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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第04章 : リンド村征服計画、発動。
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#044 : 偽善者を殴る正義☆サクラ流征服論

前回までのあらすじ

→ 乱視が治ってた。辰夫がペラッペラだった。


◇◇◇


私たちは再び歩き始めた。

神眼の力で風の流れまで見えるようになった私の目に、遠くの山々の稜線がくっきりと映る。


サクラ「さあ辰夫、行きましょう!」

「あの火竜を倒して、温泉開発の第一歩を踏み出すのよ!」


辰夫「温泉開発……ですか」


辰夫はため息をついた。


サクラ「そう!火竜の炎で地面をドバーッと焼いて穴を開けてもらうの。」

「そしたら……なんか地下の水とかがドワーッて出てきて……運が良ければ温泉!」

「出なきゃ……ただの穴!ゴミ捨て場にでもすればいい。」


私は歩きながら戦略を練った。


サクラ「戦略はシンプル。背後から思い切りぶん殴る。気絶する。はい。起きたら火竜も魔王軍。」


辰夫「シンプルすぎる!?それにしてもあの元気いっぱいの火竜を……労働力に……」

「まぁ、あいつなら説得次第では協力してくれるかもしれませんが……」

「暴走して山を吹き飛ばさないか心配ですな」


辰夫は複雑な表情を浮かべた。



サクラ「私には世界征服の計画があるの。」

「でも、"征服"って言葉、ちょっとカッコつけて使ってるだけなのよ。」


辰夫「え?そうなんですか?」


サクラ「でも、少しは本気。だってこの世界、放っといたらどこまでも"お利口さん"が損をする構造になってるのよ。私の居た世界と同じ…だったら先に"理不尽な王様"になった方が、話が早いじゃない。」


辰夫「……サクラ殿は、悪になるってことですか?」


サクラ「違うわよ。"偽善者を殴る正義" を名乗る悪になる ──」


辰夫「……なるほど、そういうことですか」


サクラ「そのためにも、まずはリンド村を観光地化して、人間と魔物が共存できる理想郷を作るのよ」


辰夫「世界征服が観光地化から始まるとは……斬新ですな」


辰夫が苦笑いを浮かべる。


サクラ「でしょ?温泉を掘って、魔物たちにも協力してもらうの。」

「スライムちゃんのマッサージサービスとか、エルフの魔法による土壌改良とか」

「それからスケルトンたちが肩とか腰をパッコンパッコン叩くマッサージもいいね」


サクラ「こういう経済効果で人々の心を掴むのよ」


辰夫「それで、我の役目は?」


サクラ「辰夫には『竜王温泉』の看板になってもらうわ!元竜王の威厳で客寄せパンダよ!」


辰夫「看板……まぁ威厳は示せそうですが、やれやれですな……」

辰夫は肩をすくめた。


サクラ「それから外交交渉も任せたい。」

「元竜王という肩書きで『サクラ帝国外務大臣・辰夫』として、各地の領主や有力者と威厳たっぷりに交渉してもらうの」


辰夫「我が……外交を?」


サクラ「今はペラッペラで雑魚いけど、元々は威圧感はあるんだからさ!黙ってるだけでも効果抜群よ。」

「あーあとは教育システムの管理も任せたい。『竜王学園』の校長先生!」


辰夫「ペラッペラ……雑魚い……校長先生……」


辰夫は眉をピクピクと動かした。


私は一度足を止めた。


遠くを見つめながら、静かに口を開く。


サクラ「想像してみて。人間の子供と魔物の子供が一緒に勉強する光景を。」

「親のいない子供たちにも、ちゃんとした教育と愛情を注いであげたい……」


── 幼い頃の記憶が蘇る。

両親を早くに亡くし、一人ぼっちだった私を、無条件に愛してくれたおじいちゃんとおばあちゃん。

『サクラは一人じゃないよ』って、いつも言ってくれた温かい声。


サクラ「誰もが愛される権利があるのよ。孤児も、魔物も、人間も。種族も出自も関係なく」


私の声が少し震えた。


サクラ「私は……家族の温もりを知らない子たちを、絶対に一人にしたくない。」

「だから世界を征服して、誰もが安心できる場所を作るの」


辰夫の表情が柔らかくなった。


辰夫「サクラ殿……」


しばらくの沈黙が流れた。


サクラ「征服ってのはね、“勝手に人の中に居場所を作っていくこと”なのよ。」

「殴って、笑わせて、“なんか一緒に居ると楽しい”って思わせたら勝ち」


私は明るい調子に戻した。


サクラ「人々が『サクラ様の統治になってから生活が楽になった』って実感すれば、もう私に逆らう理由なんてないでしょう?」


辰夫「なるほど。それは確かに理想的ですな……」


辰夫は納得したように頷いた。


サクラ「でしょ?だから協力しなさい、辰夫!あなたの力も必要なのよ!」


辰夫「……はい!」


サクラ「それから人前でいちゃつくカップルは死刑な。」(圧)


(沈黙)


辰夫「は、は?」


サクラ「じょ・う・だ・ん★(今は)」


私たちは再び歩き始めた。

道は緩やかな上り坂になり、北の山がだんだんと近づいてくる。


その時だった──


山の向こうから、地響きのような巨大な咆哮が響き渡った。

空気が震え、木々がざわめく。

そして突然、北の山から巨大な火柱が天高く立ち上がった。


火竜だ。


辰夫「機嫌が悪いのか?交戦中か?」

辰夫の表情が凍りついた。


サクラ「へぇ……?」

私は新しく得た神眼の力で、遠くの山肌に巨大な赤い影がうごめいているのを捉えた。


サクラ「まぁなんでもいいわ。労働の尊さを教えてきますかね!」


辰夫「絶対に分かってくれません……!?」


サクラ「……それにしても良い天気!」


私は一度深呼吸し、両手を広げて太陽の光をたっぷり浴びた。


サクラ「よーし、光合成をいっぱいしちゃうぞー♪」


辰夫「……!?」(光合成スキルを受け入れている!?)


私たちは春風を切って、運命の戦いへと向かった。


(つづく)


-----


◇◇◇


《征服ログ》

【征服度】:1.5%(神眼の真の力が覚醒、戦略的思考が具体化)

【支配地域】:リンド村(拠点化中)

【主な進捗】:

・神眼の隠し機能「魔力視覚化」が開花

・観光地化戦略の具体案策定(竜王温泉構想)

・征服の動機が明確化(孤児支援・全種族平等)


【今回得た重要情報】:

・神眼により魔力の流れの視覚化が可能

・北の山の火竜は辰夫の知り合いで、本来キューシュー地方にいるはずの若い火竜

・火竜は元気で話が通じやすいタイプ


【特記事項】:

・ステータス画面がマルチタッチ対応

・光合成はお気に入りの模様

・孤児支援への強い想い(自身の過去と重なる)


◇◇◇


──【今週のおばあちゃん語録】──

【追加語録】

『サクラは一人じゃないよ。

 この世界には、愛してくれる人がきっといるからね。

 だから、今度はサクラが誰かを愛してあげなさい。』


解説:

両親を亡くした幼いサクラを支えた、おばあちゃんの愛の言葉。

この想いが、今のサクラの征服理念の根底にある。

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