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王の住まう城の地下。
魔女がクシュンとくしゃみをしました。
「ご主人様、花粉症ですか?」
「いいえ違うわ、ちょっとシャンティの毛が舞っていて鼻を擽ったの。換毛期だものね」
「あの毛散らかしキャットめ……。しかし花粉症の人間は大変そうですね」
「そうね、杉の木は効率的に花粉を撒いてほしいわ」
「杉の木も受粉させようと必死なんですよ。……おや、誰か来ましたね」
「お迎えしましょう」
「……オトウサン……オカアサン……」
「まぁ、貴方は」
「ご主人様、この木と人間を混ぜ合わせた化け物みたいなのは何ですか? 育ちすぎたマンドラゴラですか?」
「この子は、杉花粉を受粉してしまった女性が生んだ子よ」
「杉花粉を受粉してしまった女性が生んだ子……」
「杉の木にもなれず人にもなれず、彷徨う内にここに辿り着いたのね」
「……オカアサン……オカアサン……」
「貴方のお母さんは貴方を生んでどこかに姿を消してしまったのよ」
「……オトウサン……オトウサン……」
「貴方のお父さんは伐採されて2Bの鉛筆になったのよ」




