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王の住まう城の地下。
魔女が一冊の絵本を手にしています。
「鏡よ鏡、『鶴の恩返し』ってお話を知ってる?」
「聞いたことがあるような無いような。教えてください」
「良いわ、よく聞きなさい。昔々あるところに……」
『昔々あるところに、善良だが貧しいおじいさんが居ました。
ある日おじいさんは町へ行った帰り道、罠にかかった一羽の鶴を助けます。
それから数日後の雪が降る日、夫婦のもとへ雪で道に迷った一人の娘が訪れました。
夫婦は娘を泊めてやります。とても優しい娘を夫婦は実の子のように可愛がり、彼女からの願いもあって養女にすることにしました。
そんなある日、娘が布を織るから糸を買ってくれと言い出しました。
そうして糸を手に、娘はけして覗かないでくれと告げて一室にこもります。
出てきた娘の手には、それはそれは綺麗な布が。町へ売りに行けば、たいそうな値段で売れました。
おじいさんが糸を買って帰ればまたも娘は布を織り、そして織った布は高値で売れます。
ある日おじいさんは娘がどうやって布を織っているのか気になり、そっと部屋を覗いてしまいます。
そこに居たのは、あの日助けた鶴。娘の正体は鶴だったのです。
正体を知られた鶴はおじいさんに別れを告げ、山へと帰っていきました……』
「というお話よ」
「なるほど、とても面白い話ですね。ただ一つ言わせていただくなら……」
「なにかしら」
「布織ってから来い」
「一刀両断主義」




