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理系女子の恋~大学生編~  作者: 流音
act3:障害<詩織、井坂>
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8、仕返し決行

井坂視点です。





「はー…、なんでこんなこと…。」

「それはこっちのセリフだよ。お前のためにやってんだ。ちゃんとしろよ!!」


横浦と相対した日から二日――――

俺は赤井と共に西皇大にやって来ていた。


周囲には西皇大に通う女子たち。


「めっちゃカッコいい!!これから時間とかありますか?」

「もし良かったら連絡先だけでも!!」


詰め寄る女子たちを宥めながら赤井が色々と尋ねて回る。


「横浦準太?」

「あ!!あの人やない?ほぼ毎日合コン行ってるって噂の。」

「あー!なんかチャラそうな友達いたなぁ。」

「今他校の子が来る合コン漁ってるって聞いたけど。」


「その話詳しく教えて?」


赤井は女子たちの話を熱心に聞いては質問して、横浦と山岸に関する情報を集める。

俺はその横で広告塔のように立ち周囲を見るだけ。


面倒だなーと思いながら軽く欠伸していると、見覚えのある顔がこっちを見ていることに気づいた。

精悍で凛々しい顔つき、いかにもモテそうな風貌のそいつは忘れもしない寺崎僚介だった。


「懐かしい顔ぶれなんだけど。なんでこんなとこいるわけ?」

「色々事情があってな。つーかお前西皇大だったんだな。」

「あれ?詩織から聞いてなかったんだ?」


嫌味な感じは変わってねぇなと寺崎を睨むと、寺崎は面白そうに笑う。

それを見ていた女子たちが寺崎の周りに集まり出す。


「この人たち僚介君の知り合い?」

「あー、同郷の知り合いでさ。昔色々あって。」


寺崎が俺を見ながら悪戯っぽくそう言って、俺は寺崎を睨みつけた。


「なんかこの人たち、横浦準太って人を調べてるみたいで。」

「準太?なに、準太と何かあったわけ?」


寺崎は横浦と知り合いなのかそう言って、俺も赤井も寺崎に詰め寄る。


「あいつのこと詳しいのか!?」

「知ってること教えろ!!」


「ちょっと待てって、剣幕過ぎて怖いんだけど。とりあえず事情話してくれる?」


寺崎は俺たちを押し返すとそう言って、俺は赤井と顔を見合わせるとすべてを話すことにしたのだった。







***






「なるほどね…、そんなことが。」



大学から場所を変え、駅前から少し離れたカフェで俺たちは寺崎にことの経緯を説明した。

寺崎はふっと息を吐くと、少し言いにくそうに口を開いた。


「俺も今はあまり接点がない…というか…、縁を切られた身だから役には立てないかもしれないけど…。」

「縁を切られた?」

「あー…、なんて言っていいか…、元はわりと付き合いがあったんだけど、ある女の子のことで色々あって…。」


「もしかして…その女の子がお前の事好きで、横浦はその子が好きだったとかいう話か?」


察しの良い赤井がそう訊くと寺崎は渋い顔で頷いた。

それに俺たちは渇いた笑いが漏れる。


「それは…また…。」

「準太に会ってるならなんとなく分かるだろうけど、あいつプライドの固まりだからさ。自分を選ばない女の子を目の敵にするわ、その相手だった俺への当たりもひどいもんでさ…。最終的に『お前といても碌な事がない!!』ってブチ切れられて終わり。」


容易に想像できる光景に引きつった笑みを浮かべていると、寺崎は真剣な表情で言った。


「でも詩織の件は許せないよな。あいつがそこまでする奴に成り下がってたと思いたくはないけど…、一度痛い目みた方があいつのためになるかな…。」


寺崎はそう言うと、「俺に考えがある。」と驚く策を口にしたのだった。





寺崎から提案を受けた策を決行する当日――――――


俺は気乗りしない重い体を集合場所へと向けていた。

出てくる前の詩織の笑顔を思い返しては胸が痛む。


なぜならこれから行く場所は合コン会場だからだ。


寺崎から受けた提案はこうだ。


横浦と山岸は躍起になって合コンという合コンを漁って回っている。

クリスマスを前に彼女がいないことに危機感を感じてのことらしいのだが、いつも空回りばかりで上手くいっていない。

それをすべて来ていたメンバー(主に女子)のせいにするらしい。


まぁ原因は自分にあるのだけど…


それを今回痛い目に合わせて思い知らせるという策だ。


どう痛い目に合わせるかは口の上手い赤井と提案者の寺崎に任せてある。


俺はただ居るだけで良いらしいのだけど、合コンに参加するということがまず心苦しい。

詩織にあれだけ説教した身分で、今度は逆の立場になるのだから…


俺は何度目かもわからないため息をつくと、合コンが開催されている店の前に着いた。

店の前には赤井が待っていて、ケータイを片手に寒そうに肩を揺らしている。


「中はだいぶ盛り上がってるみたいだ。寺崎があと5分ぐらいしたら入ってきてほしいってさ。」

「わかった。」


俺が重い気分で低いテンションで返すと、赤井に背を叩かれる。


「おい!これは谷地さんのためなんだぞ!彼氏としてしっかりしろ!!」

「分かってるって。」

「無理はしなくてもいいけど、楽しくなさそうな顔だけはすんな。場の空気が悪くなる。いいな。」

「はいはい。」


赤井からのうるさい忠告を聞くと「そろそろだな。」と赤井が店に入っていったので、俺は大きく息を吐いてから後に続く。

店内は暖房が効いていて暖かく俺はつけていたマフラーをとった。

そうしてどこのテーブルなのかと思っていたら「こっちこっち!」と寺崎の声が聞こえた。


「こいつら俺の同郷の友達。こいつはたまたまこっち来てたから誘ったんだ。」


女子の高く短い悲鳴に交じりながら赤井が「どうも!初めまして!」と慣れたように言っていて、俺は目を剥いている横浦を確認だけして会釈した。


「僚介君の友達めっちゃかっこいい!!」

「えー!!絶対彼女いるでしょ!!」


「あ、こっちは彼女いるからごめんね。」


こっちは?


俺は赤井の言い方に疑問が過り赤井を見ると、赤井は口パクで「合わせろ。」と言ってきたので、そういう設定かと理解した。

横浦は俺たちを見て何か言いたそうにしていたが、場の空気を読んでしぶしぶ口を閉じている。

その横にいるチャラそうな男が横浦に何か言っていて、隣のやつが山岸だと分かった。


「えっと赤井君と彼女がいるのが井坂君でよかった?」

「井坂君の彼女さんてどこの人?」


「え、と桐來大に行ってて…。」


これは普通に答えてもいいものかと赤井と寺崎を見ながら言うと、女子たちが食いついてくる。


「あ、じゃあ赤井君と一緒なんだ。彼女さん可愛い?」

「どういうところ好きになったの?」


「えーっと…真面目でちょっと抜けてるところとか―――」


「真面目なぁ~。」


俺が考えながら答えているところに横やりを入れてきたのは横浦で、俺は不機嫌そうな横浦に目を向けた。


「俺そいつの彼女知ってるけど、とんだゆるい女やで?真面目とは程遠いやろ。」

「は?」


「え?知ってるって…」


詩織のことを悪く言われカチンときた俺は今にも掴み掛りそうだったが、横にいた赤井にテーブルの下で思いっきり足を押さえつけられた。

女子たちは何の話かとざわつき始める。


「だって俺、そいつの彼女と合コンで会ったんやで。めっちゃ軽い女やろ。そんな彼女持ちの男もこういう場所に来てんねんからお似合いやな~。」

「え、彼女さん…井坂君いるのに合コン行ってたの…?」


「俺は彼女から事情も聞いて全部知ってる。軽い女じゃない。」


俺が怒りを煮えたぎらせ大声で怒鳴る一歩手前まで我慢していたら、横から助け舟が入る。


「へぇ!!横浦さん、よく合コン行かれるんですね!」

「そうだよ準太。井坂の彼女のことそんな詳しいとか、そのとき狙ってたとかか?手に入らなかった女の子の悪口言うなんて女々しいからやめろよ~!」


「あ!?悪口って…、俺は感じたままを言って―――――」


赤井と寺崎の言葉を皮切りに女子たちの空気が一変して横浦を見る目が不審なものになった。

それを感じ取った横浦が慌て始める。


「あ、そういえばその井坂の彼女とその友達が少し前に合コンで会った男にストーカーされて。」

「え!?ストーカー?」

「そうそう。きっと手に入らなかった腹いせだと思うんだけど、まさか横浦さんとそのお友達じゃないよな~?」


「なっ!?」

「!!!!!」


女子たちが口々に「ストーカー!?」「気落ち悪~い!!」と騒ぎ出し、赤井は「まぁ例え話だからさ。」と場を落ち着かせていて、横浦と山岸が居づらそうに顔をしかめる。


「ま、俺たちが言いたいのはクリスマス前で焦ってる野郎もいるから、女の子たちはちゃんと相手を見極めなってこと。」


ほっとしたように明るく笑いだす女子たちを前に寺崎が話を上手くまとめて、次にある質問をした。


「そういえば女の子たちの好みのタイプ聞いてなかったよな。理想のタイプとかって何かある?」


「私はやっぱり優しい人!」

「頼りになる人がいいかな~。こう何かあったときに守ってくれる人とか。」

「え~、でもやっぱり見た目も大事だよね。」

「カッコいい人がいいけど、話が合うとか中身もないと嫌だしな~。」


女子たちがきゃぴきゃぴ楽しそうに話すのに安心したのか横浦たちの表情が少し和らいでいたら、赤井がニコニコしながら核心をつくことを口にした。


「じゃあ、今いるメンバーの中で一番好きなタイプって誰か一斉に指さしてよ。」

「えー!!」


は!?


俺がびっくりして何度か瞬きしてる間に「せーの。」と声がかかり、女子の指が俺と赤井、寺崎の三人に集中して息が止まった。


「いぇーい!ありがとー!」

「やりぃ。俺、二番人気~!」


赤井と寺崎がまるで親友のようにハイタッチして喜んでいる横で俺はとりあえず指さしてくれた子に軽く頭だけ下げる。

それを見て気分を害したのか横浦が机を叩いて立ち上がった。


「こんな集まりやってられるか!!低レベル同士勝手にやってろや!」


横浦は上着だけ持って山岸と一緒に立ち去ろうとしたので、それを寺崎が「待てよ。」と言って引き留める。


「準太。お前、低レベルって人のこと見下すけどな。そう言ってるお前が一番低レベルだからな。」

「は?西皇行ってる俺捕まえて何ほざいて―――」

「お前いつも大学の名前出すけど、それが自分を上げるスペックだと思ったら大間違いだから。」


寺崎が声を上げて横浦の言葉を遮ると俺を指さしてきた。


「今日、一度でも井坂の大学名聞いたか?」

「あ?大学名って…。」

「井坂は自分の行ってる大学の名前、一回も言ってねぇのに今日の一番人気。お前は西皇、西皇言ってても誰からも指名されない程度の男。この差、自分でよく考えろよ。」


寺崎がぴしゃりと言い切ると、顔をひきつらせた横浦が苦し紛れに言い放った。


「そっ、それはここにいる女もそいつと同等の低レベル女ばっかやからやろ!?俺のせいにすんなや!」

「わかんねぇ野郎だな!!いつ井坂が低レベルだって言ったよ!?こいつが行ってるのは東聖大。関東の名門大学だっつーの!!」


赤井がそう早口で捲し立てると横浦より先に女子たちが「え!?うそ!!」「すごい!!東聖!?」と声を上げ始める。

横浦は頬の筋肉をひくつかせると「証拠見せろ!!」と言うので、俺はため息をついてから財布から学生証を取り出した。

横浦はそれを奪い取るように見ると、俺を睨んでくる。


「準太。よく分かっただろ。お前が今まで人のせいにしてきたことは全部間違ってんだよ。今までのこと、ちゃんと反省して考え直せ。」


寺崎からの説教に横浦は聞くに耐えなかったのか俺の学生証を投げてよこすと、何も言い返さずに山岸と二人店を出て行ってしまった。


それを見送って俺たちはふーっと長い溜息をつくと、とりあえず仕返しが上手くいったことに手を叩き合わせほっとしたのだった。



その後、女子たちに事情を説明し最後まで会に付き合わされるとは思いもせずに…














懐かしい顔の登場でした。

痛い目をみた横浦、山岸はここまでです。

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