△同と
模擬戦も7日目となってくると、流石に長すぎじゃないかと思う。
「次・・・」4条の細い光線。回避、首を飛ばす。
ある程度は予選で数を減らしているらしいのに、それでもまだ半分程度だそうだ。
「次・・・」後方に魔力源を感じる。爆破かな?攻撃と判断していいだろう。敵の横に動き、首を飛ばす。
あーでも、前世で甲子園とかも2週間くらいあったしなあ。これくらいが適正なんだろうか。
「次・・・」動かない。20秒待ちだな。
『トーヤ!集中できてないんじゃないの?』
光学隠蔽しながら、何か飲んでるチルに言われたくない。
「チルも出来てないだろ?結局、この1週間1度も戦闘モードにすらなってないじゃんか。」
『わたし、20秒数える係だもの!あ、20秒だよー!』
それでいいのか直掩妖精。大回りして後方へ、首を飛ばす。そういえば、暫くデコイ使ってないな。
『それに、勝手になっちゃダメってコームが脅かしてくるし。』
「それは怖いね。」
「次・・・」首を飛ばす。「次・・・」首を飛ばす。「次・・・」首を飛ばす。
動きが洗練されてきていると思う。無駄がなくなっていく。
高速移動の先を読まれて、そこに攻撃されたこともあったけれど、加速した思考と強化した体が、無理やり方向転換させてくれる。
でも、これでいいんだろうか。ただただ、素早く首を刈るだけの動きが身についているだけだ。
繰り返していったからといって、父に追いつくビジョンが見えない。
「次、カツミ=ハラシ。」
『あれ・・・戦闘モード許可出ちゃった?・・・戦闘モード起動。敵機械種、攻撃方法不明。魔力極小。レーダーに表示しますか?』
(ああ、頼むよ。)
しかし、唐突になんで許可がおりたんだ・・・?
いや、カツミって動画の人だ。地味な戦い方だったけれど、強いのかな。
動画の時にみたロボの面影がないのは、かなり装甲が薄くなってるからか。
骨格や内部の機構が、むき出しになっている部分もある。何か狙いがあるのかな。
ロボは静かに、こちらを見ている。
今まで戦ったロボは、ミサイルを派手にバラ撒いてきたり、ガトリング砲からビーム乱射してきたりしたけれど、このロボは武器が何も見えない。どう仕掛けて来るんだろう。
『20秒経過。』
反射的に飛び出す。どちらにせよ、知識も手段も足りてないんだ。
まずは斬ってから考えよう
鈍い音が響く。
ロボが、スッと右手を上げたかと思うと、攻撃が止められていた。
その動きは洗練されていて、防御に足る最低限の動きしかしていない。
・・・まずい!反撃が来る!
そう思い、大きく距離を取ったが、ロボはこちらにゆっくりと向き直すだけ。
余裕をもって攻撃を防いだ後に来るのは、何かしらの攻撃だと思ったんだけれど・・・改めて観察する。
魔導刃を見ると、1メートル程に伸ばされた俺のと違い、10センチ程しかない。
あんなので止めたのか・・・でも、どうして反撃しないんだ。
ロボの顔についた2つのセンサーは、ただ静かにこちらを見ている。
わからないけれど、まだ打てる手はある。試そう。
デコイを左側に飛ばし、逆側から斬りかかる。
ロボは左足を僅かに下げ、体を僅かにひねり、右手の刃を俺の刃に合わせる。
鈍い音とともに、金属が軋む音が聞こえる。
・・・これも防がれた。警戒し軽く距離を取る。
ダメージにはなっていないんだろう、またもゆっくりとこちらを向く。
不気味だ。防御からのカウンター狙いだとは思う。でも、2度防がれた後に攻撃に移る気配はなかった。
もっと大きなスキが出来るのを待っているのか?
(チル、敵の狙いは何だと思う?)
『確定情報なし。対象の攻撃手段が少なすぎます。斬撃によるカウンターに注意しつつ、斬りかかるしかないかと。』
答えは出ないか。いや、そのほうがいいのかもな。せっかくの訓練なんだ、しっかり考えよう。
大振りをすると危ないかもしれないなら、細かく斬りかかってみよう。
その5連撃を防がれる。でも、反撃は無い。
・・・すごいな、このロボ。
防がれた事はあった。速度についてこられたこともあった。
でも、防がれる時は速度で振り回し、速度でついてこられたら、デコイを交えたフェイントや連撃で勝てた。
でも、今、どうしたらこの守りを突破できるのか、イメージが沸かない。
ただただ静かに、こちらの攻撃を防いでくる。
・・・少し楽しい。
フェイントを交えた連撃、防がれる。
緩急を付けるか。
切りかかり、一歩下がり、デコイを2度飛ばして連撃、防がれる。
死角は無いのか・・・?後方に斬りかかる。
ほんの僅か、ほんの僅かだが振り返りに時間を要した分、防御が遅れたように見える。
距離を取ると、変わらずゆっくりとこちらを向きなおす。
振り返る動作は遅いのか・・・?
いや、そう思わせてこちらの攻撃を後ろに周ることに絞らせる狙いじゃないか?
でも、釣りだったとしたらもう少し大げさに反応しないか。
同じような動きでこっちに向き直したんだ。まるで、平静を装うような動きだったじゃないか。
加速した思考をもってして、結論は出ない。
レーダーを見ても魔力源はピクリとも動かない。デコイでフェイントを交える気配も無し、か。
単に後ろに周るだけだと、狙いを絞られるかもしれないなら、連撃の後に後方に回ってみよう。
それも防がれる。が、初めて体幹が揺らいだ。
それも一瞬の事で、ロボはゆっくりとこちらを向き直す。
これを起点にする。
次は、崩した後に、防ぎにくい位置に回って首を狙う。
2連撃、防がれる。
後方に飛び退き、左右に攻撃を振る。防がれる。が、これなら絞り込めないだろう。
後方に回り先ずは防がせ、崩すための刃を振りかざし・・・
閃光が走り、視界が白に染まる。
「クッ」思わずうめき声を上げたが、それでも刃は止めない。
防がせて、飛び退こう。
だが、刃は防がれなかった。
何かを切った感触。同時に、レーダー上のロボの魔力反応が頭上に上がる。
『敵隠蔽!』
「上か!」全力で防壁を上に張る。何が来る!?・・・待て、いんぺいって?
「わりぃな、下だ。」声と共に腹が熱を帯びる。
刃が肉を切り、骨を断つ音が聞こえた。




