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王の住まう城の地下……ではなく、どこかにある集まってしまう島。
生態系を積極的に壊しつつ、魔女が島を開発していきます。
「ごらんなさい、鏡。この立派な島を」
「おぉ、なんと素晴らしい。整備は行き届き、道には外灯や自販機が設置され、お洒落なカフェや雰囲気漂うバーまで。景観も整えられて完璧な島ですね!」
「えぇ、これほど住みやすい島は他にはないはずよ。……だけど」
「だけど?」
「これほどまでに人の手が入った島での暮らしは、本当に私達が望んでいたものなのかしら」
「ご主人様……」
「私達はスローライフを求めてこの無人島に来たはずよ。それなのに川の形を変え、崖を崩し、地面を補整する。そこに私達が求めていたものはあるのかしら」
「求めていたもの……」
「今になって思うの。この島に来た時の、何もなく雑草と草木が生い茂ったあの光景こそ、私達が理想としていたものなのよ……。理想は最初から目の前に広がっていたの」
「なんて悲しい話でしょう。我々は理想を追いかていたつもりが、手にしていたはずの理想を削り形を変えてしまっていたのですね……」
「帰りましょう、鏡。ここは私達がいて良い場所ではないわ」
「ご主人様、なんて悲しい背中なのでしょう……」
「景観と利便性を求めてしまった時点で、人間はもう集まる資格を持つ動物ではないのよ……」




