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王の住まう城の地下。
盗聴器の前で発泡スチロールをこすり合わせながら、魔女が魔法の鏡に問いかけます。
「鏡よ鏡、答えておくれ。世界で一番美しいのは誰?」
「それは誠実さを含めてでしょうか」
「どういうこと?」
「エイプリルフールのような好ましい嘘もありますが、通常、嘘は好まれるものではありません。いかに見た目が良くとも平気で嘘をつき他者を騙す人を『美しい』と評して良いのでしょうか」
「なるほど、確かに嘘はいけないわね」
「えぇ、嘘は許されません。けっして、断じて、許されません」
「ぐいぐい来る……。それなら鏡、答えておくれ。嘘をつかない誠実さを持ち合わせた世界で一番美しいのは誰?」
「俺です!!」
「はいはい。それで、どうせ二番手は大広間の鏡でしょ」
「あいつは圏外です!」
「大広間の鏡は嘘を吐くの?」
「嘘は! 絶対に! 許されません!!」
「あんたが騙されたの?」




