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それから三年がたった。氷狼の国は、南の「炎竜帝国」との戦争に巻き込まれていた。 戦火は広がり、リラの住む丘の近くまで避難民が押し寄せてきた。リラは彼らの怪我や病気の治療に追われる日々を送っていた。
ある日、担ぎ込まれたのは、若き兵士だった。 敵の炎の魔術師の攻撃を受け、全身にひどい火傷を負っていた。もう助からないことは、誰の目にも明らかだった。
「うぅ……母さん……まだ、死にたくない……」
兵士がうわ言のように呟く。彼の故郷には、帰りを待つ母親がいるという。
リラは苦悩した。 ラベンダーは有限だ。王家の人々や、もっと多くの命を救うために取っておくべきではないのか。一人の兵士のために使うのは、魔女の遺言に反するのではないか。 しかし、彼女は目の前で消えゆく命を見捨てることができなかった。 彼女は再び丘へ走り、二つ目のラベンダーの花束を作った。
花束を抱かせると、兵士の火傷は魔法のように癒えていった。爛れた皮膚が再生し、痛みに歪んでいた顔が安らかになる。 代わりに、ラベンダーは炭のように真っ黒に焦げ、崩れ去った。
兵士は一命を取り留めた。彼は涙を流してリラに感謝し、戦場には戻らず、故郷へ帰ると誓った。
「ありがとう、薬師様。この命、大切にします」
兵士を見送った後、リラは丘に立った。 ラベンダーの香りが、以前よりも弱くなっているのを感じた。畑の端の方から、少しずつ枯れた部分が広がり始めていた。 魔女の遺産は、確実に減っていた。 だが、リラの心に後悔はなかった。彼女は師匠の教え通り、「本当に救うべき者」――それは、肩書きや立場ではなく、生きたいと願う切実な魂なのだと信じていた。




