到着
「さテ、こんなところですかネ。後ハ・・・戦闘が地味ですネ。流す前に編集しておきますカ。」
あの戦闘が地味なのか、しかしどこから撮影していたんだ・・・?
それにしても、コームや、領主家が民衆に対してこれほど求心力の有る存在とは思っていなかった。
「・・・随分な盛り上がりだったな。辺境伯家の人気がここまで凄まじいとは知らなかった。」
「泣いている方もいましたね・・・それほど、喜ばしいことだったのでしょうか。」
妹も、民衆の熱狂にはついていけなかったようだ。
「おヤ・・・基礎教育が終わってないからですかネ。まあいいでしょウ。そちらについてはおいおいですネ・・・。」
何の話だ・・?
「さテ、時間が惜しイ。次に行きますヨ。後4箇所回らねばなりませン。」
居住区それぞれの日中帯の地域へ、船を数隻ずつまわし、演説を行う。
どうしても昼の側でやらないと、人が集まらないから、丸一日かけたようだ。
「子爵家への挨拶などはよろしいのでしょうか・・・?」
「あなた方が倒れている間ニ、すませましタ。といいますカ、言わずともあちらから来ますヨ。」
同じ領主でも地位が離れていると、そんなものか。
なんとなく、バッタのようにペコペコしている絵が思い浮かぶ。
しかし、結局一日ずっと船の中だったな。
「現地の視察とかはしないんだな。」
「構わないでしょウ?今はトーヤ様があの状態ですしネ。また機会は作るのでその時に行けばよろしイ。」
確かに、今俺たちだけで見て回ってもな。
「あなた方ハ、そうですネ。私は少し執務をこなしますのデ、今日はこのまま休みなさイ。教育の続きハ、明日からにしましょウ。」
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旅路の間に、少しずつ俺達双子は戦い方を学んで行った。
学んでいった結果、後悔に苛まれる。
あの時・・・正面切って戦えなかったとしても、自分たちの出来ることを判断し、援護にまわるべきだったんだ。
自分達では戦力になれないと思いこんでいたが、それは誤りだったと今では思う。
領主魔法の使用は少しタメがあった。俺達で適宜妨害に回って、トーヤが近接して戦えれば機会はあったはずだ。
・・・トーヤが目覚めたら、まずは謝りたいな。
その後に立ち寄った領地での反応は、どこも変わらない。
軍人が、トーヤの功績を大げさに伝え、民衆を扇動し、後日映像として提供する事を公表する。
知らなかったが、領主の戦いの動画というのは人気があるようだ。その話を公表した際の反響が一番大きく見える。
仕える相手が強大であることで、安心感を得られるというのは理解できるが、実際に映像として見る事にそれほど意義があるのだろうか。
それにしても、こうやってこつこつ煽動しているからこそ、領主の持つ求心力が高まるのかもしれない。
コームの言っていた、将来への投資とはこういうことなのだろうか。
正直な所、少し盛り上がりが不自然だった気がするが。
だが、そもそも自然な盛り上がりとはなんだと考えると、特に答えが出ない。
俺が見慣れない光景だからそう感じてしまうだけで、こんなものなのだろうな。
その後の首都星系への道中、艦隊で行動しているからだろうか、コームの言っていたとおり宙賊などの襲撃は一切なく、平和な道のりだった。
いや、俺達はしごかれ続けて、平和さを感じる暇はなかったが。艦隊としては平和だっただろう。
そんなしごきも、首都星系を前に終わりとなる。
「二人共よくついてきましタ。これで最低限は戦えるようにはなったでしょウ。」
「「有難うございました!」」
お、終わった。二人とも足の力が抜け、座り込む。
この数日で、一生分死んだな。
いや、死んだらそこで一生は終わるんだが、他にどう表現していいかがわからない。
とにかくミスすると殺された。油断すると殺された。判断を誤ると殺された。
妖精たちは口封じされていたのだろうが、毎回仮想現実に移行したかわからないまま訓練を受け、幾度となく死んだ。
結果を見れば死んでいないので、仮想現実に移行してはいたのだが、訓練の度に毎回死の恐怖と隣合わせになる。
恐怖感がやわらげられていなければ、発狂していたかもしれない。
「後はトーヤ様が目覚めてからですネ。・・・連携も仕込まねバ。」
・・・終わってなかった。いや、だが連携は必要だな。仕方がないか。
「安心なさイ。私も暇では無い身ですかラ。数日は休みをあげましょウ。」
疲労しているのは目に見えて明らかだったのだろう。
悪魔から優しげな言葉が発される。
いや、この悪魔の事だ、何か企みや狙いが有るはずだ。鵜呑みにはしないほうがいいだろう。
「何にせヨ、トーヤ様の治療を進めねバ。あなた方の居住空間も用意せねばなりませんネ。・・・どうセ、ハーキル様は仕事を溜め込んでいるでしょうねエ。」
遠くを見る目だ。何かを諦めている目だ。・・・こんな悲しげな表情もできたんだな。
コイツの事だから、領主に対しても上から目線で執務させるんじゃないかと思っていたが、流石にそこまではしないのかもしれない。
そうこう考えているうちに、目的地へ到着した。
「さテ、トーヤ様に治療を施さねバ。」
ようやく帰ってきました。これでチルちゃんが書ける・・・
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仕事の日はなかなか時間が取れませんが、ちょっとずつ書いて出来るだけ定期的に更新続けます。
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