プロローグ
ディライトと申します!
こちらの作品は、なろうユーザーのシュウさんと共に企画した『うろな町』企画の作品となります。
色々な書き手様が同じ世界で登場人物たちを絡めながら交流する、一風変わった小説となっております。
この小説を読んで興味が湧いた方は
http://kyodo765.jimdo.com/
までどうぞ!
突然だが俺は今、猛烈に溺れていた。
といっても女に溺れている訳でも、酒に溺れているわけでもない。女に溺れられるなら溺れてみたいが、それほど自分の容姿に自信があるわけでもないし、そうも言ってられる状況じゃない。
本当にそのままの意味で、川でひたすらもがいているのだ。
「もががもが!」
身体には衣服が水分を吸って張り付き、背中には特大の重たいリュックサックが掛かっている。しかも服のどこかにリュックサックが引っかかって脱げないのだ。
これは本当にやばい。水も随分飲んでしまったし、息もそろそろ限界だ。
やはり慣れないことはするもんじゃない――――
――――「ここが『うろな町』……か」
人の往来が盛んな駅構内を抜けると、目の前には賑やかな街並みが広がった。
駅前はバス乗り場やタクシーを待つ人々で溢れ、ロータリーが設置された中央は噴水を筆頭にベンチなどを携えた広場のようになっている。
まず感じた印象は、ここは都会だということだった。
俺は日比野正宗。十六歳。普通なら高校二年生であるが、訳あって中退している。
ただ毎日決められたことに忠実に従って生きる毎日に飽き飽きしていた。退屈な学校、つまらないクラスメート、口うるさい親。何かに縛られることにはもううんざりしていた。
そこで俺は一念発起して、通っていた高校を勝手に中退。親とは大喧嘩の末、「二度と我が家の敷居を跨ぐな」とまるでドラマのような一言を最後に、俺は十六年腰を据えていた家を出た。若気の至りってやつだ。
つい最近、雑誌で見たのだ。
『うろな町にはドラマがある』
この新町長だったかの言葉がどこか頭の中に残っていて、俺は導かれるようにうろな町を目指した。
仕事もなければ寝る場所もない。この先どうなるかもわからない。唯一あるのは使い道がなく貯めに貯めていたお金くらいだ。けれど、この町でなら、俺の無色透明な毎日にも彩りをもたらしてくれる。
なぜだかそんな気がしたんだ。




