SSRってなんだっけ?
「あの方がユリエルさま…」
「黒目黒髪でなんてお綺麗な…」
「…未来の王妃様だろ?悪い印象持たれないようにしないとな…」
「ロイ様が見染めて許婚になったってのも分かるな…」
「シルク様も素敵…」
わかる〜見ちゃうよね〜!! コソコソ喋ってても地獄耳が拾っちゃう〜!どんだけ〜!
話題も仕方ないって、そりゃ黒目黒髪、ロイ様の許婚、王妃候補、公爵令嬢、弟イケメン。
なにこれ国士無双じゃん!
てか黒目黒髪、マジでレア!!それなりにいるんじゃないかとか思ってたけど、学園入って気がつきました!スーパーレア!みんな素敵な御髪だこと!
基本は茶色とかグレーとか比較的抑えめの色なのね。
我が家に来てたカラフルな方達も、今思えばレアだったのね…もしや高位貴族の方が、髪の毛カラフルになりやすいのかしら?遺伝子?はっ!メインキャスト仕様のカラーか!?
って、よくよく見ても私と同じ黒髪どころか、黒目の子すら見渡しても目に入らない。
黒目黒髪のわたし、カードゲームならSSRじゃん!!
……あれ?てかSSRってなんぞや。まずSRはスーパーレアかしら?
それなら、スーパースーパーレア?スーパースゴイぞレア?
なんか、前世で小学生だった頃の息子に言われた気もするけど…思い出せない。いや元々興味ないから聞き流してた気もするし…スーパースゴイぞレアってことで納得しよっと。
適当なタイミングで周りに微笑みを向けながら、向かう先は1年1組。
もう入学手続きの資料にクラスは書かれてたから、あの新学年ドキドキクラス発表〜! 貼られた紙の前でキャーキャー言うことも無い。
なので中等部の経験から、クラス位置もほぼほぼ把握してる、同じクラスのシルクに着いていく。こっそり彼にだけ聞こえる声で
「ところでシルク?こーゆー時は、教室へなんて言って入ったらいいのかしら?」
「普通でいいんじゃないかな?」
「そのここの普通がわからんから、聞いてんのよっっ!お姉ちゃん今日学校デビュー!第一印象大事!気分はなめ猫上等よっ」
「なめ猫……?なにそれ……、まぁいいや。いつもの外での挨拶みたいに、おはようございますとか、ごきげんよう……とかでいいんじゃない?」
「……なるへそっ!なら頑張るから!! ちょいとシルクさんや、可愛く『お姉ちゃん頑張って!』って言って?」
「……やだよ」
「………………はぁ…それだけで、それだけでお姉ちゃん頑張れるのに……」
「姉さん頑張って」
「お、ね、え、ちゃん♡」
「……おねぇちゃん……がんばって」
「満点!満点よっ!でもあと首傾げてくれたら、120点上げちゃうけど、お姉ちゃんめっちゃ頑張るっ!脱引き篭もり!今日からニューお姉ちゃんで頑張る!!」
「……はぁ……なんの罰ゲームなのコレ…?」
久々のお姉ちゃん呼びに満足して、たどり着いた教室の前に立つ。
ちなみに先程までの会話は小声で二人だけに聞こえる声で話してた。だってみんな遠巻きに見ることはあっても近付いて来ないし。
でもとにかく学校生活の目標は脱ボッチ!友達100人出来るかな〜?富士山の上でおにぎりたべたいぞ!! あっ富士山無いから、学校の帰りに友達とかと買い食いとかしちゃう?!
交換日記の相手見つたり、授業中に小さく畳んだお手紙交換とかしちゃって……折り紙よろしくめっちゃ可愛く折って、休憩時間に折り方教えて〜とかなって人気者になったりしちゃったりして〜!うふふふ〜
「姉さん、教室着いてるよ」
「はっ!トリップしてた!」
「知ってる」
一つ息を吐いて鬼教官ならぬ、鬼家庭教師にこまごまと指導された、王妃スマイルを改めて作ると、扉に手をかけ、優雅に、そして指先まで美しく意識をし、扉を開けて……、
「みなさま、おはようございます」
「あぁおはよう。いい朝だな、ユーリ」
その扉の先には壁が立ち塞がっていた……。
「ごきげんよう、ロイ様。お久しぶりでございます。」
「自宅から通うそうだな?道中何があるか心配だ、私も寮生活もしてみたいし、どうだ?ユーリも一緒に寮生になるというのも一興だとは思わないか?」
「まぁ素晴らしい御提案でございますが、一緒にと言うには男女の寮は幾分離れすぎておりますし、馬車の通学でも弟のシルクと一緒ですから、ご心配には及びませんわ」
「姉さんは僕が御守りしますので、ご安心下さいロイ様」
王妃候補スマイルで、キラキラした弟と、キラキラロイヤルスマイルを浴びながら、クラスデビューを失敗した事に心で涙を流す。
(みんなが…みんなが私をみる目が明らかに引かれてるっ!!そらそうだよね!王子様とその婚約者、公爵家跡取りの国政コンボ!おいそれと混じったらボコボコになりそうで私だって近づかないしっ!)
てかロイ様もロイ様よっ!同じクラスなのは知ってたし、こんな扉の前で待ち構えられてたのは少し計算外だけど、なにより計算外は、
この身長と体型よッッ!!!!
あの出会った頃のあどけない可愛さ、子供の成長は早いと言うけど早すぎない?
身の丈はもう少なくとも180は明らかに超えてそうだし、スラリとしていらっしゃるのに、キチンと鍛えてらっしゃるらしく、体幹バッチリ!それでなくともスタイルいいのに、しゃんと伸びた背筋が更に背を高く見せてる。
わたしも160は超えたはずだけど、男の子の成長には目を見張るものがあるわ…。
しかしスマホが流行り出して、子供の猫背が増えたあの世界には、なかなかこんなピシャリとした子は減ったからなぁ〜。
いやこんな顔面偏差値、タレントさんでもそう見たことないか。平たい顔族だったしね……。
「うわぁっ!すいませんっ!!」
その声と同時に、ギュウと潰された。倒れなかったけどサンドイッチ。
前パン王子、後パン義弟。具材わたし。せめて赤髪ならトマト、お父様みたいな緑ならレタスになれたのに、黒髪のわたしじゃせいぜい海苔だわ。
とか下らないこと考えながらロイ様へお詫びと、後ろから必死の謝罪が聞こえ振り向く。
「申し訳ありませんっ!!学校が大きくて、道に迷いまして!! 今日から入学します!アベイル・ショウ・ナルファンと申します!!」
青目青髪のアベイルさんね…なんか聞いたような…っと。
「大丈夫ですよ。それよりこの後入学式ですから、ここに居る全員今日から入学ですよ」
そう微笑む弟へ更に援護で、
「お気になさらず。わたくしも中等部には通っておりませんので、お気持ちよくわかりますわ。どうぞ三年間宜しくお願い致します」
そう微笑むが、アベイルさんは目を細めて、
「あれ?眼鏡掛けてるのに、イマイチ見えない…」
そう顔を近づけてきたところで、わたしはグイッと後ろから肩を引かれ、アベイルさんはシルクとロイ様に顔面押さえられて止められたところで…
わたしの足の下で「パリン」と音を立てて何かが割れた。





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