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理系女子の恋~大学生編~  作者: 流音
act4:変化<貴音、新>
33/40

6、長期戦のこれから

島田視点です。





俺は八牧さんとの仲を時間をかけて詰めていくことに決めてから、精神的にだいぶ楽になっていた。

変に意識して今までの距離間がおかしくなるのが一番嫌だったので、仲の良い友達として普通にクリスマスや年末年始のイベントを一緒に過ごして満足感でいっぱいだった。


八牧さんが俺に気がないからこそ一緒に過ごしてくれたのだと思うけど…

そこは追々少しずつ意識してもらえるよう攻めることにする。


その『攻め方』というのが彼女いない歴=年齢の俺には未だに分からなくて、帰省してきた彼女持ちの親友たちにそれとなく聞いてみることにした。


「なぁ、お前らが恋愛で頑張った事って何?」


「あん?急にどうしたよ?」


定番化しつつある赤井の実家の自室で集まっていた北野が、お菓子を片手に俺に目を向ける。

同じようにお菓子に手を伸ばしていた井坂、赤井の視線も俺に集まる。


「いや、俺もちゃんと恋愛したいなって思ってるんだけどさ。その、好きな人ができたときにどう頑張ればいいのかと思ってさ。」

「え、谷地さんのことはもう諦められたわけ?」


北野が驚いたのか俺の方へ身を寄せてきて、俺は諦めたというのが正しいのか分からなかったけど頷く。


「まぁ…、谷地さんずっと見てても井坂のだしな。」

「へぇ!ちゃんと前に進めて良かったじゃん!ちょっと心配してたから良かったよ!」


北野は俺の気持ちの変化を喜んでくれているようで、拳でグリグリと小突いてくる。

その横で井坂が微妙に口の端を持ち上げたのが見えて、違う意味で安心してる井坂に若干腹が立つ。


「せっかくの大学生活、彼女なしのままじゃ寂しいだろ?だから今後のためにアドバイスが欲しくてさ。お前らみんな彼女持ちなわけだし。」

「まぁ…、そう言われればそうだけど。俺、特になにも頑張らずにマイと付き合えてるからアドバイスできることねぇんだけど。」

「前に同じ。俺も小波からだったから何も頑張ってねぇ。」


北野が申し訳なさそうに言ったのに続き、赤井が手を挙げてだるそうに答える。

その様子に話に興味がないのが見てとれて、親身になってくれることもないのかと赤井をじとっと睨んだ。

すると俺の視線に気づいたのか赤井はベッドの壁にもたれていた背を起こし、井坂に目を向けて話をふった。


「一番アドバイスできんのは井坂だろ。谷地さんと距離詰めるのすげー頑張ってたよな?」


聞かれた井坂は俺たちを順に見ると少し嫌そうに「まぁな。」と口にする。


「どう頑張ったのか島田に教えてやれよ。ネタいっぱいあるだろ?」

「えぇ~…、あの頃のこととか話すの恥ずいんだけど…。ぶっちゃけヤバいぐらいだせーし…。」

「それがいいんだろうが。大体島田の想い人を奪ったんだから、アドバイスぐらいしてやれって!」


奪ったって…


俺は勝算など一ミリもなかったことを思いながらこっちが恥ずかしくなる。

井坂は俺をチラチラ見ながら諦めたように嫌そうに口を開く。


「わーったよ。そんな大したことじゃねぇと思うんだけど……、とりあえず最初は接点増やせばいいんだよ。」

「接点?」

「そう!まずは会って話す、そんで一緒に出かける、相手の視界に入らなきゃ意識なんかしてもらえねーからな。」


「そういえばお前ストーカー並みに谷地さんの周りうろついてたな。」

「ははっ、懐かしー!」


赤井と北野がケラケラ笑いながら茶化してきて井坂が「お前らは黙ってろよ!」と怒る。

俺は井坂からのアドバイスはすでにやってると思い、もう少し先のことを聞くことにした。


「じゃあ一緒にいるのが当たり前の関係になったとして、次は?どうすればもっと意識してもらえるんだ?」

「えー…?一緒にいるならそれなりの空気っていうか…ちょっとぐらい前と違う感じにならねぇかな?」

「それなりの空気?違う感じってどんな?」

「どんなって言われても…、こう目を見つめてたら視線がぶつかって…、今お互いしか見てないから…こう二人だけの空気っていうか――――くっそ!!これすっげー恥ずいんだけど!!!」


井坂が何か妄想でもしたのか真っ赤になって両手で顔を隠してしまう。

二人は井坂の様子を見てニヤついていて、俺はよく分からずに追及する。


「え?二人だけの空気になったらどうすんだよ?そこからどう攻めるんだ?」

「まだ言わすのかよ!!なんだこれ!俺への拷問か!?」


井坂は赤ら顔で手を握りしめながら怒り出して、その井坂の肩を叩きながら「まぁまぁ、島田のためだぞ。」と赤井が面白そうに宥める。

北野は笑いを堪えているのか肩を震わせながらお腹を抱えている。

俺だけは至って真剣だったので「それで!?」と続きを促すと、しぶしぶ井坂が話し始める。


「まぁ…色々あるかもしれねぇけど…簡単なのは手とか握ってみればいいんじゃねぇの?」

「お前っ、谷地さんにそんなことしてたのか!?」


赤井が吹きだすように笑い出して、それにつられたように北野もヒーヒー言いながら笑い転げている。

井坂は赤井を軽くど突くと「うっせぇな!!例え話だっつの!!」と怒鳴る。


なるほどな…距離を詰められたら相手に触れることも大事ってことか…

でもこれってどこまでがOKなんだ?


俺は付き合ってない不安定な関係でのボディタッチはどこまでかと疑問を投げかける。


「それって手は大丈夫だとしてさ、相手に触れるのってどこまでがボーダーラインなんだ?」

「は?ボーダーライン??」


俺の問いに笑い転げていた二人が笑いを収めて俺に目を向ける。


「付き合ってない状況で手を繋ぐのはOKなんだろ?じゃあ他は??」

「キスはダメだろうけどハグまでなら大丈夫なんじゃね?」

「は!?それはダメだろ!!」

「え?ハグはだめ?」

「そんなことしたらもう告ってるのと一緒だろ!」


北野の返答に井坂が反対してきて赤井がう~んと唸っている。


「まぁ、どういう状況かにもよると思うけど。ハグはなしかな~。」

「だろ!!」


赤井が井坂側についたのを見て北野が「マジか~。」と残念そうに顔を歪める。


俺はその様子を見て『ハグはダメ』と心に刻む。


でもここでふと何度か谷地さんを抱きしめたことがあることに気づいて、思わず「あ。」と声を出してしまい皆の注意を集めてしまった。


「おい島田。今の『あ』ってなんだ。なんの『あ』だよ?」


変に鋭い井坂が追及してきて、俺はもう時効かと思いへらっと笑いながら伝える。


「いや、谷地さんを何度かハグしたこと思い出して…。あれ、ダメだったんだな。」

「は!?」


これに井坂が顔を歪めると、赤井から離れて俺の真ん前に詰め寄ってきた。


「おい、それいつの話だ。」

「いつって…お前と谷地さんが距離とってたときだよ。高2の…クリスマス前ぐらい?別れる直前、谷地さんよく泣いてたから慰めるつもりで…つい…。」


井坂は自分に落ち度があった時期なだけに何も言えないのか、口をわなわなと動かしただけで赤井の横に戻ってしまった。

俺はそれにほっとすると、井坂にアドバイスの礼と過去の謝罪をすることにした。


「井坂、恥ずかしいこと聞いて悪かったな。あと昔のことも。参考になったよ。ありがとな。」

「……お前には色々世話かけてるから…いいよ。今回は…だけどな。」


井坂は不満気だったが、ふっと微かに口の端だけ持ち上げる。

俺はそんな井坂に再度「サンキュ。」と礼を口にする。


それを見ていた赤井と北野は面白いネタでも見つけたかのように目を輝かせると、打ち合わせでもしたように井坂を囲んで過去の事を詮索し始めた。


谷地さんを振り向かせた方法に興味があったようで、詰め寄られた井坂が「ぜってー言わねぇ!!」と身を捩って逃げ出そうとしている。

それを赤井が捕まえて「吐け!」とじゃれていて、北野がまた爆笑している。


大学二年ももう終わりなのに全然変わんねぇな…


高校時代の風景と全く変わっていないことに変な安心感があって、三人を見ているのがすごく居心地が良かった。




いつか良い報告ができるといいな




俺はじゃれ合う三人を見つめて、大きく息を吸いこんで自分の未来に夢を馳せたのだった。















ここで一旦区切ります。

次から大学三年の話になります。

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