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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第06章 : リンド村を拠点にしました。名前は「サクラ帝国・湯けむり支部」です。
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#072 : 最強の鬼☆そのスキルは【酒豪】


翌朝、柔らかな朝日が窓から差し込み、私の顔を優しく照らした。

私はゆっくりと目を開け、天井を見つめた。


すぐに身体に変化が起きている事が分かった。


サクラ「あれ?あんなに飲んだのに……身体が軽い……?」


サクラ「そう言えば寝てる間に……【進化】とか言われた?」


その瞬間、既に起きていたエスト様と辰美が驚きの声を上げた。


エスト『え!進化!?お姉ちゃん凄い凄い☆』


エスト様の目は星型になり、興奮で体が小刻みに震えている。


辰美「進化って!めっちゃレアですよ!サクラさん!おめでとうございます!結婚してください!きゃ……言っちゃった……」


辰美は顔を真っ赤にしながら、両手で頬を覆った。


サクラ「……へぇ……そうなんだ……」


私は上の空で返事をすると、ゆっくりと立ち上がり、部屋の隅にある全身鏡の前に立った。


正直なところ、私は強くなることにまったく興味がない。

それは単純に、強くなればなるほど、前線で戦わなければならなくなるからだ。


危険で痛い思いをするのは御免だし、何より面倒くさい。

しかし、エスト様との世界征服という目標は達成したい。


だからこそ、私以外の誰かが頑張ってくれれば良いと常々思っているのだ。


サクラ「んー……?」


鏡に映った自分を確認したが、外見上の大きな変化は見られなかった。


しかし、よく見ると筋肉が引き締まっているような気がした。

体全体がより引き締まり、姿勢も自然と良くなっているように感じる。


そして!私はある事に気付いた!


サクラ「ぇ……きゃあああッ!?」


私が驚きの声をあげるとエスト様と辰美がビックリしながらこっちを見た。


エスト『えッ?な!なに?』

辰美「ど!どうしました?」


私は溢れる涙を堪え、震える声で2人に言った。


サクラ「胸が……胸筋が、引き締まって……減ってない?」


(沈黙)


エスト『減るも何も!元からあるか分かんねーから☆』

辰美「サクラさんは私と同じぺったんですし!」(辰美ピース)


(沈黙)


私は……ただ……ただ少しだけ……笑ってほしかっただけなのに。


……二人は……笑って、くれないんだね。


サクラ「……よし。」


私はおばあちゃんの言葉を思い出した。


(“怒ってる?”って聞かれた時はね、“怒る権利を持ってると思ってる?”って聞き返したの。今でもそれがおじいちゃんの人生の分岐点だったと思うわ。)


── 私はコイツらを埋める決意をした。


しかし、その前に自分の身体の変化が気になった。


サクラ「それにしても身体が絶好調すぎる……なんかスキル覚えたのかな?」

「……とりあえずステータスを確認してみるか……」

「ぁ!ステータスーッ!オープンッヌ!」


目の前にステータスウインドウが表示された。

私はマジマジとステータスを見る。


\\ ぺったんこぉーーーーーッ ♪//

====================

★勇者・サクラの現在のステータス

  ・名前:サクラ

  ・種族:鬼族:酒呑童子 ← ☆New

  ・レベル:300

====================


「おお?鬼族の【酒呑童子】というものになってる!


サクラ「……酒呑童子って……前世の記憶では確か……ヤマタノオロチの子で、鬼の中でも最強説があったはず!」


厨二病を拗らせている私なので、強くなる事に興味が無いとは言え、流石にこれにはテンションが上がった!


エスト&辰美『「おお!最強の鬼☆」』


2人は興味津々だ。これからこの最強の鬼に埋められるのに。


サクラ「……んで……その酒呑童子さんの……効果はどこかな……っと……?」


私はステータスウインドウを下にスクロールすると、エクストラスキル欄に追加されているスキルを見つけた。


サクラ「お!あった!……え?これだけ……?」



\\ 【酒豪】ドーーーーーン!! //

《効果:二日酔いになりにくくなる。肝臓大事。》


(沈黙)


(さらに沈黙 ── 部屋にハエが一匹「ブーン」と飛ぶ音だけ響く)


サクラ「……………………」(ハエがツノにとまる)


サクラ「──おいこらシステム!!!」


エスト『wwwwww』

辰美「wwwwww」


(硬直)


サクラ(心の声)(……え、これ肝臓だけ進化? 敵は殴れないけどウコンは倒せるってこと?)


私の表情が徐々に曇っていく。


サクラ「……なにこれ……ねぇ?……今、私の身に何が起きてるの?」


エスト『よwww良かったねwwwいっぱいお酒飲めるねwww』


エスト様は大笑いしながら、床を転げ回り始めた。


辰美「ちょっとwwwなんで毎回笑わせるんですかwww」


辰美も腹を抱えて笑い出した。


サクラ「ほぅ……」


私の目が鋭く光る。


ドンッ!!!!!


エスト『ハシモトッ!』


ドンッ!!!!!


辰美「チョーノッ」


2人は私のドラゴン・スクリューを受け、回転しながら窓の外に放り出された。


窓の外では2人が頭から地面に刺さっていた。

それは、さながら墓標のようであった──。


サクラ「ホント!なんなんだよ!どうなってんだよ!この世界のシステムは!」


私は窓の外の2つの墓標を見つめ、手の汚れをパンパンと払いながら天の声の中の人の墓標も用意する決意をした。


辰夫「サクラ殿!?凄い音がしましたが!」


そして辰夫が慌てて部屋に入ってきた。


サクラ「……ふん。なんでもないわよ。」


私は窓の外の2つの墓標を見つめながら言う。


辰夫「……そうですか……では。」


サクラ「あー、辰夫」


私は部屋から出て行こうとする辰夫を呼び止めた。


辰夫「は、はい……?」


サクラ「……領主戦の時は……サポート……ありがとうね。助かったわ。また宜しく。」


私は窓の外の墓標から雲に視線を移しながら言った。


辰夫「……え……?……あ!は……は、はいッ!!!」


辰夫の声が弾んだ。

普段の落ち着いた口調とは打って変わって、興奮と喜びが溢れている。


辰夫「い、いえ!お役に立てて光栄です!」


辰夫の声には深い感謝と尊敬の念が込められていた。

彼の目には涙が光っているように見えた。


私は軽く頷き、辰夫に背を向けたまま、「うん」と小さく返事をした。

部屋を出ていく辰夫の足音が、いつもより軽やかに聞こえた。


──


── そして、この時の私は忘れていた。


このステータス ウインドウがマルチタッチ対応デバイスである事を。


天の声の中の人の悪戯だろうか?

二本指でタップして確認できる詳細には以下のような記載があった。


====================

 エクストラスキル

  酒豪 → 二日酔いになりにくくなる。肝臓大事。

   (鬼剣舞 → 全ステータス2倍)

   (鬼ころし → 鬼系モンスターへの攻撃力2倍)

   (鬼山間 [赤ラベル] → 酔えば酔うほど強くなる)

====================


私がこれに気づくのはだいぶ先のお話。


肝臓は大事ね……まぁそうなんだけどさ?

こいつらとバカやってる時間のが大事なんよ。


多分ね。


(つづく)


※次回!サクラの秘密が明らかに!?


◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:3.9%(街の民心掌握+進化イベント発生)

【支配地域】:オーミヤ(名実ともに支配段階へ)

【主な進捗】:

 ・街を守った功績により民衆との距離が縮まり、

  宴を通して実質的な人心掌握に成功

 ・宴会中、サクラによる“無意識ドラゴンスクリュー制裁”が発動

 ・辰夫、グラスを前に“静かな決意”。

  方向性はハローワークへ

 ・泥酔したサクラ、【酒呑童子】へ進化!

 ・スキル【酒豪】により“肝臓強化”だけだと思いきや、

      実は鬼バフ系の隠しスキルを多数内包

     (ただしサクラはまだ気付いていない)

 ・恒例:ステータスオープン芸&サクラ流勘違いの儀式あり

 ・ドラゴンスクリューで突き刺された墓標が2本(エスト・辰美)

 ・辰夫がちょっと報われる(たぶん今章で一番キラキラしてる)

 ・今後、サクラが“酔えば酔うほど強くなる”事実に気づいた瞬間、

  世界征服は本当に始まる


◇◇◇


──今週のおばあちゃん語録──

『“怒ってる?”って聞かれた時はね、“怒る権利を持ってると思ってる?”って聞き返したの。今でもそれがおじいちゃんの人生の分岐点だったと思うわ。』


解説 :

この言葉を聞いたおじいちゃんは、その日から味噌汁の味がしなくなったという。

なお、翌日から「はい」と「申し訳ありません」だけで会話が成立するようになった。

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― 新着の感想 ―
 酒呑童子!!  酒呑みねぇえ酒呑童子!!  肝臓は大事だよね。  羨ましい肝臓(ò_óˇ)  やっぱりこのノリと、テンポが好きだぁ✨
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