じゅげむじゅげむごこうの…寿限無ちゃんって呼んだらダメなの?なんで毎回フルネーム?
「大事なんだよ姉さん。」
「だってロイ様の権力まで使って頂いての箝口令よ?魔力の色なんて、みんな調べてる事なのでしょう?」
あの後、ざわざわとする事もなく、皆さん目線を左右に彷徨わせコクコクと肯くと、そのまま誰も喋ることなく妙に静かに初日の授業は午前で終わり、今は帰りの馬車の中。
「そうだ。俺達は中等部でもそれなりの人数が水晶を触る姿も見たし、俺は公務の関係で神殿でも貴族や民間の者達が調べている姿も見てきたが、ユーリの様な反応は初めてだったからな。」
いつもと違うのは隣にロイ様が乗っている事。
話し合う為の個室代わりなので、従者さんにお願いして帰宅するのではなく、学園の近くを適当に歩いて貰っている。
「そうなのですね。世間知らずで申し訳ありません」
思わずシュンとしていると、
「まぁなんだ、知らない事も無理はないし、気にする事はない」
「そうだよ姉さん。ロイ様もこう言ってる事だしね⁉︎」
2人はそう口々に慰めてくれる。
「ありがとうございます。ロイ様、シルク」
御礼を述べて2人を見れば、ロイ様が顔を顰めているのに気がつく。
「ロイ様?どうかなさいましたか?」
「いつまでその呼び方なのかと思ってな」
「えっと…?ロイ様?」
「昨日…その、アイツのこともナントカさんと、呼んでいただろう?」
記憶を手繰り「えっと…アベイルさんの事でございましょうか?」思い当たるのはそれくらいだと首を傾げて問えば、何故かまたも眉間にシワを寄せ頷く。
「先程も言ったように、学校では身分は関係ない。婚約者な事は変わりないが…アレだな。その…もう少し対等な関係の呼び方のほうが、周りも気安いのではないか?」
不思議にも珍しく少し視線を彷徨わせていらっしゃる。
馬車の中に虫でも入ってる?
しかし言われてみたら確かにそうなのかも知れないけど、幼い頃からビシバシやられた王妃教育で、たとえ婚約者とはいえ、そんなに気安くして良いものではないと叩き込まれている。
どうしたもんかとシルクに視線を送ると、一つため息をついて、
「つまりロイ様は仲間外れみたいで寂しいんだってさ」
やれやれと言った風に首を左右に振るっている。
「な……!?そんな事は言ってないぞ!?」
顔を真っ赤にしてシルクを見るが、シルクはとにかく面倒くさそうな顔をしていて、思わず「ふふっ」と、笑ってしまう。
わたしの知らない中等部の間の、この2人の絆というか、友人関係が見えた気がして。
「ではなんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」
「…!そうだな、うん。ロイ、ロイでいいぞ!」
「それはちょっと…」
王族の方を呼び捨てにするのは気が引けて断ると、向かいのシルクが肩を揺らし、ロイ様はなんだかショックを受けているようだった。
「ならなんとなら呼べる?」
「そうですね…えっと…う〜ん?ロイくん?」
どうかと見上げて聞けば表情が固まるのが見て取れた。やはり気安過ぎたかと、「ロイさん…で宜しいかしら?」と問えば、少し視線をそらされ「え…あ、うん…まぁ…今はそれでいいだろう」納得したのか肯いてくれた。
今はって事は、また学園が終わったら『ロイ様』に戻さなければならないのね。と、少しだけ寂しく思うが、
「折角同じクラスですし、皆様との距離が近付けるよう、シルクも同じようにお呼びして宜しいですか?」
ナイスアイディアとばかりに手を打つと、すかさず「ロイさん!あっ、いいですね!クラスメイトですもんね!ロイさん!ロイくん?どっちがいいですか?」間を開かずシルクから援護射撃が来た。
何故だか嫌そうな雰囲気を一瞬感じた気もするが
「仕方ない…許可する」
「僕のこともシルクさんでいいですよ?」
「未来の義弟だからな!呼び捨てにさせてもらうよシルク!」
「まぁ今はそれでいいですよ?気分が変わったならいつでも〝さん〟でも〝くん〟にでも変えて下さいね。」
「なんだそれは!?」
「予定は未定のようなので」
「貴様…!」
なんてまさに気安い会話が続いていく。
男の子の友情万歳!
野球でバッテリー組んだら、2人ならいいかもしれない!
その場合ピッチャーはロイ様…ロイさんで、キャッチャーがシルクね!!
息子の少年漫画を思い出し、2人を見て微笑めば、2人とも気まずそうに目線を合わせて外に視線を外された。
あっ!あれかな!?母や姉に友達と無邪気に遊んでる姿を見られた時、照れ臭いのか妙に空々しくなるやつか…!!
ごめんごめん!もう見ないよっ!!





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