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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第06章 : リンド村を拠点にしました。名前は「サクラ帝国・湯けむり支部」です。
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#076 : どっせーい☆ヤドカリ投棄事件簿


前回までのあらすじ

→ お姉ちゃんが軟体生物になった。


◇◇◇


……ここからは、我ではなく──

サクラ殿ご本人の目線で、お楽しみください。


……

………


(サクラ……あんた、また逃げてるのかい?)


(ああもう……出たよ、おばあちゃん……ほっといてよ……)


(逃げたっていいさ。怖いもんは怖い。)


(うん……)


(でもね。逃げるのはいいけど、そこで終わるのはダメよ。ツノが折れても、心は折れるな。)


(……それ言う? 今、言う?)


(サクラ。人生に必要なのは“勇気”と“根性”と ──)


(と?)


(“おじいちゃんのようにならない”という強い気持ち。)


(……草www)


(そうそう、あの人ったら今朝もね……)


(……まさか)


(“リモコンを探しながら、リモコンで頭かいてた”のよ。未来のない男だわ。)


サクラ「クソワロタwww」


私は吹いた。腹筋をつった。ついでに涙が出た。


サクラ「あははははは!なにそれ……バカすぎるでしょ……」


……でも、なぜだろう。


そのどうしようもないバカ話が、ちょっとだけ胸をあったかくした。


(サクラ。泣いてもいい。笑ってもいい。)


(でも、止まらないこと。あんたはそういう子だったじゃないか。)


サクラ「……ははっ、そうだったね、おばあちゃん……」


私はそっと、貝殻の入り口に手をかけた。


サクラ「ありがと。……もう大丈夫。」


ゴソゴソ……。


ヤドカリから出て見上げた空は、雲ひとつない月夜だった。


サクラ「逃げてちゃ……何も……解決しない……か……」


サクラ「また助けられちゃったね……ありがとう……おばあちゃん」


その日の月はお婆ちゃんに黙って食べた……お婆ちゃんがとても楽しみにしていた どら焼き と同じ形をしており、とてもキレイだった。


おばあちゃん……悔しそうだったなぁ……。


サクラ「……ふふ。」


私はベッドで寝ているエスト様の頭を撫で、寝相の悪い辰美に布団を掛けると……


サクラ「どっせーい!」


……ヤドカリの殻を窓の外に投げ捨てた。


ガシャーン!!!!!


エスト&辰美『「!!」』

寝ている2人がビクッと動いた。


◇◇◇


── 翌朝。


サクラ「起きなさい!いつまで寝てるんですか!?」


エスト『……んん……あッ!!お姉ちゃんが復活してる☆』

辰美「サクラさーんッ!!」

寝起きのエスト様と辰美が私の姿を見るや否や飛びついて来た。


サクラ「2人とも!な、何よ!あ、あれは静かなところで考え事をしてただけなんだからねッ!?」


エスト『なんでもいいよーお姉ちゃん☆お姉ちゃん☆』

サクラ「サクラさん!サクラさん!」


サクラ「……ふふ……まったく……」


私は二人の頭を撫でながら微笑んだ。


サクラ「……さて!と!……借金返済のために活動開始しますよ!」


サクラ「辰夫!聞こえてるんでしょ?こっちに来なさい!」


……ダダダダダッ!……ガチャッ!


辰夫「サクラ殿!?……良かった……一時はどうなるかと…」


ジル「サクラさん……!!……やっと……やっとその美しい姿を見れました……」

辰夫とジルが慌てて部屋に飛び込んで来た。


サクラ「……や!……ゃめてょ…………ま、まったく……どいつもこいつも……私が居ないと何も出来ないのかなーー?」


私は照れ隠しするために窓の外を見た。

小鳥がそのさえずりによって清々しい朝を知らせてくれていた。


私は昨晩投げ捨てたヤドカリがジル家の庭の噴水を破壊しているのを見つけたが、何も見なかった事にした。

(後に借金に1000万リフル追加された事を付け加えておくこととする。)


エスト『あ、そうだ!お姉ちゃんも出てきたし、今日の実験は中止だね☆』

辰夫「ですな。」

辰美「はい。」


サクラ「ん?……実験?」


エスト『今日は

【第1回チキチキ!ヤドカリお姉ちゃんを崖から海に投げ捨てたら出てくるのかー!?】

 の実験だよ☆』


エスト様が得意げに話す。


辰夫&辰美「「うんうん。」」

首を縦に振る2人。


エスト『でね?でね?明日は

【第1回チキチキ!ヤドカリお姉ちゃんをドラゴン辰夫が

 高度 1 万メートルからキリモミ回転を加えて落としたら

 温泉を掘り当てる事が出来るのかー!?】

 の実験予定だったんだよ☆』


エスト様が得意げに話す。


辰夫&辰美「「うんうん。」」

首を縦に振る2人。


サクラ「……あ……危なかった……おばあちゃん……ありがとう……」

額から冷ややかな汗がたれると同時に、私はあらためておばあちゃんに感謝した。


サクラ「はいはい!そんなわけで!冒険者ギルドに行って一発で 10億のクエストを受けます。」


エスト『ないだろそんなの☆』


辰夫「ふむ。地道に働くしかないですな。」


辰美「ふひひ……サクラさんと冒険……」


ジル「私は領主の仕事で行けませんが、ギルドへの道をお知らせしますね。」



(つづく)


◇◇◇


──今週のおばあちゃん語録──

『おじいちゃんは、いまリモコンを探しながらリモコンで頭かいてるわ。未来のない男よ。』


解説 :

かつて戦場を駆けた英雄は、今日もテレビの前で“敵”を見失っている。

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― 新着の感想 ―
 殻からサクラが出てきたよ!  ほっこり してたのに  窓から殻を投げるんかいっ!?    読んでて本気で突っ込んだ。  勿論口元ニヤけながらねっ!!
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