第25話
20230427公開
「どう思うログナス五等級爵? パリス共和国や他の国の連中、統制を取り戻す気が無い様に見えるんだが?」
俺とアック卿は防衛線を築いた丘の上から、150㍍ほど先の街道上を算を乱した兵たちが後ろを何度も振り返りしながら足早で公都方面に向かっている様を見ていた。
本陣でも確認している筈だ。
少なくとも、危険を知らせる兆候は無い。
なのに、潰走は止まらないし、上層部にも止める意思が見えない。
「やはりゼントリウス大公閣下の危惧が当たりましたね。観戦武官さえも派遣して来ない連中など信用出来るかというのが本音でしたからね」
「南方諸国の連中からすると、難民をここまで連れて来た段階で作戦は成功したって事なんだろうな」
「自分はこれからダイガ閣下と今後の方針を打ち合わせして来ます。戦闘にはなりそうにないので、一緒に来られますか?」
「そうだな、俺も行こう。途中でロブの奴も拾って行こう」
ヘルマー五等級爵と合流して、ダイガ閣下の許に向かった。
ダイガ閣下の所には、第四陣のダグス四等級爵と殿のグドザ五等級爵が一足早く来ていた。
「さて、これからどうするのか? が問題だが、皆の意見はどうだ?」
「あと少しすれば、混乱に巻き込まれずに『五連巨星星座城塞』群に向かえます。当初の計画通り向かって、王軍や踏み止まっている諸侯の軍と合流しましょう」
「ふむ、皆に異存が無ければダグス四等級爵の意見を汲もう」
みんなの首が縦に振られた。
「良し、取り敢えずの行動はそれで行くとして、他に何か有るか?」
ダイガ閣下が更に意見を求めた。
「ダイガ閣下、自分は単身第四城塞に向かいます。ゼントリウス公国から情報収集をしたいですし、大公閣下にも根回しが必要ですから」
「その件はザックに任せた。王軍も同じ事をしているだろうが、ザックの方が本音を掴めるだろうし、交渉が進むだろうしな」
俺がゼントリウス大公と仲が良いのは北方爵家では周知の事実だ。
隠すまでも無い。
「大公閣下から会合の要請ともう一つの要請が出るのは確実でしょう。それまでにミッドガラン王国としての意見を纏めておいた方が良いと思われます」
「ん? もう一つの要請とは何だ?」
「アック卿、潰走した数万の元兵士を放置する事は治安の急速な悪化を招きます。今後、公国、我らの王国、そしてヨーク王国の3国にとっては切実な問題になりかねません」
「なるほど、ログナス五等級爵の言う通りだな」
「最悪の場合、五等級爵領、下手したら四等級爵領の人口並みの盗賊が発生する訳ですから、影響は大きいと言えます。一歩処理を間違えれば、外交問題にも発展します。もしかすればそれさえも目的なのかもしれません」
「ログナス五等級爵、いいか?」
「はい、何でしょう、グドザ五等級爵?」
「うちの長女と婚約してくれんか?」
「ご冗談を。先月産まれたばかりじゃないですか。さすがにお断りしますよ」
「うーん残念」
街道上の混乱が収まるまで待機する北方爵家軍を背に、俺と『ニィフゥネ』領の竜車は街道を外れて北上を開始した。




