表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/110

かなえと謎の男

午後13時55分

天宮宅


かなえは自分の携帯電話で、ただちに【民間協力者】である優、ユンファ、リュンの3人を呼び出した。

ハヤト不在の今、自分だけで、この町から1人の人間を捜し出すのは、到底ムリだからだ。

ちなみにエイミーは、一時的に他の友達に預けた。

「いったいどうしたんだい、かなえちん?」

「ってか、ひっさびさやな、ウチらの出番も!」

「待ちに待ったぜよ!」

3人がそれぞれかなえにそう言うと、かなえは1度深呼吸をし、真剣な目で3人に告げた。


「皆、よく聞いて! この町のどこかに、

今、他の星で起きている事件について、

なにか知っているかもしれない人物がいるハズなの!

私と一緒に、ソイツを捜すの手伝って!」

すると3人は、同時に、右手の親指を、立てた。


「それでかなえちん、ソイツの特徴とかの情報は?」

優がかなえに尋ねる。するとかなえは、自信なさげな小さい声で、

「確か……紫がかった黒髪に、銀色の瞳の男。【コショウ】なるモノを、この町で探し回ってるわ」

「【コショウ】ってアレか? 調味料の?」

これはリュンだ。

「たぶん違う。ただの【胡椒】だったら、事件なんて起きないわ」

「ところで、いったいどういう事件が起こっとるがぜよ?」

この質問はユンファだ。


「……アイドルの『ルナーラ=エール』が、この町に来た後で(おこな)ったライブで倒れたの」

かなえがそう告げると、同時に3人が、動揺した。

「【コショウ】なるモノとその事件の関連性はまだ分からないけど、とりあえず、瞳が銀色の男を捜して!」

「そういや、どうしてかなえちんが、その怪しい男の特徴を知っちょるんじゃ?」

ユンファがまた質問をしてきた。


「……『明星食堂』で、ソイツが【コショウ】なるモノを探してたのよ。でも、その時はまだ事件の事を知らなくて」

「なるほど。じゃあとりあえず、1人1人、分かれて捜しましょ。

そんでソイツを見つけたら、すぐに皆の携帯電話に連絡って事で!」

優の台詞を合図に、謎の青年の捜索は始まった。



それから2時間以上、かなえ達は謎の青年を、町中捜し回った。

だけど、誰もが、その謎の青年を見つける事は無かった。

おっかしいな。4人でこれだけ捜しても見つからないだなんて……。

もう星川町から居なくなった可能性もあるが、それはありえなかった。

あらかじめ、かなえは星川町唯一の出入り抜け道の近くに住む人に、出入り抜け道の監視を頼んでおいたのだから。

なので、その道を通るのが地球人だろうが、異星人だろうが、すぐにその人から連絡が入るハズだ。


『町立星川中学校』の校庭は……別に捜さなくてもいいわよね。

だってアイツ、()()()()()()()()()()()()()

かなえはそう思うと、謎の青年の捜索を再開した……その時だった。

かなえの後方から、何者かの両腕が伸びてきた。

「!!?」

かなえは、すぐにその腕から離れようと、前方に駆け出した。

だがかなえの後ろに居るヤツは、すばやく右腕で、まるでかなえを抱き締めるように動きを封じ、

左手で口を封じると、近くの路地裏へと、かなえを連れ込んだ。


「ん゛!? ん゛ん゛~~~~!!?」

必死に体を動かし、抵抗しながらかなえは大声を出そうとする。

だが、ソイツの力は強く、かなえは抵抗らしい抵抗が全くできなかった。

まさか、このまま顔も知らない人に、いやらしい事をされるのだろうか?

かなえの中に、背筋が凍る程の、とてつもない恐怖が生まれる。


だが、その時だった。

「こっそり〝エ〟を見つけて、速やかに帰らせてもらいたかったのに。

まったく。まさか君がここまで事を大きくするとは思わなかった」

その声には、聞き覚えがあった。

『明星食堂』で擦れ違った、自分達が今捜している謎の青年の声だった。


「ん゛!? ん゛~~!!? ん゛~~!!?」

自分の動きを封じているヤツが、あの銀色の瞳の青年だと分かった瞬間、かなえの顔が一気に赤くなった。

同時に、心臓が高鳴り始める。

ど……どうして私、この人の前だとこんなにドキドキするの!?

かなえは、自分がよく分からなくなった。


と、かなえの心がそんな状態だと知らずに、青年はかなえに話しかける。

「とりあえず、この件から手を引いてくれると嬉しいんだけど、ダメかい?

君が今、関わろうとしてるのは、宇宙の裏社会が関わる事件だ。下手に関われば、君の命は無い」

言い終わると同時、青年はかなえの口を封じている左腕を、かなえから離す。

これだけ脅しをかければ、おとなしくなるだろうと思ったのだ。


だが、青年の予想に反し、かなえは大声で、

「ちょ!? どこ触ってんのこの変態!! 宇宙の裏社会だかなんだか知らないけど、

今アンタが現在進行形で私にしてるのは『強制わいせつ』よ!!

警察に捕まりたくなかったらさっさとその手をどけなさい!!」

怖気付く事無く、かなえがそんな台詞を言ってきた事に、青年は一瞬唖然とした。

だがそのすぐ後に、

「クッ……ハハッ!」

急に青年は笑い出した。


「な……なによ!!」

青年の反応に、かなえは顔を真っ赤にしながらも、怒った。

すると青年は、なんとか笑いをこらえ、

「ゴメン。まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったもんで。

しかし、君も勇気があるな。この事件に関わろうとするなんて」

「アンタが探してる【コショウ】なるモノのせいで、少なくとも1人、被害者が出てるかもしれないのよ!

しかもそのせいで、この町が消えるかもしれないの!!」


「……なんだって?」

かなえに衝撃の現状を告げられた瞬間、青年は急に真剣な顔になった。

「まさか、もう誰か【コショウ】を使ったっていうのか!?」

そう言うと青年は、かなえから右手を離し、すぐにかなえの前に立つと、かなえにさらなる質問をした。

「あの【コショウ】は、とても危ないモノなんだ!! いや、()()()()()()()()()()()()()……

とにかく、品名に【コショウ】と書かれた小包がこの町に届いたハズなんだ!! 知らないか!!?」


急に青年が自分の前方に回り込んだ事に、かなえは心臓が飛び出そうになるくらい驚いた。

だけど、その【コショウ】なるモノがとても危ないモノだと知り、一気に頭が冷めた。

しかし、いくら頭が冷めても、品名に【コショウ】と書かれた小包など、知らなかった。

「……ゴメン。知らない」

「……そうか。すまない、強引に話を聞いてもらって」

『強制わいせつ』に対しての謝罪は無いのか、とかなえはふと思った。

その間に、青年はまた、かなえの前から立ち去ろうとする。


かなえは、『強制わいせつ』に対しての謝罪を求めようと、青年を呼び止めようとして……思い出した。

『ルナーラ=エール』は、ライブの前、確か『中華飯店【王龍】』に寄った。

そして、青年が探している【コショウ】なるモノ。

かなえの中で、今回の事件の全ての事柄が……繋がった。

「待って! もしかして私、【コショウ】の在り処、知ってるかもしれない!」

「……なに?」

青年は振り向きざまに、真剣な目でかなえを見た。



午後16時14分

中華飯店『王龍』


突然、シュウレイにとっては()()()()()()()()()()青年によって、乱暴に『王龍』のドアが開かれた。

「いらっしゃ……いいっ!?」

青年はカウンター越しに、鋭い目付きでシュウレイを睨んだ。

「アンタ、やっぱり俺が探してるモノを隠してたな?」

「えっ!? い……いったいなんの事アル!? さっきも言ったアルが、

ここには()()()()()()()()()()()()()()()ネ!!」

「……おい、やっぱ()()()じゃないか!!」

「だから()()()()アル!!」


と2人が口論を始めかけたその時、遅れて現れたかなえが、2人の仲介に入る。

ちなみに優達には、青年が見つかった事をメールで報告してある。

「ちょ……ちょっと待ちなさいアンタ!! シュウレイが怖がってるでしょ!!?」

そしてかなえは、2人からそれぞれ意見を聞いた。

すると、とてもややこしい真実が判明した。



《シュウレイの意見》


『小包に入った【コショウ】は、貨物宇宙船停船場所である、

町立星川中学校の運動場まで()()()()()()()()アル。

だから宅配の人が【コショウ】を届けに()()()()()()アル!!』



かなえと青年は、言葉が出なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ