「習慣、体、重ねて」
「では、始めます……〈接続〉開始、認証コードは〈0081〉」
「え、なに? コネクショ……?」
「……調整者登録名称、フリス・クニークルス」
彼女が言葉を言い終えた直後、俺の身体が青く発光する。
【……認証コード及び調整者登録名称を確認……完了。調整享受態へと移行……】
「ほあっ!? 何の光!?」
「……まだ動かないで、タクロー……ッ!」
【……完了。〈エンヴリヲ〉との接続を許可】
そして俺の全身を覆う装甲のような物がガシャガシャと音を立てながら展開。
「うわわうわわわっ! 待って、ちょっと待って待って! 何かヤバい、俺の身体が何かヤバいってぇ!!」
「……始めます!」
────ずぷんっ。
フリスさんはそう言って、装甲が開いて剥き出しになった俺の身体に両腕を突っ込む。
【……着床を確認。調整開始……】
俺の視界に浮かぶ意味深な文字……
「あううっ!」
そして何故かフリスさんが喘いだ! ナンデ!? フリスさん、ナンデ!?
「えっ、何!? 大丈夫!?」
「だ、大丈夫です……気にしないで……あぁっ!」
「ええと! なんか凄い声出てるよ!? フリスさ」
「大丈夫ですから……っ! 私に、任せて……っ!!」
フリスサンは喘ぎながら俺の体内に深く手を入れ、盛大に悶えながら俺に抱きつき耳元で色っぽい吐息を吐く!
「はぅ……んっ! だい、じょうぶ……ですからっ!!」
「ダイジョウブ!? ダイジョウブってなんだっけ、日本語だっけ!?」
「あはぅぅっ!!」
調整中……
調整中……
調整中……
はい、何が起きてるのかという説明は相変わらずしてもらえません。調整中って何だよ。ほらアミダ様、説明を。
【……調整中……】
クソッタレェ!
……これがフリスさんの言う〈調整〉っていう大事な作業らしいんですけどね……言わせて下さい。
_人人 人人_
> 助けて! <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
『かかってこい』とか『本気見せてやるよ』とかいう大それた事を口にしてすみませんでした!
だから、助けてください! 誰か僕を助けてください!!
「ふああああんっ!!」
「あぁぁぁああん!?」
フリスさんがまた凄い喘ぎ声を上げて更に強く抱きついてくる!
ふああっ、柔らかっ! もう胸だけと言わずに何もかもが柔らかい!!
「あっ、駄目! まだ、動いちゃっ……!!」
「ちょっ、もう勘弁して!? 俺はもう出るから!」
【……警告。調整完了率60%……不完全。調整続行を要求】
「ファッ!?」
「まだ、離れちゃ駄目ですっ!」
フリスさんは逃げようとした俺を後ろからギュッと抱きしめる! 装甲が開いて露わになった俺の内部に彼女のたわわな果実がむにゅっと侵入し……
「ふあああああああっ!!」
彼女はもっと激しく喘いだ!
「だ、だだだ、大丈夫!? 何か、何か凄いよ!? 凄い声出してるよ!?」
「だ、大丈夫……っ! だから、だから動かないで……じっと、じっとして……っ!!」
「い、いや、でも……っ!」
「あうううっ!!」
「じっとしてられるかぁぁぁ────っ!!」
堪えきれなくなった俺は無意識にフリスさんから離れようとした立ち上がる!
【……警告。調整完了率80%……不完全。調整続行を要求】
「もう大丈夫だから! 先に俺は」
「だ、駄目ですぅぅーっ!!」
そんな情けない小林くんの腕に彼女はしがみつく!
「あびゃああああ!?」
【……調整続行……】
彼女の豊満な両乳房に挟み込まれ、〈終末〉すら退けた蒼き光芒が漲る我が右腕は呆気なく無力化された! ああ、逃れられない!!
「まだっ……駄目ぇぇぇぇぇ────っ!!」
フリスさんは俺の腕を強く抱きしめ、激しく身を捩らせながら喘ぐ! 彼女の表情、声、反応の全てが俺の大事なナニカに多大なダメージを与えてくる!
「あ゛あ゛あ゛も゛お゛お゛や゛た゛あ゛あ゛あ゛────!!」
俺は叫んだ。もう泣き叫ぶしかなかった。
何の説明もなく怪しい部屋に運び込まれたと思えば……待っていたのはメンテナンスとは名ばかりの濃厚ぬるぬるプレイ。生まれてこの方、女の子とキスをしたこともない俺にはあまりにも刺激が強すぎた。
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
「あびゃああああああああああっ!!」
プール室に木霊するフリスさんの喘ぎ声と俺の絶叫。彼女は一際激しく抱きついてビクビクと身体を痙攣させた後、ぐったりと俺の身体に凭れかかった……
「はぅ……んっ!」
フリスさんは俺の背中でハァハァと艶かしい声を上げている。どうしよう……どうすればいいの? 俺は、一体どうすればいいの……?
「も、もう……大丈夫……。大丈夫、ですからね……」
何が大丈夫なんですかね!?
◇◇◇◇
「……どう? 他国の様子は」
「異常ありません。他の国々も終末の阻止に成功したようです」
七条は沢山のディスプレイが表示された異様な部屋で報告を聞いていた。
そして今回も無事に世界の〈終末〉を阻止できた事に彼女は安堵の表情を浮かべる。
「100mを超えるような〈侵略態〉が出現したのは日本のみです。次点でロシアの80m級ですが、それでも異常なサイズと言わざるを得ません……」
「本当に、よく退治できたわね……あの状態で」
〈終末〉は全世界に同時に出現する。
その姿、能力、大きさには個体差があり、国毎に個別の〈終末〉が存在しているというのが定説となっている。それぞれの〈終末〉に共通しているものがあるとすれば、出現時に空を割って現れる事と、出現直後は〈顕現態〉呼ばれる人型に近い形態を取り、やがて〈侵略態〉と呼ばれる形態に性質変化するという事だ。
「……」
「どうしました? 七条さん」
「いいえ、何でもないわ……気にしないで」
「あ、はい……」
そして世界中に〈終末〉が出現するように、世界にはそれぞれの国を守護する〈終末対抗兵器〉が存在する。彼等の姿や能力にも一貫性はなく、共通しているのは20歳未満の少年少女である事と、各々に最低一人は〈調整者〉と呼ばれるパートナーが用意されていることだ。
「ねぇ、檜山くん」
「はい、七条さん」
「貴方は、今まで自分を守ってくれていた人の中身が……突然 〈別人〉になったらどう思う?」
「……はい?」
「……ごめんなさい、変な質問したわね。忘れてちょうだい」
七条は意味ありげな発言を残して部屋を後にした。
残された檜山という若い職員は困惑しながら彼女を見送り、彼女と入れ違うように部屋に入った高槻に声をかける。
「主任……、七条さんに何かあったんですか?」
「ん? ああー……、まぁ色々とな」
「そ、そうですか」
「そっとしておいてやれ。誰だって付き合いの長いパートナーにいきなり忘れられたら傷つくだろう?」
高槻は部屋を去った七条の特等席に目を向けながら、何とも言えない調子で答える。
「さて、そろそろ月末だな……例の準備はどうなってる?」
「いつもどおりです。彼らはコバヤシ君に会えるのをとても楽しみにしているそうですよ」
「そっかぁー……、楽しみにしてるかぁ……」
「……主任?」
「いや、何でもない」
微妙な表情を浮かべる高槻を檜山は不思議そうに見つめるが、彼は何も答えなかった。
「習慣、体、重ねて」-終-
>Frith<KOBAYASHI<




