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異世界ダンジョン総合学園へようこそ!  作者: gulu


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1話目:イカレた奴の学園デビュー!

 やあ! ボクは音無 響!

 高校で音楽デビューしてモテモテになろうと死に物狂いで練習してたら、いつの間にか受験シーズン目前!

 女子にモテモテになるどころか青春すらなかったよ!

 ちなみに音楽の才能もないし独学で練習してただけだから推薦で音大に行くのも無理だよ!

 このまま勉強に殺されるか留学するかって言われたので、速攻で留学を選びました!

 よろしく!


 ……ということをオブラートで包んでレンジでチンしてゴミ箱にダンクシュート決めた感じの説明を、面接官である異世界の先生方に説明したら固まってしまった。


 たぶん俺は悪くない。

 悪いのはいつだって時代とか地球温暖化とか景気とかのせいはずだ。

 そうじゃないと俺が悪いことになってしまうじゃないか。

 いや、ちょっとは悪いか?

 うん、自らの過ちを認めることも大事だ。

 だいたい小さじ二杯分くらいは俺が悪いということにしておこう。

 タンクローリー並の小さじ二杯だけど、ウチのシマだとあれは小さじなので問題ない。


 ちなみに年配っぽい初老の男教師さんは固まったままだが、隣の金髪小学生くらいの女児っぽい先生らしき人はイスの上で笑い転げている。

 なんて失礼な人だ。

 抗議の意味も込めて鋭い視線を送りつける。

 決して足をバタバタするせいでチラチラとパンツが見えているからではない。


 そんな場の空気をリセットする為か、初老の男教師さんが一つ咳払いする。


「オホン……失礼。お若いのにずいぶんとロックな……生き方をされていたようですね」

「先生、ロックが分かるんですか!? 俺ぜんぜん分かんないです! ロックってなんですか!? ギターで辻斬りしたらロックになれますか!?」

「すみません、統一言語でも何を言ってるかよく分からないです。……おかしいですね、精神テストでは異常はなかったはずなのですが」

「あんなテスト意味ないですよ。自分で異常者になりきって、あとは選択肢を全部逆張りすれば満点ですから」

「聞きたくなかった、そんなこと……!」

「デガリンゾググジョバダダゼグバ?」※手紙の方がよかったですか?

「そういうことではなくっ!」


 統一言語ってすげー。

 あっちじゃ翻訳しないと意味が分からない言葉でも通じるんだ。


「ところで先生、聞きたくないかもしれませんがとっても大事なお話があります」

「ハァ……ハァ……聞きたくありませんが、聞きましょう……」

「隣の人、呼吸が止まってるくさいです」


 先ほどまで爆笑して転げまわっていた女児風味の先生が、全身をピクピクと痙攣させて白目を向いている。

 ここまでくると色気とかよりも心配の方が勝ってしまった。


「うわあああああ! エトルリア先生しっかり! こんなことで死ぬアナタじゃないでしょ!?」


 その後、なんやかんやあって面接は有耶無耶になって終わった。

 まぁ合否のあるものというよりも、留学生である俺がどんな感じかを見る為のものだったので問題なかった。

 あったのは一件の事故死だけだ。


「いや~、笑った笑った! 素面で笑い死ぬとはなぁ! ほんと、異世界人は面白い!」

「先生もわりとビックリドッキリな生命体っすよ」


 ちなみに死んだはずのエトルリア先生は酒を飲みながら元気に俺と一緒に歩いている。

 なんか死んでも生き返れる種族らしいが、命が軽すぎやしないだろうか。


「<探索者>なんぞしてたら命なんざ軽い、軽い。お前さんも人工ダンジョンじゃ死ねん身体になる」

「……え? 俺、何も喋ってないんすけど」

「ちなみにワエ様、表層意識も読めるからな」


 マジで!?

 じゃあパンチラのこともバレてたのか。

 ここはひとつ、俺もパンチラすることで手打ちということにならないだろうか。

 ……武家社会の方の手討ちになるから駄目か。


「ほんと、面白い奴だ。ダンジョンから良い酒を持ってくれば、一晩相手になってやってもいいぞ」

「それってエッチな意味ですか!? 本気にしていいんですよね!?」

「あっはっはっは! もちろん本気だぞ。ただまぁ―――お前まったく本気じゃないよな?」


 まるで鋭く冷たい剣先のような視線に射抜かれたような錯覚で、一瞬動揺してしまう。


「ま、どうでもいいがな。お前さんが何を求めてダンジョンに潜るかは知らんが……あまり期待しすぎんことだ」


 そんなことを話しながら、教室に到着する。

 エトルリア先生が入ると騒がしかった教室が静まり、自然と一緒に入ってきた俺に注目が集まった。

 さて……こういうのは最初の印象が肝心だ。

 異世界人の度肝をどうやって抜いてやろうかと考えていたが、エトルリア先生の裏拳が腹に入った。


「変なことを考えんでもよろしい。別世界の者というだけで注目されとるからな」

「じゃあ先生みたいにパンツ見せなくていいってことですか」


(おいおい、マジかよ。初対面でパンツ見せんのかあの先生)

(そういう種族? 初めて見るけど……)

(匂いからして長命種……数百歳ものの下着か、ヤバイな)


 教室中からヒソヒソ声が聞こえる。

 よし、これで注目の的を俺からエトルリア先生に移すことに成功したな。


「アホなことするんじゃあない。ほら、さっさと空いてる席に座れ」


 そう言って二発目の裏拳がアゴに叩き込まれてしまう。

 しかし予想以上に強かったせいで足元がフラつき、近くにいた女子をうっかり押し倒してしまった。


「どぅわぁっ! すみません! 押し倒したいという気持ちは1%ほどあったんですが本気でするつもりはなく!!」


 射殺すレベルにまで凄まれた軽蔑の視線が突き刺さり、すぐさま退いて立ち上がる。

 土下座でもすべきか考えるも、お相手さんはこちらなど存在しないかのようにすぐにそっぽを向いてしまった。


(ヒュー、あのドルイドを押し倒したぜアイツ)

(とんなド変態だな!)


 周囲から冷やかしの声を受けつつ、適当に空いた席に座る。

 ……周囲の女子から不可視の敵意のようなものが突き刺さっていた。

 俺がドMじゃなくて助かったな、お前ら。

 生粋のドMだったらこの時点で絶頂してたぞ、感謝してくれ。


「さて……本来ならここで自己紹介やらこれからの予定やらを話すのだが、そんなことしてもツマランだろ?」


 周囲の皆が困惑しているのとは対照的に、エトルリア先生は不敵に笑いながら教室の外を指さした。


「ここはダンジョン総合学園……ならば、先ずはダンジョンに潜るべきだろう」

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