みんな二度見は必須らしい。
「授業が始まるが、君達は何を……、いや…本当に何をして居るんだ?」
片付けをしていた私達に声を掛けて来たのは、入学式で見た記憶のある1学年上の麗しの生徒会長様だった。
そして今、生徒会室に笑い声が響き渡っている。
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!こんな姫さん聞いた事あらへんわ!あ〜腹痛ぇ…」
「姫ではございませんわ、ロットさん」
「公爵様の箱入り娘様で、第一王子の婚約者様、一般人からしたら姫さまやっちゅ〜の」
この揶揄うような変わった話し方をしているのは、会長から是非にと案内された生徒会室に入った先で、ソファにゴロリと横になっていたロット・ペンニーネさん。生徒会で会計を担っているそうだが、相変わらずうひゃひゃひゃと向かいのソファに転がりながら大笑いしている。
そんなロットさんは髪は短めで、色はお父様よりも濃い緑色に前髪の部分に赤のメッシュが入っていて、癖っ毛なのか剛毛なのか、落ち着くことなくツンツンと跳ねている。
少しつり目の瞳もやや赤みがかった緑と、なんとも不思議な色合いで、なにより笑うと愛嬌のある八重歯が見えて、それがなんとも愛らしく、背丈もわたしとさほど変わらないように見え、他で会ったら年下かと思ってしまったかもしれない。
「すまんな…ロットはその…悪い奴では無いんだが…その…礼儀を知らなくてな…」
「いえ、わたくしは気に致しませんわ」
フォローしてるのか諦めているのか…そんな言葉を漏らすのは、生徒会長であるレイ・フェレスさん。
麗しの生徒会長の二つ名はそのままで、少し長めの髪は後ろで簡単に束ねていて、その薄いグレーの髪は少しの風でもそよぐ程サラッサラ、同じ色合いの少し切れ長な目は、出来る人となりを映し出しているように見せている。
背もスラリと高く、線は細いが均衡の取れた姿は名のある彫刻の様にも感じてしまう。
ロットさんもレイさんも、様を付けて呼べば「よしてくれ」「柄じゃねぇわ」と拒否られたので、先輩だけどさん付けで呼ばせてもらうことになった。
ちなみに午後の授業に関しては、生徒会から教員へ話を通してくれ欠席させて頂いている。
てか、ホント、わたしは気にしなくていいけど、隣で明らかにご機嫌斜めになった王子様はお気になさった方が宜しいかもしれませんが…
「だって、聞きゃあ姫さんが掃除して、説教かましてお貴族さん巻き込んで、挙げ句の果てに王子様にまで掃除させたとか…もうオレ5年はこのネタで笑える気ぃしかせんわ!」
「えっと…お騒がせして申し訳ないですわ…」
「いや、でもユリエルさんの言っている事は私も正しいと思う。ゴミを当たり前に捨て、掃除させるのが当然だと言う考え方は前々から遺憾に思っていたしな」
「まぁなんたって御貴族様やしなぁ〜」
そう言う彼らは、レイさんは元々騎士の家系で、お父様が功績を残し子爵の地位を貰ったが、身の丈に合わないと、困った様に笑っていて、ロットさんは商家の次男坊だと名乗った。ロットさんの言葉使いは幼い頃から取引で色々な地方に行ってる間に付いたもので、一番話しやすいからそのまま使ってるらしい。
そんな2人は親の付き合いが長く、その関係で子供からのお友達だと話してくれた。住んでた場所や親について回っていた関係で幼い頃より下町を見る機会も多く、少し成長してからは2人でコッソリ抜け出して町の様子を見ていたと言う。
「まぁ商売人だなんだって、オレは平民みたいなもんやからなぁ〜自分の事は自分でするのが当たり前やし、姫さんのご意見にゃ賛同するんやけど…姫さんは姫さんなのに、なんでそんな考え方出来るんか気になるわ」
「えっと…」
その猫の様な目が細まりなんとなく探られてる気がして、思わず少し言い淀めば、横から一つ溜息が漏れた。
「それを聞いてなんになる?学園を綺麗にしたいと思った。それだけでは駄目か?それともまたこのまま下らぬ話で次の授業も欠席させるおつもりか?」
腕を組み同じソファのロイさんは有無を言わせぬ物言いすると、なんとも冷やかな目で2人を見る。
「あぁ、ロットが嫌な言い方をしたね。申し訳ない。代わりに謝らせて貰うよ。遅くなってしまったが、掃除をしていた君達にお茶の一つも飲んで貰いたくてここに呼んだんだ。」
そう言っていつ準備をしてたのか、綺麗なティーカップに琥珀色の紅茶が入っている。
「ありがとうございます。」
そう微笑めば、レイさんは
「いいや、ユリエルさんが喜んでくれるならお茶くらいいつでも入れよう」
なんて麗しの微笑みを向けられたら、思わず顔が熱くなってしまう!
「ではお忙しい中邪魔をした、すまんが授業に間に出たいのでこれにて失礼する」
ガタンとロイさんは立ち上がり、わたしの手を引き部屋から出て行く。
えっ!?まだ次の授業まで少し時間に余裕あるじゃん!?お茶!お茶飲みたかった!!!
わたしは扉が閉まる前に
「ありがとうございました!お気持ち大変嬉しかったですわ」
なんて言うのが精一杯だった。
「阿呆。麗しの生徒会長様がそんな笑顔向けたら、どこの娘だって姫さんだって勘違いしてまうわ。婚約者を誘惑した不敬罪で囚われてもオレは知らへんよ」
「いやそんなつもりは…しかしなんだろうな、彼女は…そんな感じとは違った気がするんだが…」
「しっかし変わった姫さんだったな。ちょいと調べてみよか?」
「そんな事すれば、君こそ不敬罪に問われてしまうよ」
「はッ!オレがそんなヘマすると思うんか?」
閉まった扉の先でそんな会話が交わされているなどわたしは知る由もなく、ロイさんに手を引かれ、転ばない様に歩くのが精一杯になっていた…!
リーチ!リーチが!!足のコンパスがぁぁぁ〜!!!(泣)
ブクマ評価感想等ありがとうございます!
心の底から物凄〜く!頑張る力と嬉し涙が出てきます!
明日からもガンバルンバ!!
今日は19時にも更新いたします。
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