* ドン引きの方だった…
ロイ目線の出会いの話の後編です
手紙には【是非お時間があれば遊びに来て欲しい】と書いてあった。
第一位王位継承者になって以来、誘いの手紙は山ほどくるし、普段なら忙しいと突っ撥ねるところだが、あの時の女性の雰囲気も思い出され、何故だか行ってみようと思った。
「あらぁ〜ロイ様、今までユーリも居たんですが、花を見に行きましたので、どうぞ探してみて下さいねぇ〜」
「…え??」
この僕がわざわざ家まで足を運んだのに、そのユーリとやらは待っても居ないし、この人は探せと言う。
思わず怒りが出そうにもなるがグッと堪えて、笑顔で肯く…が、イライラしてないわけが無い。ユーリだと?遊び相手と言うから、少しは聡明な奴かと考えて居たが、どうもやんちゃな男の様だ。
少し探して回れば、薔薇の花々の前に、見たことのないほど美しい黒髪の少女が立って居た。
思わず近付くと、
「シソ…ないかな?恋しい…」
そんな憂いた声が聞こえ、
「シソとは何だ?」
気がつけば声をかけていた。
彼女は、まるで夜空に星を散りばめた様な美しい大きな瞳を更に大きくさせてこちらを向いた。
「あなたはだぁれ?」
「何故お前に名乗らねばならぬ」
「ここは私の家です。そこに入られていらっしゃるのですから、名前を名乗るのは当然かと思いますが?」
首を傾げ、可愛らしい顔でハッキリ物を言う子だ。
いやそれよりも、わたしの家と言うことは、この子がユーリか!?僕が来ることを聞いていない?!
今までこんな事は無かった。どんな家に行くことになっても「王子が来られる」と、なんだか子供までも緊張した面持ちで待たれているのは心苦しく、行けば我が子と僕の接点でも作ろうと、必死で大人が動く姿も苦痛になって、行くのをやめた。
そんな経験上、相手が待って居る事や、そして知っていて当たり前なんて思う様になっていたのかもしれない。
「すまん。ロイだ」
そう名乗れば、後ろの薔薇よりも満開の笑顔を咲かせて、
「ロイ様、ちゃんと言えて、偉いですね!すぐ直せるなんて賢い証拠です!!」
そう言って髪がぐしゃぐしゃになるまで撫でられてボー然として居れば、彼女は止める事なく笑顔で撫で続け、褒め続けを繰り返す。
我に返って、無礼者!と手を払っても、満面の笑みをして更に褒めて褒めて褒めまくってくる。名前はユリエルだと名乗ってきたので、ユーリは愛称なのだと知る。
弟妹がいると言えば、羨ましいと騒ぎ、母がまだ回復していないと言えば、悲しそうにした…かと思えば、手を引き遊ぼうと言う。
今までの人間との行動パターンが違いすぎて、頭が追いつかない。
でも時間が経つにつれ…兄がいた頃以来に、表情が感情が揺れ動くのを感じた。
こんなに駆けたのも、笑ったのも、褒められたのも、ボールがうまく取れなくて悔しくて拗ねてしまったのも。
……いや、きっと生まれて初めてだ。
だって僕は知らない。
ボールを取ることに必死になる事がこんなに楽しいことも、手を引かれ2人で転んで痛いのに何故だか笑ってしまった事も、帰りの時間と言われて…帰りたくないと思ったことも。
しかし彼女はまた遊ぼうと言った。また沢山話をして欲しいと。そして僕の知らない家族の未来の話まで。
また来ていいかと聞けば、勿論ですと躊躇いなく言う。
弟妹も可愛がりたいと言われて、何となくそれは嫌だと思っていたら、心を読まれたかのように、僕1人でいいと、また会えるのが楽しみだと言ってくれる。
背中を向けるが、何故だかあの屈託なく笑う彼女に僕を忘れさせたく無くて、踵を返しその手を取る。
思い返せば、今日の僕はただの子供だった。
王子でもなんでもない、ただの子供になっていた。
なんだか次に彼女にまた子供扱いされるのが嫌で、必死で言葉を捻り出し、その手に口づけを落とせば、彼女は驚いた様に固まっていた。
うん。これでいい。
僕の宣言は彼女の記憶に残るかもしれない。
もし残らなければ、また次に彼女になんと言えば僕を覚えてくれるだろうか?
それにまた彼女と共に時間を過ごすにはどうしたらいいのだろう?
帰りの馬車の中はそんな事で頭はいっぱいだった。
また会おうの約束をこんなに心待ちにした事は今までに無かったと、思わず笑みが溢れていた。
ロイ様目線でした。
サブタイトルは前半のタイトルの回答ですw
明日からまた本編再開です。
宜しくお願いします!
連休は午前更新にします^_^
お時間のある時にお楽しみ頂ければ嬉しいです。





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