* キミの思い出は薔薇の香りがするなんて言ったら笑うか照れるか…どっちだろうな?
ロイ目線の出会いの話です。
幼き頃の記憶とは、甘く残酷だ。
兄は死んだ。
まだ6歳だった。
その時俺はまだ4歳で、二つしか違わないのに、真っ直ぐ前を向き、気高さすら感じられる兄に憧れすら抱いていた。
そんな兄が突然亡くなった。
父王について行った鉱山への視察の時、突然兄の乗っていた馬車の足場が崩れたそうだ。
数日前の大雨と鉱山の開坑によって気付かぬうちに地盤が緩んでいたらしい。
運が悪かったとしか言えなかった。
被害は兄の乗っていた馬車だけだったのだから。
その時の俺には、兄の死を周りに何を言われてもまだはっきりとは理解出来ず、ただ兄の居ない、あの父の横で凛とした姿で立つのを見られなくなったこと、出来る事が増えれば、誰よりも優しく褒めてくれる兄が、いくら探しても居ないことが辛かった。
でも周りは泣くことを、いつまでも塞ぎ込む事を良しとはしなかった。
誰かが言った。
「弟君が居て良かった」
その言葉を耳にした頃から、俺の周囲は慌ただしく変わっていった。
いつの間にか今まで兄に付いていた騎士が自分の周りに付いた。
一挙手一投足、何をしてても視線を感じるようになった。
家庭教師からの授業内容が増して、公務という仕事が増えた。
呼び名が「ロイ王子」から「王子」と呼ばれる事が増えた。
そして……、なにより優しく頭を撫でて、褒めてくれる手が無くなっていた。
必死だった。
人は残酷なもので、悪気無く言葉の刃を突き付ける。
お兄様はこの頃ここまで出来ていた。
お兄様はこれが得意だった。
お兄様なら立派にこなせていた
お兄様なら…お兄様なら…
兎に角必死に、少しでも見えぬ兄に追いつこうと、子供とは思えぬ程の努力をしたと思う。
それから二年程経った頃、弟妹を産み産後の状態が芳しく無く、客人もとらぬ母から珍しく呼ばれていけば、そこには自分にも父にも似た髪色と瞳を持つ、優しげな女性が居た。
「あらぁ〜、ロイ王子様、お疲れですねぇ〜」
目の前に座り、視線を合わせて頬を撫でられると、癒しの魔法なのか彼女はフワリと光り、その光は僕の中に入り込み消える。
なんだかポカポカとしたものを感じて、彼女を見れば、
「ねぇロイ様?うちにもロイ様くらいの子が居るんですよ〜、一人っ子なので遊んでくれませんか?」
普段ならどこの人間かも分からない人となど、勝手に約束などしない。
でもこの似た毛色のせいなのか、癒しの力のせいなのか、無意識に頷いてしまっていた。
「あ…貴女の子と遊ぶかどうかは、当日お会いして決めさせて頂こう」
「勿論ですよぉ。ねぇよろしいでしょう?王妃さま?」
ベットに座る母を見れば、穏やかに微笑み頷いた。
そういえば母を見るのも久しぶりだったと、その顔を見て気がつくが、今更客人の前で甘える事も近付く事も出来ずに居ると、
「では、わたしは帰らせてもらいますねぇ。ロイ様、お忙しいでしょうが、お母様も寂しがってらっしゃるし、お時間あるなら是非お話してあげて下さいねぇ〜」
そう手を振りニコニコと部屋を出て行った。
変わった人だと思ったが、その言葉を汲み母と久方振りの会話はなんだか寂しさと嬉しさと、弱った母に甘えてはいけないと思う気持ちが混在し、過ぎていった。
それから数日後、彼女から手紙が届いた。
長くなったので、2話になりました。
にわにはにわにわとりがいるにわにはにわにわとりがいるにわにはにわにわとりがいる。
※初感想頂きました!ありがとうございます!!!





一部通販はこちらで是非(*´꒳`*)