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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第04章 : リンド村征服計画、発動。
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#047 : 正義の形☆それは「こぶしの形」

挿絵(By みてみん)

温泉を掘り当てた私たちは、ひとまずリンド村に戻る事にした。


辰美と3馬鹿には今の私達の状況……そう、エスト様のことや世界征服の野望を簡単に伝えた。


辰夫「ああっ!?しまった、バイトの時間が迫ってます!」

「サクラ殿、申し訳ありませんが私は一足先に!」


そうだ。辰夫は夜間のバイトが入っていたのだ。


サクラ「はいよー!ガッポリ稼いできなさいよ!」


辰夫「はい!任せてください!」


私は辰夫の背中を叩いて激励し、辰夫は嬉しそうに応えた。


バサッ!バサッ…!


辰夫が飛び立っていく。


辰美「え…竜王がバイトしてんの…?」

「それよりも…なんで嬉しそうだったの…?」


辰美は飛び立つ辰夫を見送りながら言った。


サクラ「イチロー!ジロー!サブロー!お前達はリンド村までダッシュだ!少しでも強くなれ!で、村でお前達のバイトの話をするからな!」


123「「「……ドラゴンがバイト……?……え?俺たちもバイト……?」」」


サクラ「はい!早く行く!ほらほら!」(パンパン!)

私は手を叩き3人をうながす。


123「「「はい…」」」

3人はダッシュで山を駆け降りて行った。



サクラ「さてと!私たちも村に戻りま…」


── その時である!!!


???「…その力…鍵の力……邪魔だな………」


突然!声が聞こえた!


サ&美「「なッ!?」」


私と辰美は身構えた!


空間が割れ、漆黒の翼がゆっくりと広がる。

辰美が息を呑んだ。


(沈黙)


ゆっくりと──何者かが出現した!


???「……ふむ……今のうちに摘んでおくか…」


その何者かは、ゆっくりと私たちを見ると、そのまま睨みつけながら言った。


私はその容姿に戦慄した。


漆黒の翼を背中に持ち、額には小さく鋭い角が生えている。

美しいが冷酷な顔立ちの女性。

肌は青白く、瞳は血のように赤い。

まさに悪魔そのものの姿だった。


サクラ「悪魔……?本物の悪魔が出てきた……?」


── 私の直感が告げる!


サクラ「あ……ぁ……そんな、ま……まさか……魔王、なの?」


???「……………違う。」


その悪魔の女は申し訳無さそうに答えた。


サクラ「……私の直感………ここは仕事しろよ……」


私は地面を叩きながら悔しがった。


辰美「か、かっこわるッ!ここは空気的に当てるとこでした!」


辰美が慰めるように私の背中をポンと叩いた。


── そして私は再び立ち上がる。


(沈黙)


私は全力で直感を叩き起こした。

脳内で何かがブレーカーを上げるような音がした。


サクラ「はッ!?……ぁぁ……まさか…だ、大魔王…?なの?」


(沈黙)


???「…………………違う。」


またしても悪魔の女が申し訳無さそうに答えた。

その表情には明らかな困惑が浮かんでいる。


サクラ「……………ぇぐ……ひっく…」


気がつくと私は地面にうずくまって泣いていた。


私は大嫌いな給食の牛乳を飲むまで帰れなかった時と同じような絶望感を抱いていた。

胃の辺りがキュッと締め付けられるような感覚。


辰美「直感の空気の読めなさが凄い!……どんまいです。」


辰美が優しく背中をさすってくれた。


── その時だった。

ムダ様の言葉が、脳内にねじ込まれるように響いた。


──『正解かどうかは、俺が殴った後に考えるんだよッ!!!』──


サクラ「……ッそ、そうだよね……そうだよね……」


私はぶつぶつと呟きながら、よろよろと立ち上がる。


サクラ「……ムダ様は……殴ってから考えろって……そう言ってた……そう言ってたもん……!」


目が虚ろにギラつき、拳がぷるぷると震えていた。


サクラ「だから私は正しい。ね?ねぇ?だって拳を振れば全部分かるでしょ?違うの?違わないよね!?正義って、こぶしの形をしてるんでしょ!?」


辰美「ま、待ってくださいサクラさん!?その発想はまずいです!脳まで筋肉なんですか!?」


私は拳を掲げ、悪魔の女をじっと見据える。


サクラ「ぶん殴れば……わかるよ……世界のすべてがッ!!!」


辰美「違う世界に旅立たないでください!お願いだから帰ってきてええええッ!!!」


辰美が涙目でしがみついてくるのを、私は完全に無視して一歩前へ──


── すると、その悪魔の女は顔を上にあげた。

首の角度が急に変わり、あごが天を指している。


???「ぷッ……ぷぷッ……グッ……キッ………」


全身が小刻みに震えている。


サクラ「めっちゃ笑いこらえてる!やった!ウケたんだ!」


私はガッツポーズをした。両手を握りしめ、肘を引く。

顔には大きな笑みが浮かんだ!


辰美「私!この人の事が大好きです!」


辰美も喜んでいた。その声には興奮が滲んでいる。


悪魔の女はずっと上を向きながら話を続ける。


???「キッ…き、興が削が(きょうがそが)…グッ…れ…たわ…」


サクラ「まだウケてる!ここまでウケると嬉しい!」


辰美「私!この人と友達になりたい!」


???「今日の…ググッ…キッ…ぷぷ…ところ…は…見逃して…グッ……や…る。」


上を向いていた顔が今度は下を向いた。


サクラ「どうしてもカッコをつけたい!」


辰美「大事なところだからこっちの目を見て話をして!」


???「次に…キッ…会った時……」


肩が小刻みに震え、口角がわずかに引きつっている。

プライドと笑い声がせめぎ合う、顔面筋肉の激戦。


???「…が…貴様らの…キッ…最後…だ…。」


正面を向いた悪魔の女の顔は紅く、目には涙が溢れていた。

頬は火照り、目尻には笑いをこらえきれずに出た涙が光っている。


サクラ「感情とプライドの熾烈な戦い!」


辰美「私!今凄いものを見ています!」


そして、震える手を空間にかざし、空間を割ると、めっちゃ早歩きで割れ目に消えて行った。


スタタタタタ!


サクラ「最後まであっぱれな人だった……」


辰美「また会いたいですね。」


いやぁ良いもの見たな!と胸がいっぱいになった私と辰美は悪魔の女のモノマネをしながら村に向かった。


夕暮れの空が徐々に暗くなり、最初の星が瞬き始めている。

私たちの笑い声が、静かな山道に響き渡る。


サクラ「グッ…キッ…(笑いこらえる顔真似)」


辰美「ちょ!サクラさんやめて!?似すぎてる!」



(つづく)


※次回!魔王軍が総集結して温泉にあんなことやこんなことを!?


◇◇◇


──天の声です。

ええ、どうも。お久しぶりですね。

ちなみに今の”悪魔の女”、観測できませんでした。ログにも痕跡ゼロ。


……なんか、めっちゃヤバい気がするんですけど。


でもサクラが笑ってたから、ま、いっか☆


◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:2.0%(新イベント遭遇で微増)

【支配地域】:リンド村(拠点化進行中)

【主な進捗】:突如”悪魔のような姿の謎の女”と遭遇。

       サクラの脳内直感は空回りするも、勢いがツボった模様。

       謎の存在は爆笑しながら撤退。

【特記事項】:直感はダメでもリアクション芸は光る。

       ”悪魔の女”は何者か天の声にも観測不能。

       観測者も匙を投げている。


◇ ◇ ◇


──【今週のムダ様語録】──

『正解かどうかは、俺が殴った後に考えるんだよッ!!!』


解説:

言葉は後付け、拳が先。

議論より実践、推理より実打。

ムダ様はすべての選択肢を、力技で納得させる。もう大好き。

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