黒歴史、その時は英雄だったりするよね〜

カルージュ先生が顧問に付いてくれたのを境に一気に動き出した。

やはり教師が付いてくれるというのはとても円滑に話が進む。

学校側とのやりとり、生徒への説明の時間の調整、掃除をする時の担当や、時間の管理、合間合間でレイさんとやり取りをして、トントン拍子に進んでいった。

カルージュ先生、やれば出来る子YDK。

人は見た目によらないな〜…いや、見た目はいいのか。悪いのは時折出る訳の分からない言動のみか。やれるのに出来なく見えちゃう子YDK。通称残念な子とも言うけど、朧げな記憶でもこんな残念キャラじゃ無かった筈。やはりどこかでクラッシュYDK…あ、クラッシュは英語だからcrash…YDCやないかーい

脳内ボケツッコミはさて置いて、そして更に問題点もとんとん拍子で解決し伸びる事なく、今日は当初の予定通りに掃除の初日。慣れない初日だからこそ、少し時間がかかることを想定しての放課後、そして挨拶や掃除場所移動を考えて、みんなで昇降口前に集合して…何故か私は生徒みんなの前に立っている。

理由は簡単。

掃除始めた張本人だからですテヘペロ。

……いやいやいやいや、おかしいよね？！生徒会が引き取ってくれた案件じゃなかった？会長が生徒会主導でって動いてくれたよね？学校側もそれで納得していたし、ただ「学生掃除の会」って、我ながらクソダサ…ゴホン…そんなシンプルな名前を付けてしまった罪悪感はある。地元婦人会レベルの名前のストレートさよ。

なんかもっとかっこいい名前とか…たしか名前決めてる時にポロっと適当に言ったら、みんな疲れてて、『それでいい、それがいい、それしかない』みたいになってたなぁ〜…ごめんよ、みんな…。

そんな命名責任と、掃除やり始めた責任取って、マイクの前に立つのはまぁ仕方ないとは半分諦めは入ったのよね。

貴族の方々や良いお家のお子様方だし、10人くらい来てくれて、チャチャっと掃除体験でやればいいと思ってたしね。

パッと見ても、

…軽く１００人は超えてない？

生徒のかなりの割合来てない？誰だ１０人程度とか言ったの。わたしだ。

てか気付いたら先生方も結構来てる。

あるぇ？？皆さま良いとこの方々で、掃除なんかって感じだったのに…何故こんなことに…

不安になって、周りを見る。

シルクを見ればニコッと笑い、ロイさんには頷かれ、アベイルさんは小さく小さくガッツポーズくれて、レイさんは華麗な微笑みを、ロットさんからは親指立てて応援され、カルージュ先生はウインクをくれた。

あ。この人達のせいだわ。

公爵家、王家、首席、騎士、商家、教師。しかもオールイケメン。なんだこれ乙女ゲーか！あっ乙女ゲーだった！！！

いかんいかん！忘れてたら暗い明日が待ってるぜ〜！にゃ〜んてにゃぁ〜？

つい日常に追われて忘れがちだけど、わたしは明日にでもどこからか可愛らしい乙女が現れたら、そりゃもう残念な方に転がる運命背負っちゃってるのだったわ…

強制力？とかそんなやつ。

あー…読んだ小説のどれかにヒロインが掃除して、攻略対象と出会うパターンとかありそうだけど、うちのヒロインじゃなかったかー…

ふぅっと一つ息を吐き、改めて生徒みんなへ向かう。

声は入学式同様、風魔法でこの場のみんなに聞こえるようにされている。

「皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き有難う御座います。今日この場が整いましたのも、生徒会の皆様、カルージュ先生を筆頭に教師の皆様、そして有志として御協力頂いた方々のおかげでございます。改めてこの場を借りて御礼を申し上げます。有難う御座いました。

そしてこの場『学生掃除の会』にお集まり頂いた皆様にも感謝申し上げます。

この会はこれから皆様が社会に出られ、沢山の方々と出会います。それは身分の上下の見方だけではなく、その方のされている事へ興味を持つキッカケになって頂けたらと思います。

ここにいらっしゃる方々は生まれ持っての地位がある方が多いと思いますが、それはわたくし達がたまたまその家に生まれただけに過ぎません。

逆を言えば、身分がどんな方々もたまたまその家に生まれたと言うことになります。

どんな風に生まれ育っても、その人がその場でキチンとお仕事をされている事で、この世の中は回っております。

わたくし達若も…若者は、社会を知り、他人を知り、仕事を知り、そして自分を知り、今、この学生と言う自由な時間を頂いて居る間は、何が出来るかを見つめられる大切な時間だと思います。

是非この機会に掃除や周りの方々と親睦を深め、新たな見聞を広げられる機会になる事を願っておりますわ。

長くなってしまい申し訳ございません。

ご清聴有難う御座いました」

そう言って一歩下がりスカートを摘み少し頭を下げる。

予定より…若者に…堅苦しくしかも熱く語ってしまったわ…

そして自分込みで若者と言う時噛んじゃった…

仕方ない。前世の記憶がわたしを噛ませた…

顔を上げられないでいたら、…パチパチ…と小さな拍手が起こって、気がつけば音は大きくなり、生徒からは拍手をもらい、何より見学に来ていた先生方から大きな拍手と…年配の方では涙を流してる方もいらっしゃる！！

名前覚えてないけど、年配先生はわかる！？わかりますよね！！

あの頃気がつかなかったあの貴重な時間！！

周りの大人は分かってくれないと思ってたけど、振り返ると痛い自由過ぎた気もする過去！！戻れるなら戻って勉強とか色々大切に時間使いたい！戻れないけど！あっ！転生という名でやり直しさせて頂いてはいるけど、前世のわたしでは無いし、やっぱり人生はやり直し効かないのよね！この気持ち伝われ若人！！

…って、でももう拍手はいいわ…恥ずかしくなってきた。いやむしろ、これ１５のわたしが言ったと思うと逆に黒歴史ならないかしら？前世の記憶があるから耐えれるけど、これ5年後10年後にリアルに思い出したら恥ずかしくて悶えるやつ。

　

いや…もう既になんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた〜〜！！

「ユリエルさん代表挨拶有難う御座いました。では生徒会を代表して、ここに『学生掃除の会』開始を宣言させて頂きます」

レイさんがそう挨拶すれば、

「「ハイッ」」皆さん大きな返事を返し、ロットさんレイさんが掃除の分担場所等の説明を始め、生徒さん方はそれぞれ散り散りに分かれて行った。

良い子 出来る子達に　感謝をYDK。