってさいしょうげんの魔力でうごかせて、みんなの役に立つものを作りたいなぁっておもってます!」
「まぁ!それは素晴らしいことですね!魔力が足りない分は技術で補うということですわね!」
「そうだよ!ゆりえるさまかしこいね!」
褒められたわ。かわいい。
「姉さん…ここにいたの?」
「あっ!シルクさまだ!おはようございまぁす!」
「……カフィトル…よりによって君か…」
わたしの影からピョコンと飛び出して、元気に挨拶したカフィを見るなり、シルクは何故かそのまま考える人の様なポーズで座り込む。
「シルク?どうしたの?カフィが可愛いすぎて目眩を起こしたの?そうでしょ?そうなんでしょ?わかるわよ?」
オロオロとシルクに寄れば「そんな訳ない」と溜め息混じりに立ちがって、わたしの顔を見て困ったようにまた溜め息をついた。
「シルク?どうしたの?お腹でも痛い?お熱でも出た?お姉ちゃんが手を握ってあげるわ!」
「姉さん。落ち着こうか。僕はもう子供じゃないよ?姿をちゃんと見て?」
冷静になってシルクを見れば、少しずつ我に返る。
「あらやだシルク、ちょっと見ない間に大きくなって」
「お婆さまからしか言われた事ないよソレ。姉さん、落ち着いてね?はぁ…全く、姉さんの一番の弱点が…」
「なんのことかしら?」
「いいよ。姉さんは気付かないでおいて。もう色々厄介だから」
厄介言われた!!解せぬ!!
「ゆりえるさま!そうだった!シルクさまのお姉ちゃんだ!」
「そうなのですわ!わたくしお姉ちゃんなのです!」
「混沌だ…」
「わぁ、シルクさまいいなぁ!こんなかわいくってすてきなお姉ちゃん!!ぼく兄弟居ないから羨ましいなぁ!!」
「まぁ!それならば、是非に…!」
わたくしをお姉ちゃんと思って…と続けようとしたら、
「姉さん?姉さんは誰の姉さん?」
ヒヤッとする程、シルクから冷た〜い声がする。
…ハッ!!これはヤキモチだわ!!そうよね!この世にはシルクの姉はわたし1人!それにわたしもシルクが今更別の人を「お姉ちゃん」とか呼んだなら…やっぱり寂しくなっちゃうわ!!
「カフィ!貴方の姉にはなれないけれど、カフィさえ良ければ、えっと宜しければですけど、お…お友達になってまたお話しましょう?」
「ゆりえるお姉ちゃんは駄目なの?」
「んん〝ッ!だ…ダメなのですわ!駄目……だめよね…ね?シルク?」
めちゃお伺いを立ててみれば、
「僕は良いって言えないよ?ユリエルお姉ちゃん?」
とか、こんな時ばっかりお姉ちゃんって言う〜!!!うわぁ〜んっ!!可愛い!義弟が可愛い!!
「そんな訳で駄目なのだけれども、またお話しましょうね?」
「はぁい!ゆりえるさま!ぼくここの実験室にいること多いから、また遊んでね!ここにお友達が居ないから、お話相手してくれると、すごく嬉しい!」
「はい!また来ますわ!!」
「じゃ、もう授業始まるから、行こうか姉さん」
「あら?カフィは?」
「カフィエルは9歳で中等部へ飛び級入学して、今はもう高等部の3年の試験も余裕で合格出来るレベルなんだよ。中等部に入学してからずっと個人的にここの実験室を希望すればいつでも使えるようになってる天才だよ」
「まぁ!カフィは賢いのですね!!」
思わず頭を撫でれば、褒められちゃったぁと笑う。かわいい。
「姉さん。ホント遅刻するよ?」
そう言って手を引かれて部屋を出る前に
「カフィも発明頑張ってね!怪我にはお気をつけ下さいませ」と言って去れば、廊下にまで聞こえる声で「ありがと〜またねぇ〜」なんて聞こえた。かわいい。
「うふふっ」
「はぁ…姉さん?カフィトルは年下とは言え男の子だからね?2人っきりになったら駄目だよ?あと勝手に何処かに行かないでね?…ホントご機嫌だね…」
困った様に溜め息をつくシルクに、誤解ない様伝えておく。
「あら?カフィは勿論可愛かったけど、わたしが笑ってるのは、久しぶりにシルクと手を繋げてることよ?懐かしいわね!最近は嫌がるようになったから」
言われて今更気が付いたのか、パッと手を離し顔を赤くして「ごめん」と呟かれた。
「もうシルクも幼いあの頃じゃないものね。仕方ないわ。こちらこそごめんなさい?」
離された手を少し寂しく握って笑えば、
「また…今度、姉さんさえ良ければ」なんてはにかんだようにかわいいこと言われた!みなさーーーーん!義弟が可愛いですよーーーーー!!
「なら迷子にならない様にまた今度ね!」
「…そうやってまた小さい子扱いする」
「ふふっ、ごめんなさい?」
こんなに大きくなったのに、どうしてもあの頃を思い出してしまうし、面影を見てしまう。
あっ!さっきかわいいを見たせいで余計にあの頃を思い出してるのかしら?!
思い出してふにゃりと顔が崩れれば、シルクの眉間にもの凄いシワがよる。
「一番会わせちゃいけないヤツに会わせてしまった…」
その呟きはわたしにはチャイムの音で聞こえなかった。
読んで頂ける方が居てくれるので、楽しく続けられて今回の話で50話です。
いつもありがとうございます。
引き続き楽しんで頂けるよう頑張ります!
本日短編もUPしております。
もしお時間ありましたら、そちらも宜しくお願いいたします。





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