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理系女子の恋~大学生編~  作者: 流音
act3:障害<詩織、井坂>
26/40

10、ラブモード全開

井坂視点です。念の為R指定です。

お気をつけ下さい。






『気持ちを整理する』という詩織の一言に危機感を感じた俺は、なんとか詩織の気持ちを自分へ引き戻そうと必死だった。


別れるなんてまっぴらごめんだ。


俺は詩織の中を自分のことでいっぱいにしたい一心で詩織を抱いた。

嫌われる結果になったら元も子もないので、詩織の様子に注意しながら俺の存在を刷り込ませる。


俺には詩織だけだ

詩織とじゃなきゃこのさき生きていけない


どうか伝われと念じながら俺は詩織のことを強く抱きしめたのだった。





***






次の日の朝――――


俺は腕が引っ張られている気がしてゆっくり目を開けた。

何度か瞬きして視界をクリアにすると起き上がっている詩織の背中が見えて、俺は反射で腕に力を入れ詩織の身体を自分の方へと引き寄せた。


「わっ!!何?」


詩織は俺の方へ倒れ込んでくると目を大きく瞬きさせて俺を見つめてくる。

俺はそんな詩織の胸元に顔を埋めると抱きしめる力を強める。


「どこ行く気だよ…。放さねぇって言ったろ…。」

「え…、でももう朝だし…。お腹も減ってる――――って!!井坂君っ、くすぐったいっ……!」


俺が詩織の柔らかい肌に指を這わせると詩織が暴れ出して、俺はそんな詩織の口を自分の口で塞いだ。


「…――――っ!!んんっ……!!」


詩織の手が俺の胸を押して引き剥がそうとしているけど、俺は構わず深く口付けると次第に力が弱まってきた。

詩織は眉間に皺を寄せていたけど感じてくれているのを肌で感じ、今度は首筋に顔を埋めた。

そのとき詩織の力の入ってない手で肩を押され、俺はその手を掴んで抑え込む。


「井坂君っ…やめっ!――――…もうっ無理っ…!」


詩織が大きく息を吐き出しながら懇願してきて、俺は一旦手を止めると詩織を見下ろした。

詩織は真っ赤な顔で潤んだ瞳を俺に向けてくる。

それを見て俺の中の悪戯心に火が点く。


「ホントに無理?詩織、俺に触られるの嫌なわけ?」

「……え…?」


詩織は大きく息を吸いながらきょとんとした顔で首を傾げる。


「俺は寂しい思いさせた分、こうしてお返ししてるんだけど…。余計なことだった?」

「え、そういうわけじゃ…。」

「だったらどっち?俺の事、欲しい?いらない?」


「へっ!?」


詩織は息を止めたのか真っ赤な顔で固まってしまい、俺は詩織の柔らかい肌に優しく触れる。


「俺は詩織のこと欲しいよ。こうやって触れられるのもあと少しだし。傍にいられる間に俺の中を詩織で満たしておきたい。」


詩織は俺が優しく撫でる度にピクッと良い反応をしてくれて、声を出すのを我慢してるのか手で口元を押さえている。

そんな詩織の姿に徐々に興奮している自分を抑える。


「……詩織は違う?」


俺からの問いに詩織は少し考えてから横に首を振る。


「…っ、ちがわない…。」


絞り出すように言う詩織の返事を聞いて嬉しくなる。


「じゃあ、俺なしじゃ生きていけないぐらいにしてやるから覚悟して。」


俺はそう忠告すると抑えていたリミッターを外し、詩織との時間に溺れたのだった。







***







昼を少し過ぎた頃、さすがに腹の減った俺は着替えを済ませ大きく身体を伸ばした。

すぐ横のベッドでは詩織がうつ伏せでモゴモゴと何か呟くのが聞こえ、耳だけそっちへ傾ける。


「…………。」

「??」


「………くやしい…。」


微かにそれだけ聞こえ「なに?」と訊き返すと、詩織が枕を抱えながら顔だけこっちに向ける。


「井坂君はずるい…。」

「なんで?」

「だって…、こんなことされたら井坂君から離れられない…。」


俺は詩織からの言葉に自然と顔がにやける。


「え、なに。そんなによかった?そんなこと正直に言われたらさすがに照れる。」

「……なんか負けた気分で悔しい…。」


詩織はそこまで言うと枕に顔を埋めてしまって、俺は気分が浮き上がりながらベッドの傍に腰を下ろす。


「たまには俺に勝たせてくれたっていいじゃん。俺いっつも負けてるんだし。」


俺が詩織のサラサラの髪を弄りながら頭を撫でると、詩織のむすっとふてくされた顔がこっちに向く。


「私の方が負けてるよ。だって、なんか井坂君に毒されてきてるし…。」

「毒されてるって…。どういうとこが?」

「………井坂君にこういうことされるの…嬉しいって思っちゃったり…。もっと…って欲張りになっちゃうとことか…。」


詩織からの本音に驚きながらも、胸の奥がむず痒くなるぐらい嬉しい。


「そっか…。それ、俺にとったら願ってもないことだけど。もっともっとって俺の事欲しがってほしい。」

「………それが負けたみたいで嫌なの。」


詩織は悔しそうにそう吐き捨てるとじとっと俺を睨む。

俺は変なところで意地になってるところがおかしくて、緩んだ顔が戻らないまま詩織に訊いた。


「それって今、もっと!って思ってるってことだよな?負けたって言ってるぐらいだし、そうだよな?」

「――――言わない。」


詩織は絶対折れるつもりはないようでくるっと背を向けてしまい、俺は少し考えてから言った。


「無理に我慢すると後がしんどくなると思うけどな~。俺、今ここにいるのにしたいこと言わなくていいわけ?」


詩織を挑発するように声をかけると、詩織は少し肩を揺らしてからゆっくりと振り返ってきた。

そしてしかめっ面のまま小さく呟く。


「……やっぱり毒されてきてる…。」


悔しそうな詩織を見てふっと笑うと「俺にしてほしいことはなに?」と尋ねた。

詩織は少し考えてから小さく手招きをしてきて、俺は顔を近づけた。


するとその瞬間詩織にキスされ目を見張る。

詩織はすぐ口を離すとふっと笑みを浮かべてから再度唇を合わせてきて、詩織の指が俺の首筋をスッと撫で始め鳥肌が立つ。


突然のことにされるがままになっていたら、何事もなかったかのように詩織が離れてベッドから立ち上がり平然と着替え始めた。


「…………へ!?」


俺があの一瞬はなんだと詩織に振り返ると、詩織は楽しそうに笑う。


「ずっとやられっぱなしだったから仕返ししたかったの。ビックリした?」


~~~~~!!!

ずるいっつーの!!


自分が優位に立ってたはずなのにあっという間に形勢逆転され、俺は悔しさから詩織の手を引くと自分の方へ引き寄せ深く口付けた。


「んんっ!!」


詩織が苦しそうに顔をしかめたとき詩織の体重が自分にのしかかってきたように感じて両手で支えると、詩織ははっと短く息を吐き出してから俺の胸にもたれかかって呟いた。


「井坂君の負けず嫌い…。」

「負けず嫌い上等。今日は俺の勝ち。」


やっと詩織が観念したことに勝ち誇ると詩織は俺にさらにくっついて笑った。


「私の負けでいいよ。井坂君、大好き。」


幸せそうにそう言う詩織を見て、俺は詩織を宝物のように抱きしめると「俺も」と答えたのだった。















ここまでで一区切りつけます。

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