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理系女子の恋~大学生編~  作者: 流音
act2:報われない恋<貴音、新>
9/40

1、一途過ぎる気持ち

八牧貴音視点です。




「わ!!井坂君、お盆には実家に帰るって!その足でこっちにも来たいって!!どうしよう!」


そうテンション高くケータイを握りしめて騒いでいるのは、私の高校時代からの親友―――しおりんこと谷地詩織。

井坂君というのはしおりんの彼氏だ。

今は東京にいて遠距離恋愛真っ最中なのだけど…

ついこの間、遠距離に我慢できなくなったしおりんは井坂君に会いに行ってきたばかりで、まだこっちに帰ってきてから一週間ぐらいしか経っていない。


それなのにまた会えるってだけでこの喜びよう…

これは井坂君依存症なのでは…?と親友としては心配になりながら、とりあえず「良かったね。」と返すと、しおりんは輝くような満面の笑顔で頷く。


この顔、井坂君にも見せてあげたいもんだなぁ…


私がそう微笑ましくしおりんを見守っていたら、同じようにしおりんを見つめる視線に気づいた。

私以上に熱を持つ瞳でしおりんを見ていたのは、私と同じく高校からの同級生の島田新君で、少し離れた場所から嬉しそうに笑みを浮かべている。


私は島田君のしおりんに寄せる気持ちを知っていたので、少し切なくなりながら彼を同情の目で見てしまう。


島田君も変わんないなぁ…


いっつもしおりんを少し離れたところから優しく見守ってて、健気すぎる姿に応援したくなってしまう…

まぁ、応援したところで無理なのは目に見えてるのでしないけど…


私は高校の頃から変わらない関係に、昔と同じように傍観するだけに留めていると、いつも冷静で落ち着きはらってる私の心臓に大きな衝撃を与える人物が現れた。


「あ、谷地さん、八牧さん!!見つけた!!」


!!!!!!


私たちがまったりと休憩していた食堂へやってきたのは、しおりんの幼馴染であり私の高校からの友人でもある瀬川歩君だ。

私たちと同じ大学のスポーツ学科に在籍している。


そして、私の気持ちを大きく揺さぶる唯一の人で…

―――――――私が一番に応援したい人。


私は顔が熱くなりそうなのを必死に堪えながら、平常心を保つよう心掛けて笑みを向ける。


「瀬川君。何か用?」


しおりんがさっきまでのテンションが嘘のように普通に声をかけると、瀬川君は高校時代から変わらない爽やかな笑顔を見せた。


「光汰からお盆に地元帰ってくるかって聞かれたんだけど、二人は帰る?」

「うん。帰るよ。お母さんから帰ってきてほしいって言われてるから。」


しおりんがサラッとさっきとは違うことを口にしていて、私はからかい半分に口を挟んだ。


「さっきは井坂君が地元帰るってはしゃいでたのに、変に理由作ってる。」

「え!?そっ、それはそれだよ!!お母さんに言われてるのも本当だから!!」

「どうだか。井坂君に会いに行ってバイト代とんだって言ってたのに、地元帰る資金あるんだ~?」

「あっ、あるよ!!ちゃんと残してあるから!」


しおりんは焦りながら言い訳していたけど、図星つかれたような顔を一瞬見せたので、資金はなさそうだと察した。


きっと両親に資金をねだるんだろう…

ま、もらえるかどうかは知らないけど。


私はこれ以上いじるのも可哀想なので「そうなんだ。」と納得するフリをすると、瀬川君の目が私に向いていてドキッとした。

だけどそれも一瞬で、瀬川君の目はしおりんに向き、私はほっとしながらも少し残念な気持ちになる。


「谷地さん、井坂君に会いに行ってたんだ。井坂君、元気だった?」

「あ、うん。元気すぎるぐらい元気だったよ。お盆には地元帰るって言ってたから、瀬川君も帰るなら会えるよ?」

「そっか、楽しみにしとこ。東京の話も聞いてみたいし。」


瀬川君はしおりんと軽く話すと、今度は私に目を戻してきて、私の心臓は再度忙しなく鼓動を鳴らす。


「八牧さんは?地元帰る?」

「え、あ―――、うん。一応、一週間ぐらいは帰るつもりだけど…。」


私がなんとか噛まないように答えると、瀬川君は満足そうに笑いながら言った。


「そっか。じゃあ、みんなで一日くらい集まれそうだな。光汰に言っておくよ。」


瀬川君はそれだけ言い残すと「また連絡する!」と手を振って食堂を出ていってしまい、私は手を振り返しながら高鳴っていた心臓が落ち着くのを聞いていた。


用件だけで行っちゃった…


もう少し話していたかったという気持ちを隠しながら、しおりんに目を戻すと、しおりんがどこか嬉しそうな顔で私を見ていて驚いた。


「なに?」

「ううん。なんでもない。それよりさ、井坂君に会いに東京に行って思ったんだけど。」

「ん??」


しおりんはどこか含みある表情で話しを変えてきて、私は何を考えてるのかよく分からないまま返事をする。


「やっぱりこっちよりもオシャレで素敵な人多くって。こっち来た時も地元と違って驚いたんだけど、もっと上がいるな~ってビックリしたの!!」

「へぇ~、まぁ仮にも都心だからね。そういうことに敏感な人が多いんじゃない?」

「そう!!だから、私ちょっとだけなんだけど、恥ずかしくって…。」

「恥ずかしい??」


しおりんは頷くとケータイを握りしめながら、何だか真剣に訴えてくる。


「井坂君…、あの容姿だから、そういうオシャレな人たちの中にいてもひけを取らないでしょ?私、こんなだから…、もっと頑張らなきゃなと思って…。」

「へぇ~…、オシャレに目覚めたわけだ?」

「目覚めたっていうか…、気合が入った感じかな。」


しおりんは自分で言いながら納得しているようで、私はこういう話を高校のときにもしたことを思い出して、なんだか懐かしかった。


『どうしたら、可愛くなれると思う…?』


あのときもしおりんは井坂君を想って、すごく真剣だった。

あのときから変わらない井坂君にまっすぐなしおりんを見ていられることが、素直に嬉しくてつい応援したくなってしまう。


私からしたら、もう十分可愛いと思うんだけどなぁ…


私は何にでもまっすぐなしおりんがすごく可愛く見えていたので、特に必要ないんじゃと思ったけど、しおりんは何かを心に決めたように頷くと私の手を握ってきた。


「タカさん!!一緒に女磨きしよ!地元に帰るまでに!!ね!!」

「えぇっ!?私も!?」


私はまさか自分まで巻き込まれるとは思わなくて大きく目を見開いていたら、しおりんが顔を近づけながら力強く頷いた。


「うん!!タカさんだって、大学生になったんだから少しはオシャレに興味あるでしょ?」

「そ、それは――――」


私はふと瀬川君の顔を思い出して、それと一緒に美人な幼馴染の木崎那々子さんの姿が脳裏を過った。


木崎さんは大人びた雰囲気をもったクール系美人で、

瀬川君の昔からの好きな人――――


今はここからそんなに離れていない大学に行ってるらしいけど…

瀬川君と木崎さんに接点がないわけではない


そういう状況なだけに、瀬川君に少しでも自分を見てもらおうと思うと、しおりんの言うように女磨きするのも悪くはない…


ちょっとはしおりんを見習って頑張ってみようかな…


私は自分らしくないとは思ったけど、瀬川君の顔を思い浮かべて覚悟を決めた。

期待に満ちた目を向けてくるしおりんに「いいよ。」と返事をすると、私たちは大学のあと早速駅前まで出かける事になったのだった。









八牧貴音と島田新視点でお話を進めていきます。

二人の報われない片思いがどうなるのか見守っていただければと思います。

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