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文明を滅ぼすあるひとつの冴えたやり方

作者: 和田好弘


「爺さん、どうしたんだい店の前で」


 俺は頭の禿げあがった、筋骨隆々たる年配の男に声を掛けた。


 この爺さんは鍛冶屋の主だ。この辺りじゃ一番の腕の持ち主で、領主からも仕事の依頼がくるほどのものだ。


「なんじゃ、お前さんか」


 俺より頭ひとつ低い髭面が俺を見上げる。


 正直、この髭面スキンヘッドの爺さんはドワーフなんじゃないかと思える。


 もっとも、この世界にドワーフなんていやしないが。もちろん、エルフだのなんだのもいない。


 地球と同じく、この星の覇権を握ったのは人類だ。


「店じまいじゃ、店じまい。もう食っていけんからな」

「は? なんでまた? 食ってけねぇって、なに云ってんだよ」

「ほれ、ダンジョンで武器庫が見つかったのは知っとるだろ」

「あぁ。なんかギルドのほうで騒いでたな。二月くらい前だったっけ?」

「あぁ。で、そこまでのルートが確保されたんだと。タダで武具がそっから手に入れられるんだ。しかも時間が経てば補充されると来る。商売あがったりよ」

「そうはいっても、拾えるのは数打物みたいなもんだろ?」

「いんや、名剣と呼んでも遜色ない代物もあるんだと。もうどうにもならん」


 爺さんが肩を竦める。


「これまでの蓄えもある程度あるしな。首が回らなくなる前に引退じゃよ。なにごとも引き際が肝心ってな」

「……爺さん、これからどうすんだよ」

「そうさな。身内なんざ、10年前の流行り病でおっ死んじまったからな。ひとりで気楽なもんだし、旅でもしてみっか。この国どころか、この町しか知らんからな、儂ぁ」


 ゲラゲラと豪快に笑う。


「んじゃ、お前も元気でやれ。いつまでも冒険者なんて仕事をしてないで、地に足をつけろ。体はいつまでも元気でいちゃくれんぞ」


 そう云って爺さんは俺の胸を軽く叩くと、足元の鞄を担いで歩いて行った。


 それを俺はひとり立ち尽くすように見送った。


「悪いね、爺さん。これも仕事なんだ。ま、あんたが寿命を終えるまでは、世界は終わらないさ」



★ ☆ ★



 数年後。


 俺は町はずれのリンゴ農園に来ていた。ここのリンゴが気に入り、ずっと贔屓にしていたところだ。


 今年も買いこもうと足を運んだところ、昨年とは随分と様子が変わっていた。


 結構な人数が働いていたはずだが。


 どうにも寂れた様子の果樹園に目をやりながら、母屋の扉を叩いた。


 現われたのはまだ十代の娘。彼女が生まれた頃からの知り合いだ。


「あ、お兄さん、1年ぶり。待ってたんだよ」

「もうお兄さんって歳じゃねぇなぁ。で、待ってたって?」

「お兄さん、毎年リンゴを買いに来るでしょ。最後のお客様だからね」


 そう云って少女は歳不相応な笑みを浮かべた。


「最後?」

「うん。農園を閉めるんだ。もう、不要になっちゃったからね」

「不要って、どういうことだ?」

「あれ、お兄さん、まだ聞いてない? ほら、ダンジョンでいくらでも野菜がとれる畑に、牛だの豚だのがいくらでも湧いて出る牧場が見つかったって話。その奥にさ、果樹園があるのが発見されたんだよ。そのせいで商売あがったり……というか、完全に無用になっちゃったんだよね。私たち。

 ここらに住んでたみんなはもうダンジョンに移住しちゃったよ。

 私は、ほら、お兄さんが来るんじゃないかなって、待ってたんだ」


 寂しそうに笑う娘から、この農園最後の売り物となるリンゴを買う。


 実のところ、彼女に渡したコインも、もはや価値の失せたモノだ。すでにすべての生きるに必要な物は、ダンジョンから得られる状況だ。


 手を振って、俺は彼女と別れた。


 あとに残るは、いまだ実をぶら下げたリンゴの樹々。手入れのされなくなるこのリンゴの農園はいずれ荒れ果て、いまのような立派な実を実らせることはなくなるだろう。


 いましがた買ったばかりのリンゴをひとつ齧る。


 毎年同様、俺の好みの味だ。


 手を振って別れた少女の去った方向に視線を向ける。


 悪いな。俺はそっちにはいかないんだ。少なくとも100年やそこらはなにも問題はないはずさ。


 残りの人生、かなり長いこと退屈だろうが、少なくともダンジョン内は平穏だ。どうか平和に暮らしてくれ。


 俺はそんなことを思いつつ、もうひと口リンゴを齧った。


 ……ダンジョン産のリンゴじゃ、こうはいかねぇんだよなぁ。



★ ☆ ★



 俺がこの世界に来てからどのくらい時間が経っただろう。少なくとも1000年は経っていないはずだ。


 計画……といえるほどのものではないが、順調だ。この先、数百年もすれば文明は崩壊するだろう。


 それで俺の仕事は終わりだ。






 俺はいわゆる転移者……いや、一度死んでいるのだから、転生者というべきか。


 元は地球に住んでいた、どこにでもいる普通のサラリーマンだった。


 ある日突然起きた荒唐無稽な状況。世界にダンジョンが現われ、あたりに魔物が溢れた。


 突然のイカレタ状況。警察組織なんかじゃまともに対抗できなかった。


 一番活躍したのはもちろん自衛隊、そして次いで活躍したのが猟友会のメンバーだっていうんだから笑えない。


 まぁ、海外の警察組織と違い、日本の警察組織の装備は脆弱もいいところだということだろう。


 そんな狂った状況下、俺はあっさり化け物に殺されたわけだ。


 直後、俺はよくわからない真っ白い空間にいた。


 正面には光り輝くなにか。曰く、神だという。


 そして聞かされた。



 愚痴を。



 散々に。



 簡単にいうとだ。愉快犯的な神がいろんなところでいろんなことをやらかした。


 その神は殺されたものの、その影響が酷いことになったのだそうな。地球もその影響のとばっちりを受けている最中とのことだ。というか、僕の死んだ原因がその神だ。


 で、いま目の前にいる神は、その神の一派の神の一柱によって世界を滅ぼされたのだそうだ。主犯の神は殺されたものの、それに追従便乗したその神はわずかな罰を受けただけで、のほほんと生きているそうだ。


 故に、この目の前の神はその便乗犯な神に報復をしたいのだが、神々のルールとやらがあって、自身の世界を滅ぼした神と真っ向からやり合うわけにはいかないらしい。というか、本来、神は互いに不干渉であることが前提で、協力することはあれど害を与えるようなことは禁じられているとのこと。そこは人間社会と同様だ。


 あれだ、いわゆる法の穴をついてやられたって感じなんだろう。小賢しいだけの駄女神が! と、ぶつぶつ云っているしな。


 現状、世界を滅ぼされたこの神は新たな世界を構築中ではあるが、まだ初期段階の為に、使えずに処分せざるを得ない余剰な力が有り余っている。その力を復興のためにカツカツ状態の地球の神に支援として提供し、代わりに俺を借り受けたのだそうだ。


「君にはね、件の神の世界を滅ぼしてほしいんだ。いや、完全に滅ぼされるとさっくりやり直しをされてしまって、嫌がらせにもならないから、生物が絶滅しない程度にズタボロにしてほしいんだ」


 なんだか無茶なことを頼まれた。


「表立って私が動くことはできないからね。でも、人ひとりを転生なり転移なりで、知られずに送り込むくらいはできる。もちろん、君をただの人のまま送り込むことはしないよ。とはいえ、あまり無茶な力を与えることはできないけれど。そんなことをすると、さすがに気取られてしまうからね」


 そうは云ってもなぁ……。やることがあまりにも。


「あぁ、拒否して貰っても構わない。その時は別の者と替わって貰うことになっているから。新たに地球の担当となった大神様は過保護でね。子供たちに強要することを赦していないんだ。だからその場合は、普通に輪廻転生ってことになるけれど、現状、どれだけ時間がかかるかは不明だね。知っての通り、いま地球は滅茶苦茶で人も減ってしまったからね。

 もし、引き受けてくれるのなら、報酬はもちろんあるよ。次の人生での保証ってことになるかな。君の望む才能と資質を持たせようじゃないか。まぁ、自身の努力で自身を磨くことは当然ながら必要になるけど」


 なるほど。努力すれば才能を開花させることができるってわけか。それなら、真っ当に人生を歩めば勝ち組になれるな。


 うん。チート能力なんかよりもずっとマシだ。チートなんて人生をつまらなくさせるか、破滅させるしかないものだと俺は思ってるし。


 かくして、俺は神の依頼を引き受けることにした。俺が受けなけりゃ、別の誰かがやるってことだし。それなら俺がやって、報酬を受け取る方がいい。


 そして相談の上で貰ったのは、能力……というより、アイテムだ。ゲームでいうところの、ダンジョンを生み出すツール。即ちダンジョンコアだ。


 いまにして思うと、これは俺が殺された原因が影響しているのかもしれないな。


 俺はこの仕事の間だけ不老不死にしてもらった。なにせ思いついた計画には、とことん時間がかかる。


 異世界の人類文明を崩壊させることが目的なんだ。そんなもの一朝一夕ではできようもない。それに、単に物理的に街を壊して文明を破壊させたとしても、おそらくはあっという間に復興されるだろう。それでは意味がない。


 ならば、それらの技術をすべてロストテクノロジー化させなくてはならない。


 だからこそのダンジョンコアだ。






 そして降り立ったのは、件の女神の担当する世界において最大の帝国の帝都。


 人通りの多い大通りの真ん中に俺は立っていた。だが誰も俺を気にも留めていない。突然現れたとも思っていないようだ。


 さすが神様というところか。


 さて、さっそく行動を開始しよう。


 この世界の状況は聞かされている。地球でいうならば、産業革命まであと少しってところだ。16世紀後半から17世紀初頭くらいの文明だ。だが地球とあからさまに違うのは、銃が生み出されていないことだ。火薬は発明されてはいるが、秘匿技術とされているため、広まってはいない。


 この帝都は素晴らしく整えられた都市だ。なにせ上下水道が完備されている。実におあつらえ向きだ。


 俺は街を散策し、下水路へと入れる場所を探す。


 道路にはところどころ点検用のマンホールがあるが、あれらは地球のと同様くっそ重い代物だ。専用の道具がないと開けられない。


 かなりの時間をかけて帝都の外れにまで来たところで、やっと汚水路へと入れそうな場所をみつけた。


 帝都中央を流れる大河と違い、この川はまさにどぶ川だ。異臭がひどいが、死ぬことはあるまい。すくなくとも今の体であるなら問題ない。不快さ以外は。


 ハンカチで口元を覆い、指先に光を灯して汚水路へと入る。尚、この光の魔法は指輪の持つ効果だ。ダンジョンコアを介し生成した魔法の指環だ。


 ここに来た目的は、汚水路のダンジョン化。そして帝都地下に都市型の大型ダンジョンの構築だ。


 ある程度出来上がったところでダンジョンの入り口を帝都内に開く。モンスターを溢れさせる形で帝都にちょっかいをかけ、強引に攻略をさせる。


 そして攻略されたエリアを人間にとって有用なものであると知らしめる。


 そうなればどうなるかなんて、火を見るよりも明らかだ。


 無限に労せず手に入れられる食糧、武具、日用品、嗜好品、他諸々。


 さらには安全快適な棲み処さえも提供したらどうだろう?


 人は楽な方へと流れるものだ。芸術方面へのリビドーは続くだろうが、それだけだ。生きるために必須なことから解放され、物欲のほぼすべてを与えられるとなれば堕落するだけだ。


 暴力と性衝動というものもあるだろうが、そこもどうにでも出来るだろう。気持を安定させる薬物なりを、ダンジョン内の空気や食糧、水に混ぜ込めばいい。


 最悪、SF映画みたいにVR技術をダンジョンで再現し、そう云った面倒な輩は眠らせて、VR空間内で欲を満たす夢を見続けさせてやればいい。


 人の繋がりなど必要が無ければ簡単に途切れるものだ。


 全人類をダンジョンに招き入れ、存分に甘やかし、堕落させ、生かす。


 それを数世代続ける……2、300年もあればいいだろうか?



★ ☆ ★



 地上から人が消えた。


 ダンジョンが人々の生活空間となった。


 この世界の神たる女神は馬鹿なのだろうか?


 俺のやっていることを容認するとは思っても見なかった。途上で神罰でも落とすかと思ったんだが……。


 いや、そんなことをすれば信仰が失せるから放置したのか? だとしてもだ。


 俺は世界中に帝国と同様のことを行い、人類すべてをダンジョン内に取り込んだ。


 もちろん、ダンジョンに入ることを拒否する者も大勢いたが、連中には悲しいことになって貰った。


 ちょっと厄介な病に罹患させればそれで終わりだ。


 さて、後はダンジョンに取り込んだ人類だ。


 このまま飼い殺しにしても問題はない。






 地球で行われたユニバース実験というものがある。


 箱庭という楽園で何不自由なく生かされる生物は繁栄するのか? という実験だ。箱庭を地球に見立てた動物実験。


 ラットで行ったこの実験は、結論から云うと数世代で滅亡という結果をとなり、これを人類未来のモデルケースと主張した学者がいた。


 複数回行われたこの実験の結果はいずれも同じだった。


 とはいえ実際の所、人類にこれをやったところで滅亡はしなだろうと俺は思う。さすがにそこまで人類は馬鹿ではないだろうし、こうした実験結果があるのだ。なんとか回避するだろう。


 現状、俺はこれをダンジョンを用いてやっているわけだが、その目的はまったくの別物だ。


 俺の目的は技術の喪失。それもありとあらゆる技術の喪失だ。


 必要とされない技術はすぐに失われる。それらを記した文献なども、俺が積極的に処分している。記録を消し、そして人の記憶からも世代交代をもって失わせていく。


 日本でも身近にそんなものがある。


 例えばたたら製鉄。一応、現在でもたたら製鉄と呼ばれるものは残っているが、刀剣用に用いられていたたたら製鉄に関してはすでに失われていると聞く。


 例えばラムネの瓶。あのビー玉が栓になっているラムネ瓶。最近のものは口の部分が樹脂製のものとなっているが、昔ながらのラムネ瓶は、もはや日本では生産不能だとか。それらの製造機械は海外へ売却され国内にはひとつもなく、その設計図やらなんやらも失われたため、もはや再現できないとのこと。


 なんとも馬鹿げた話だが、失った技術を取り戻すことはかなわない。また初めからだ。そしてそれはもちろん、元の技術とは違うものとなるだろう。


 爺さんや、あの少女が寿命を終えてより結構な時間が過ぎた。


 あれからどれだけ経った? いまいるのはあの少女から何代先の子孫だろう?


 もう、彼らには、いまの彼らの生活を支えているあらゆるものを生み出すだけの力は喪なわれた。与えられたモノを使い、与えられたものを着、そして与えられたものを食し、与えられた娯楽に浸る。


 人類はもはや一切の生産活動を捨て、自堕落に生きている。


 すべてがロストテクノロジーとなった。






 目的は達成された。機は熟した。俺はこの世界から手を引こう。すべてのダンジョンコアと共に。


 さて、その切っ掛けとして、適当に乱暴者な人間にダンジョンコアを破壊してもらうとしよう。


 なに、ちょっと唆せばあっという間だ。



 ★ ☆ ★



 神様はゲラゲラと笑っていた。それこそ笑死するんじゃないかと思うほどに。


 人の姿ではなく、光の玉の姿であるというのに、あっちこっちに転げまわっている。まさに笑い転げるとはこのことだろう。


「あぁ……愉快だ。実に愉快だ。まさかこうも上手くいくとは。いや、大神様の推薦は確かだった」


 やっと落ち着いたのか、神は云った。


 あの世界はあっという間に崩壊した。


 今まで与えられていたモノが一切供給されなくなったのだ。


 一部の生き汚く逞しい者を除き、他はみな飢え死ぬか殺された。


 コア無き死んだダンジョンに残るものと地上に出る者と分かれ、それぞれがサバイバル生活へと突入していく。


 生き残ることのできる者はさらに激減していく。


 知能は高いが無知となった状態で、原始の状況に放り出されたわけだ。だが身体能力は現代人のそれかそれ以下。野生で生きるには過酷に過ぎる。数百年放置された地上は、まさに野生の楽園だ。そこかしこに猛獣も分布しているのだ。


 もしかしたら人類はこのまま絶滅するかもしれないな。さすがにそこまで脆弱だとは思いたくはないが……各種道具のメンテナンスの仕方も失われたしなぁ。


 なにしろ武器といえるものはすべて消えたからな。不要となってしまって。刃物なんて果物ナイフすらない。なにせすべてすぐに食べられる状態で食糧が供給されていたわけだから、無用の長物と化していた。あるとしたら、カトラリーのナイフやフォーク、椅子やテーブルを壊して得られる角材くらいだ。


 箒? それも存在しない。スライムがお掃除ロボットの代わりをしていたんだ。掃き掃除と拭き掃除が同時にできる優れた魔物だ。


「まさか、すべての技術を片っ端からここまで徹底的にロストテクノロジー化するとは思わなかったよ。

 連中、自力で火を熾すことすらできないじゃないか。海にまで行った連中は貝や蟹を獲って食べているようだが……どれだけ生き残れることやら」


 あぁ……そういえば、貝の6割以上が食中毒の元となる菌に汚染されてるとか聞いたことがあるな。……いや、あれは淡水の貝だけだっけか?


「これは衰退どころの騒ぎじゃないな。あいつめ、いまごろ頭を抱えてるだろうな。上に新規世界の申請をしたところで、いま担当している世界が滅んでいるわけじゃない。例え人類が消えても、他の動植物が繁栄している。新規世界の希望だなんて、そんな申請は却下さ。少なくとも動植物が滅ぶまでは面倒なくちゃならん。当然、自分で滅ぼすわけにもいかない。そんなことをしたらとんでもない罰則が待ってるからな。知的生命体のいない世界の管理なんて、退屈以外のなにものでもない。あの堕落した娯楽好きの女神には苦行だろうよ」

「途中で妨害と云うか、ダンジョン制圧の方向にお告げでも出すと思ったんですけどねぇ」

「ははっ。あれはまともに管理なんてしていなかったのさ。ダンジョンが供する娯楽を人類が生み出したものと思って、一緒になって遊んでいたんだ。私の所の人類、サイコー! とでも思ってたんだろ。なにせダンジョンは、あの女神をそそのかした神が作っていたものだからね。自分の世界にプレゼントされたとでも思ったんだろうよ。きちんと調べないからこうなる」


 ……アホだ。


 いや、そこまでアホだから、他所の世界を面白半分に破滅させたりしたのだろうけど。完全に愉快犯な犯罪者の思考じゃないのか? よくそんなのに世界の管理なんて任せてたな。


「今回の事でヤツは最下にまで神格を落としたからな。大神様に悪い意味で覚えが良くなったはずさ。ふふふ。ざまぁ見ろだ。これでもう、僕らにケチをつけるなんてことはできないさ。まったくもって、めでたいったらないね。

 さて、それじゃ君への報酬だ。与える才能やらなんやらは当然として、転生する時代はどうしたい。現状、僕が管理している世界はまだ途上だ。以前、君の生きていた時代に追いつくまでまだ相当の時間が掛かる。だからかなりの時間待機してもらうことになるよ。ちなみに、ダンジョンはない。もちろん。


 で、地球だけれど、実のところお薦めできる状態じゃない。君の死の原因たるダンジョン災害が原因で、おかしなことになってる。あれから数百年経っているわけだけど、文明の発展具合はお察しだね。ま、大神様は管理しやすいと笑ってたけれどね。後始末を押し付けられたっていうのに、寛大な方だよ、本当に。


 地球に転生するなら、調整も併せて200年くらい待つかな。待機時間は僕の所より遥かにマシだ。あ、ダンジョンは資源と見られて残されているよ。もちろん、君がやったような自体にはなっていない。単なる鉱山扱いだね。危険はその比じゃないけれど。


 さて、どうする? どっちの世界を選ぶ? 一応、他の世界を選ぶこともできなくはないよ。アレを恨んでた神は大勢いるからね」


 あー……そのことを全然考えてなかったな。なんせ1000年近くダンマスやってたしなぁ。

 ダンジョンのある世界よりは、新しい世界の方がいいか。地球に戻ったところで、もう懐かしさなんて感じないだろうし。


 俺は神様の作っている新世界を選んだ。


 転生時期がいつになるかは不明だが。それまで寝ているような状態になるようだ。ま、神様に忘れられたりしなければ、転生させてもらえるだろう。


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― 新着の感想 ―
うーん、商店街の近くに出来た〇オンスーパー的な滅ぼし方
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