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王の住まう城の地下。
一刀両断主義の鏡が訴えます。
「恩返しをしたいのなら、織った布を持ってくればいいじゃないですか」
「お話の根底を覆さないでちょうだい」
「ご主人様、考えてもみてください。ある日ご主人様が道を歩いていると……」
「歩いていると?」
「一人のパティシエが罠にかかっていました」
「パティシエに優しくない世界」
「心優しいご主人様はパティシエを助けてあげます。それから数日後、一人の男がご主人様の元を訪れます。そして男が言いました」
『美味しいケーキを焼くので台所を貸してください。ただしけして台所を覗かないでください。あと小麦粉買ってきてください』
「……ちょっとイラっとしたわ」
「美味しいケーキは高値で売れます。そんなある日、ご主人様は台所を覗いてしまいます。そこに居たのは、あの日罠から助けたパティシエ!」
「まぁ、あなただったのね!」
「正体を知られたパティシエは、『覗かないでと言ったのに』と残して山に帰っていきました……」
「どうでしょう?」
「ケーキ焼いてから持って来い」




