表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/175

冗談じゃないわよ!!

「女性問題ですか……」

「かなりお盛んだったようですからねぇ」

「何か、それらしい場面をご覧になりましたか?」


 すると川端は少し辺りを見回し、顔をそっとこちらに近付けてきた。


「それがもう、一度大変なことがあったんですよ……」


 和泉も身を乗り出す。

 近距離で男同士が見つめ合う、微妙な画が出来あがった。


「うちの事務員で、芳香よしかちゃんっていうのがいたんですよ。この子がまた、可愛い子でねぇ……胸も大きいし」


 胸の大きさはこの際どうでもいい。


 結衣が苛立って次の言葉を待っていると、


「腰の辺りなんてきゅっ、と締まってて、おし……」

「彼女のスタイルはこの際、置いておいてください。それで?」

 にっこり笑って和泉が先を促す。


 挿絵(By みてみん)


「若尾さん、一目で彼女のこと気に入っちゃってね。彼女の方も悪い気はしなかったみたいで、朝、一緒に出勤してきたりしたこともあったんですよ。ウチみたいな小さな会社だと、社内の人間関係なんて筒抜けじゃないですか。これは近々、おめでたい話が出るのかな、なんて思ってたら……とんでもない。彼、他に同棲してる彼女がいるそうじゃないですか」

 チョコレートパフェとパンケーキと、コーヒーが運ばれてきた。


「……ある日、その同棲相手の彼女がですよ?」

 パンケーキ用のナイフを持ち上げて、川端は声を潜めた。


「私の彼を寝盗った泥棒猫はどいつだ?! って、会社に怒鳴りこみにきたんです」


「……」


「そりゃもう、あの時は大騒ぎでしたよ。警察の人は来るわ、マスコミ関係者はやってくるわ。まったく……」


「その女性とは、もしかしてこの人ではありませんか?」

 和泉はいつの間に撮影したのか、先ほど会って話を聞いた亜美の顔写真を見せた。


「そう、この人です!! いやぁ~……あれはほんとに、すごかった。ヤクザかと思いましたもんね」

 結衣と和泉は顔を見合わせた。


「その時は、結局どうなりましたか?」


「若尾さんが土下座して、平謝りして、どうにか収拾がつきました。だから、どうせ新聞社を追われた理由も、そんなようなことなんじゃないですか?」


 それからいくらか当たり障りのない質問と、アリバイを訊ねて終わった。


 礼を言って店を出る。



 結衣にはいろいろと思うことがあった。

 前回の事件の被害者といい、今回のといい、どうしようもなく女癖が悪いという点で一致している。


「……うさこちゃん、なんでそんな顔してるの?」

「ものすごく呆れてるんです」


「ガイシャに?」


 被害者にもだけど、その彼女にもだ。


「なんで男の人って、こう……」

「その言い方には語弊があるなぁ。男が皆、揃って浮気する生き物みたいじゃない」


 思わず結衣は和泉の横顔を見た。


「かくいう和泉さんだって、相当女性にモテるでしょう?」


 すると彼は肩を竦めた。

「……興味ない人達に好かれてもね」


 はい? 今、なんて言いました?!


「だいたい、僕は一途な男なんだよ。一度好きになった相手には、添い遂げるまでも、その後もどこまでもつきまとうからね」


「それって、ストーカー……」


 とにかくさ、と和泉は携帯電話を取り出した。

 聡さんに連絡しておくね、と彼は結衣に背を向けた。


 それからしばらくして。


「……なんかあったのかな」ぽつり、と和泉が言う。「なんだか、聡さんの様子がおかしいんだよね」


「えっ?!」


 班長の様子がおかしい?

 結衣の中で焦りの気持ちが生まれた。


「和泉さん、今すぐ広島に帰りましょう!!」


「うん。それはいいんだけど……ここから東京駅って、どうやって行けばいいのかな」

 和泉はスマートフォンを操作している。が、

「飛行機で帰りましょう! その方が断然早いですから!!」


 結衣は彼の腕をとって引っ張った。


「やだ、飛行機はやだ!! 新幹線で帰ろうよ!!」

「何言ってるんですか、ここは成田ですよ?! 成田っていえば空港ですよ!!」

「いやだぁあああ~~~!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ