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馬車

朝、キャシーを連れて冒険者ギルドに出勤。



「では、ヤブキ様。

まずは当ギルド併設のカフェテリアで朝食でも。」



『すまんが、早く仕事に取り掛かりたい。

俺でも請けれそうな仕事を教えてくれ。』



「は、はい。

失礼しました。

なるべく、ヤブキ様の特技や好みにあった案件を確保致します!

ご要望がありましたら気兼ねなくお申し付け下さい。」



『…条件にもよるが俺は一対一の戦闘なら敵を確殺出来る。』



「は、はい。

それはもう。」



『無論、これは俺が優れている訳でもなんでもなく武器の性能のおかげだとは説明したな?』



「は、はい。

【ピストル】なる最強スキルですね。」



『一定の距離さえあれば、一方的に殺せる。

多分、この世界で最も攻撃射程が長いのは俺なんじゃないかな?』



「ゴクリ。」



『それを踏まえた上でだ。

俺と相性の良い依頼を探しておいてくれ。』



キャシーは手元の資料を手早く流し読む。



「…盗賊団退治だと思います。」



『盗賊団?

いや、俺は一対多の戦闘を勝ち抜ける程の才覚がないのだが。』



「高速馬車を乗り回している弓兵盗賊団が、この王都の郊外で幅を利かせているんです。」



『ふむ、続けてくれ。』



「商人の馬車を見掛けると、遠方から急速接近しながら射かけて来ます。

弓兵崩れの一団なのか、距離をとっての撃ち合いを徹底しているようです。

荷物と馬を奪う事を目的にしており、犯罪を重ねるごとに良馬を充実させてスピードアップを図ってます。

なので、こちらが近接戦闘を挑もうとすると、素早く離脱されてしまうとのことです。」



…弓か。

俺が射撃特化である以上、どのみち遠距離戦は避けられんだろうが。



『かなりリスキーな依頼だと思うが、これを推薦する根拠は?』



「はい。

まずこの依頼の報酬が破格に高いことです。

各種の目撃記録からこの盗賊団は総勢8名前後と推察されるのですが、1名につき金貨10枚の懸賞金が支払われます。」



『…続けてくれ。』



「敵の馬車を走行不能にして、敵全体を沈黙させた場合200枚の金貨が支給されます。

更に、個々に賞金が懸かっていた場合、当然その賞金も別途支払ます。」



聞けば単身者なら金貨300枚あれば一年暮らせるらしい。

金貨500枚もあれば夫婦が一年暮らせる。



『なるほど、危険だが期待値が高いと。』



「ええ、結局どんな依頼であれ危険は伴います。

金貨10枚が天井の依頼を20件請けるよりも、200枚以上が期待できる依頼をこなした方がリスクは低いかと。」



『弓の射程について教えてくれ。』



「一般的には25メートルが有効射程距離とされています。」



…25メートルプールの端から端まで当てれるのか。

結構、凄いな。



「ただ、彼らは名手揃いなので30メートルから40メートルの射程距離を想定するべきかと。

現に、射ち合いで射程外から一方的に射たれて全滅したパーティーもありますので。」



少年時代にやっていた野球を思い出す。

仮に40メートルならセカンドからホームまでの距離だ。

それだけ離れて殺せるなら、かなり腕前と認めざるを得ない。

少なくとも小学生の頃の俺はノーバウンドでホームに返球出来なかった。



「どうしましょう。

このような背景がある為、護衛依頼なら簡単に請けれますが…

あ、補足しますと。

馬車の護衛依頼は基本が往復で銀貨3枚の報酬。

加えて敵の撃退に対して歩合ボーナスが発生します。

例えばウルフを撃退すれば銀貨2枚、ゴブリンを撃退すれば7枚というのが相場ですね。」



聞けば、銀貨1枚あれば定食屋で食事を出来るらしいので、銀貨3枚というのは3食の食事代に相当する。

銀貨10枚が金貨1枚の価値。

金貨1枚あれば小奇麗な宿に泊まれる。

俺が泊まっているホテルは一等地にあるので金貨2枚するらしい。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



冒険者ギルドの弓術練習場を貸し切って射撃練習。

色々と位置を変えて実験してみるが俺のピストルの有効射程距離は50メートル強だった。

しかも揺れる馬車の上からの射撃しなければならない。

つまり弓兵盗賊団に対して不利である。



「請けるのでしたら、護衛を!

イライザを呼んできます!」



『いや、背中から斬られるのは怖い。

引き続き監視を継続してくれ。』



「え!?

お1人で請けられるのですか!?」



『ああ、1人でやらせてくれ。

護衛を請けるにあたって1つ条件がある。

良馬に曳かせている馬車に乗りたい。』



「遭遇率を上げたいと?」



『いや、馬が目当ての盗賊団なら良馬は射たないとの計算だ。

後、馬車のスピードがある方が撃ち合いで優位を取り易い。』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて、一時間後。

街道を疾走する馬車に俺は乗っていた。

中古工具を運搬する馬車で、御者は1人。

目的は王都の南にある漁港街。

何も無ければ3時間で往復可能なのだそうだが、今週に入ってから弓兵盗賊団による被害が激増しているとのこと。



「旦那。

護衛って言うならせめて弓を持って来てくれよ!

話が違うぜ。」



俺が丸腰に見えたのだろう。

御者が呆れた様にぼやく。



『御者さん。

実は私は魔法使いなんだ。

攻撃魔法が使える。』



「じゃあせめて杖を持って来てくれよぉ。」



『私はこのピストルという杖を使う。』



「ええ!?

勘弁してくれよぉ。

こんな短い魔法杖なんて初めて見たぜ?

魔術師が持ってる杖って、もっとバカでかくて宝石とかルーンでチューンしてるもんだろ。」



御者の不安も理解出来る。

もう何人も同業者が殺されているのだ。

頼りない護衛など視界に入れたくもないのだろう。

御者は達観した様に天を仰ぎながら馬車を進めた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




それが弓兵盗賊団である事はすぐに理解出来た。

ニヤニヤしていることが遠目に確認出来たからだ。



バキューン!!



推定70メートルはあったが背後に彼らが見えた瞬間に撃った。

俺は射撃の名人でも何でもないが、一直線に向かって来る馬車の馬を撃つのは簡単だった。



「おい旦那!?」



『敵の馬を潰した!

徐行に切り替えてくれ!!』



「え?

徐行?

無理だよ、スピード落としたら殺される!」



『いや、後ろを見てみろ。

転倒した馬車から放り出されて、何人かもがいている。』



「た、確かに。

アンタがやったのか?」



『停車してくれ。』



「え?」



バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!



残弾を全部発射する。

ここからではよく見えないが、彼らの慌てぶりから1人が絶命したと推測する。

敵の総員を8名と仮定して残り7名。



「うおっ!

額から血を出してやがる!」



『御者さん、この距離で見えるのか?

私はあんなに遠くは見えないが。』



「いや、そりゃあ。

目が悪い奴に御者なんて務まらねえよ。」



真顔で言い返してくるのだから、そういうことなのだろう。

まあ日本でも免許取る時は視力検査が必要だしな。



「ああ、2人は確実に死んでるな。

街道に放り出された奴、アレは首の骨が折れてる。」



『よく見えるな!』



【reload】



再度感心しているうちに装填が完了する。

8人組という情報が事実であれば、2人死亡・1人重傷で残り5人の計算となる。

こちらの残弾は5発。

油断は出来ない。



バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!



「凄いよ旦那!!

2人も殺した!!!」



『いや、失敗だ。

3人も仕留め損なった。』



「じゃあ、後3発撃って!!

あ! 敵が空馬に乗った!!」



『次に魔法を撃つまで1分掛かるんだ。

馬車を再始動させてくれ。』



「えーーー!!!

そういう大事な事は先に言えよー!!」



『スマンスマン。

ここまで御者さんが協力的だとは思わなかったから。』



存外、腕の良い御者だったのかも知れない。

手早く鞭を入れて馬車を再始動させる。

ただ、騎馬で突っ込んで来る3騎はかなりのスピードなのですぐに射程内に捕捉されてしまう。

こちらを警戒しているのか、三方向に散開して踏み込んでこない。

左側の一騎が慎重に射かけて来る。

矢は幌に当たっただけなので、警告のつもりなのだろう。



「どうせ停まったら殺されるんだろ!」



御者が叫びながらスピードを上げるのを見て3騎が弓を鞍に置き、追走モードに入った。

それと前後して!!



【reload】



バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!



「え!?

旦那凄くない!?

一瞬で皆殺しだよ!!」



『いや、瞬時に死亡確認出来る貴方の眼力に驚いている。

例えば、左側の敵。

どこに命中したのかわからない。』



「え?

普通に右目を撃ってたじゃない?」



馬車を反転させ、死体を確認してみると本当に右目を中心に顔面が破損した死体があった。

他の死体も御者の死角で殺した者以外は全て命中部位を正確に把握していたので、いよいよ尊敬の念を抱く。



『御者さん!

貴方凄いです!

素晴らしい観察力と胆力だ!

あの、私は矢吹弾と申します。』



「お、おう。

ありがと、普段仕事で褒められる事がないから嬉しいよ。

ウーゴ・サンチェスだ、よろしく。」



『ウーゴさん。

さっきの馬車を鹵獲すれば賞金が貰える。

可能なら戻って頂けないか?』



「え?

戻るの?」



『弓兵盗賊団は8名で行動する事が多いと聞いている。

数名の増援はあるかも知れないけど。

戦力の大半は殺せたはずだ。』



「うーーーむ。

首の折れた奴以外は全員死んでたからな。

わかった戻ろう!

但し戦闘は任せるぞ!」



『了解!!』



バキューン!!

バキューン!!



戻る前に弾倉を空にしてリロードを待つ。

御者と2人で周囲を警戒しながら道を戻る。



【reload】



道中リロードにも成功し、フル弾倉に。



俺達が弓兵盗賊団の馬車に辿り着くと、さっきと同じ位置に死体があり、首の折れた男がウンウンと唸っている。

どう見ても痛そうだ。



『えっと、殺していい?』



「え?

賞金首なら生け捕りの方が儲かるって聞いたよ?」



『あ、そうなんだ。

でも、生け捕りとかどうするんだろう?』



「あ、いや普通に縄で縛ればいいだけじゃない?

俺が縛ろうか?」



そんな遣り取りがあって、首の折れた男を縛ってるとパトロール中の騎士が通りかかったので状況を報告。

漁港や王都から大勢の騎士がやって来て簡単な事情徴収を受けた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いやいや!!

金貨140枚なんて大金!!

受け取れる訳がないだろ!!」



『しかし、賞金が金貨280枚だった。』



「だから、敵を全部殺したのはヤブキじゃねーか。

俺は1人も殺してないし、受け取る権利が無い。」



『?

そうかな?

馬車を運転してくれたのはウーゴだし。

最後に首の折れた人を縛ってくれただろう?』



「いやいや、首の曲がった奴なんて子供でも縛れるだろう。」



『実は私はロープを触ったことが無い。

縛り方もわからない。』



「またまたーwww

ロープを触らずにどうやって社会生活を送って来たんだよーーwww

ヤブキは冗談が上手いなあww」



結局、押し問答でウーゴに金貨を押し付け。

キャシーに仲介費を支払った。



「待って下さいヤブキ様!!」



『?』



「専属仲介費は5%です!

今回のケースだと金貨14枚!

この時点で凄い大金ですよ!

それを40枚も頂くなんて、私が貰い過ぎです!」



『…君が練習とかさせてくれたから戦えた訳だしな。』



「練習場の使用補助は受付嬢としての業務の一環です。

大体、金貨40枚の根拠がわかりません!」



そうは言われてもな。

オマエに40枚やると丁度残りが金貨100枚になるんだよ。

区切りの良い数字が好きでね。

100って最高だと思わないか?


金貨が100枚。

人間を撃ち殺せば経験値100ポイント。

計算が楽で助かる。

今回の殺害人数  7名

総殺害数     20名



【ステータス】



「名前」


矢吹弾



「能力名」


ピストル



「能力」


詳細不明

リボルバー式の銃がホルスターごと腰に固定される。

弾倉数5。

1発射撃するごとにMPを1消費する。

撃ち尽くすと約60秒後にリロードされる。

有効射程距離50メートル

最大射程距離80メートル



「パラメーター」


《LV》 5→6

《HP》 21/21→24/24

《MP》 04/19→23/23 

《力》  8→9

《速度》 13→14

《器用》 21→24

《魔力》 10→10

《知性》 13→14

《精神》 20→22

《幸運》 31→32


《経験》 1600→2300


本日取得経験値  700

次のレベルまでの経験値1400




☆レベルアップルール


召喚者の初期レベルは1。

レベルアップに応じて必要経験値が100ずつ増加する。


1→2  100

2→3  200

3→4  400

4→5  700

5→6  1100

6→7  1600

7→8  2200

8→9  2900

9→10  3700

10→11 4600



「経験値表」


人間 100ポイント

狼系  50ポイント



【筆者から】


貴重なお時間を割いて頂けた事に感謝しております。

面白いと思ったら☆5とブックマークを付けて貰えると励みになります!


撃って欲しい相手がいたらコメント欄に書いて下さい。

主人公が撃ちに行きます!!



拙作異世界複利が2025年06月25日にMFブックス様から刊行されます。

そちらも宜しくお願い致します。

https://book1.adouzi.eu.org/n3757ih/

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