145
王の住まう城の地下。
ワイプでこちらに近付いていた例の人が、なにやらズルズルと引き返していきます。
「あら、帰ってしまうわ。どうしたのかしら?」
「どうやら忘れ物があったらしく、日を改めるそうです」
「そうなのね。次は時間に余裕を持ってお迎えしましょう。でもせっかく季節のお茶菓子を用意したんだから、手土産に持って帰ってほしいわね」
「どうしますか、呼び戻します?」
「いえ、私が井戸に行くわ」
「まさかの追いかけるスタイル」
「魔法のテレビデオ、呪いのビデオはそのまま再生しておいていて、『真夏のワンニャンルンバ大行進スペシャル』は録画しておいてね」
「かしこまりました。ではいってらっしゃいませ」
ズル……ズル……ズルズルズル
「匍匐前進って意外にきついのね。でも井戸に着いたわ。中に入って追いかけましょう。ねぇ、お待ちになって、手土産を持って行ってくださいな」
ズルズル……
「あら、井戸の底に何か書いてあるわ……」
●REC
「さては魔法のテレビデオがダビングしてるわね!」




