優しさは目に見えないから、浮かれてると更に見えなってるのも仕方なくない?
案内されたその店は下町の中でも一等地にあって、覗けば色とりどりのドレスが並んでいる。
「夜会用のドレスのお店…かしら?」
「あー、貴族さん向けにはそんな感じでやらせて貰ってるんやけど、隣のこじんまりした店も同じ店ではあってな、そっちはオレら庶民の普段よりちょいと高級な服を取り扱ってるんや。エルちゃんもまたこっちに降りて来るなら、そっちで自分の服を見繕うも良し、夜会でもお茶会でも、どちらにでもご要望のドレスは左のお店……って」
そこまで一気に話して、ロットさんは一声唸ると頭に手を当て、突然頭を下げてきた。
「あーーー!!ホンマすまん!!!黙ってられへん!!ここオレんチの店なんよ!ホンマは連れて来るつもりなかったんやけど……今日、エルちゃんとシルっくんと遊んでるのどっかでバレてもうたらしくって…さっき家から使いが来て、ぜひお連れして…って、ホンマごめん!買わんでええから、ホンマすまんけど、友達の顔立てると思うて!!」
顔の前で手を合わせ、申し訳ないと謝る姿を見たら…いや、正直そこじゃない…
「と…友達?」
今度は隣でシルクがあちゃーと頭を押さえてるけど、気にしない。
「え!?あっ!エルちゃん⁉︎もしやオレのこと友達と思ってへんかった⁉︎」
「いえ!!お友達です!!お友達のお家のお店なら、是非に覗かせて頂きます!!うふふふふっ…さぁ!参りましょう!!」
お友達…記念すべきお友達2人目よ!後ろでちょいとロットさんがぽかんとしてるけど気にしない。
綻ぶ頬を引き締め…られてるかわからないけど、お店の扉の前に立てば、内側から開けてくれた。
店内には従業員と思われる人が両サイドにズラっと10名ほど並び頭を下げ、中央で頭を下げていた人が顔を上げれば、髪は濃い緑で少し渋さの出てきた…ロットさんの面影のある男性だった。
「いらっしゃいませ。シルク様、ユリエル様。お忙しい中ご足労頂き、至極光栄で御座います。本日は愚息がご迷惑をお掛けしておりませんでしたでしょうか?」
「こちらこそ、息子さんには御助力頂き感謝します」
「お陰で楽しい1日になり、こちらから御礼を申し上げたいくらいですわ」
「それはそれは、至らぬ所も御座いましょうが、これからも息子共々仲良くして下さる嬉しく思います」
思った以上の歓迎に、思わず貴族モードになるわたし達に、後ろでロットさんが溜息をついている。
「わたくし、お店で直接ドレスや服を見たことがないので、こちらで拝見させて頂いて宜しいかしら?」
「はい!勿論でございます!お気に召すものがあれば宜しいのですが…」
そんな話をしてる間に従業員は素早く動き、あれよあれよと言う間に目の前にドレスが並ぶ。
シルクに目線を送ると、仕方ないねと笑っていたので、折角なのでドレスを見て回れば「お気に召すものが御座いましたら、ユリエル様に合わせて仕立て直しさせて頂きます」と女性の従業員が頭を下げて話してくれる。
暫く見て周り、もう少し明るいお茶会用のドレスが見たいと言えば、瞬く間に衣装が変わる。
突然来たにも関わらず、教育が行き届いた従業員だと感心してしまう。前世の高級デパートでもこう上手くいかないだろうと思えるレベルでのアイコンタクトで皆動いている。
一般的にお嬢様としては支度が終わるまで動かず、整ったら指示して見たいものを見たら良いとは思うけど、じっと待ってると皆さん緊張しちゃうかなぁと、店内のディスプレイを見て回ることにする。
シルクに声を掛ければ、先程まで持っていた荷物も従業員の方が先に馬車に運んでくれたと手ぶらで、出されたお茶を優雅に飲んでいる。義弟がちゃんと貴族してる!!いや、そうなんだけども!!てかむしろ荷物持たせてたわたしがダメじゃん!?
…ちょっと浮かれすぎてた事に気がついて、わたしは迷惑にならない程度にプラプラと並んだ商品を見ていれば、「折角の時間を潰して申し訳ない」とこっそり謝りにきたロットさんに笑顔で首を振る。
そんなタイミングである商品が目に止まり、これをこっそり買いたいと言えば、笑って了承してくれた。
結局、ドレス2着と、先程話を聞いていた下町風の服を2着購入。
シルクは買わないの?と聞けば「今日は姉さんの買い物だからね」そう言って微笑みを浮かべ…最初から最後まで座ってた。
…ごめん!!明らかにシルク疲れてるね!
そりゃ買い物フルに一日連れ回して、荷物持ちまでさせてたものね…。アイムソーリー…でもまた連れてきて下さいマイブラザー…





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