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【書籍発売中】悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい  作者: そらいろさとり
高等部 一年生編

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あれが欲しい…よく汚れの取れるスポンジ…!この世界の一番の不満は百均がない事と見極めたり!!



午前の授業は滞りなく進んで、今はお昼休み。



学園の昇降口を一度通り過ぎたロイさんが、あり得ないものを見たようで、2度見どころか、4度見したところで眉間に手を当て言葉に悩んだ様に質問をしてきた。



「あ〜……あ〜………うん…その、ユーリ?何を…しているんだ??」


「お掃除ですわ?」


「…そうだな。三角巾被って、ホウキを持って…うん、紛うこと無き掃除だな…。……いや、そうじゃなくて、なんでこんな事になってるんだ?」


〝こんな事〟の内容は、きっとわたしと、周りに20人ほどの生徒も掃除している事に対しての質問かと理解する。


「大した話ではないのですが……」








それは今から30分程前、

シルクにロイさんそれにアベイルさんと、いつものランチメンバーが用事が有ると各々昼休みになると居なくなってしまった。


ボッチ飯は寂しいので、ちょっと時間を潰してから食堂に行こうと、昇降口に行けばなんだかゴミがいくつも落ちて居るのが目に入った。


いつも生徒が帰宅後に、学校の派遣した使用人に掃除をして頂いている為、中休みである今、当たり前の様にゴミが捨ててあるのだろう。




……当たり前に捨ててあるって何??




踵を返し、わたしはミラールームへ行き、ポケットに入っていた髪留めで髪を纏め、大きめのスカーフを頭に巻き部屋を出ると、昇降口の端に隠す様にあったホウキと塵取りなどの掃除用具を見つけ出し、ザッザッと掃き始めた。



すると…なんということでしょう!

見違える様に綺麗になったではありませんか!


「ビフォーアフター…ふふっ、わたくしの匠の仕事ね」



なんて満足したのも束の間。



「やべえっ、さっきの授業の実験材料間違えて持ってきちゃったわ〜」

「なにしてんだよ。要らないし捨てとけよ」

「そうだな」



そうしてわたしの目の前にポイっと捨てた。



「……ちょっとお待ちなさいな?ゴミはゴミ箱とご存知ないのでしょうか?」


「は?掃除用の使用人は掃除するのがお前の仕事だろ?ホラ仕事やったんだから感謝して掃除しとけよ」


「なら、あなたは学生なのでしょう?ポイ捨てなどせずにお勉強なさったらいかがかしら?」


「お前!使用人の分際で…あ?使用人じゃないのか?制服着てるし…兎に角平民だか下級の身分の分際で俺に物言える立場だと思うな!!」


「例えわたくしが使用人だろうが、身分が低かろうが、お仕事されている方を敬う心をご存知ない?」


「お前…汚え掃除の使用人レベルのクセに!自分の身分を弁えて話せ!!」


「身分ではなく、どの様なお仕事されている方に対しても、感謝と敬う心が大切ですよ」


「だからなんだ!偉そうに言いやがって!!いい加減に…‼︎」



そこまで言ってわたしの肩を引っ張り目が合うとガチンッと石の様に固まった。



「……はっ!!?」

「お前威勢はどうしたんだよ?なになに?そんな可愛い子だった?」

そうニヤニヤして覗き込む友人Aも固まった。



「使用人だろうと平民だろうと、この様なお仕事されている方々がいらっしゃるから、わたくしたちは恙無く過ごせる事をご存知ないのかしら?掃除人?汚い仕事?3Kのお仕事は大変ですが、皆さんの生活をより良くして下さってるのですわ!」


「は…?さんけー?」


「キツイ、キタナイ、キケンですわ!

わたくしたちの様に、まだ親の恩恵を受けて日々勉学のみで過ごしているだけと、お仕事されているという事は社会貢献の格が違いますわ。それに、神聖なる学び舎に平気でゴミを捨てるなど、もってのほかではありませんこと?」


「す…すいません…」


「そんなわざわざ使用人に来て頂かなくとも、自分達の学び舎くらい、自分達の手で綺麗に致しましょう?勿論、本分である学業に支障がない程度で充分です。ね?」


ニコリと笑えば、コクコクと頷く。


「まぁ賛同頂けて嬉しいですわ!でしたら…はいっ!」


「…え?これは?」


「あら?ご存知ありませんの?雑巾ですわ!お掃除しておりましたけど、1人では窓まで手が回りませんでしたの!!拭いて頂けると助かりますわ!」


にっこり笑ったら受け取って貰え、おずおずと窓に近づくと…拭いてくれた。

…ちょっと不格好だけど、一緒にやってくれる心意気が嬉しい。


「ふふ…!ありがとうございます!」



…その時わたしの横でまたゴミが捨てられたのが目に入った。


「ちょっとお待ち下さいませ?」


…………






「と言うわけで、神聖な学び舎を一緒に掃除してくれることになった同志ですわ!」


「な…なるほど。よーくわかった。そうだな、神聖な学び舎を自分達で掃除、仕事してる人には感謝と敬う心か…!ふはっ面白い!ユーリは貴族とは思えん奇想天外な発想をするな!!ははっ!」


経緯を説明すれば、ロイさんが珍しく破顔した。


「あぁ俺も手伝おう。俺は背が高いし、高いところの掃除は任せてくれ」

「まぁ!!よろしいんですの?助かりますわ!」


周りからは「ロイ様!?」と声が上がるが、当人はうんうんと頷いてくれる。


「とはいえ、時間もあまり無いな、皆はお疲れ様。

午後の授業が終われば、帰りにこの場の美しさに生徒が驚くだろう。あとの仕上げは任せて、午後も勉学に勤しんでくれ」


そう周りを見渡せば、すすっと高い所を雑巾で拭いてくれた。


わたしも皆さんの方へ振り向き、三角巾を外し

「皆さんの御協力があったからこそ、とても綺麗になりました。わたくし1人ではこの様に美しくする事は出来ませんでしたわ。ありがとうございます」


そう頭を下げれば、皆さん落ち着かない様子で


「いえ!こちらこそ!大切なことを学ばせて頂きました!」

「僕もです!ありがとうございます!」

「あの…捨ててすいませんでした!!もう捨てません!!」

「私も二度と捨てませんので!あの…ユリエル様、顔を上げてください!」

「ユリエル様が率先されて一番お掃除して頂いていたのも見てました!お疲れ様でした!」


皆は口々に御礼や謝罪、気遣いの言葉を述べてくれる。


「いえ、わたくしこそありがとうございます。この様な事をされたことの無い皆様が手伝ってくださった事、誇りに思いますわ。…あら、本当に時間がありませんわ!皆さま掃除用具はそちらに置いて、教室にお急ぎになって下さいませ」


そう言えば、皆さん申し訳なさそうに用具を纏めてはお辞儀をして去っていく。







……うん。流石に途中に気付いたよ。


やっちまったな!!!ってね!




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『悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい』

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