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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第04章 : リンド村征服計画、発動。
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#037 : サクラ襲来☆村長の胃に穴が空く音がする


《*天の声ナレーション》


パンジャ大陸、タマイサ地方にあるこのリンド村は、王都ラウワから遠く離れた田舎村だ。


村への滞在許可が正式に下り、エストと村長は広場の片隅で、途中退場したサクラと辰夫の帰還を静かに待っていた。


武装していた村人たちは警戒を解き、安堵した表情で自宅へと戻っていく。


このとき、まだ誰も気づいていなかった。


サクラたちが踏み入れたリンド村が──のちに「サクラ帝国」と呼ばれる拠点の第一歩になることを。


滞在許可が下り、宴が始まり、村人たちの心は少しずつ──けれど確実に、侵食されていく。


これはただの滞在ではない。


“征服” の兆しだ。


殴って、笑わせて、混乱させて、その隙に居座る──

サクラ流侵略が、静かに幕を開けたのである。


◇◇◇


エスト『村長さん!……すみません。さっきのバカはもうすぐ戻ってくると思いますので……』


村長「いえいえ、大丈夫ですよ。ゆっくりと待ちましょう。」


《*天の声補足:この村長、まだ知らない。「サクラ」という台風の目が何をしでかすのかを──サクラが物理的にも精神的にも村の空気を壊すタイプであることを。》



(サクラ)「冗談だったのにーひどいよー!」


(辰夫)「まぁまぁ、悪ノリが過ぎましたな。」


《*天の声補足:サクラと辰夫が接近中。声が聞こえてきた。

  空気が……すでにざわついている。》



(サクラ)「まぁ…お前らは絶対に許さないけどな?覚えてろよな?」


サクラが歩きながら刀を抜いて辰夫の喉元に突きつけている。


(辰夫)「お、お許しください…」


《*天の声補足:今のは挨拶ではありません。普通の人間はここで逃げます。》



エスト『お姉ちゃん…なにしてるの…?』


村長「刀……」


《*天の声補足:村長からは“刀”という単語しか出なかった。理解を拒否している証拠である。》



(サクラ)「あッ!エスト様ぁー♪ 村のお方ぁー♪

      やっほー♪先ほどはすみませんでしたぁー♪」


(辰夫)「……」


《*天の声補足:さっきまで人を殺しかねない目をしてたヤツが言うテンションではない。そしてサクラは本気で反省していない。》


エスト『サイコパスかな?』


《*天の声補足:エストが呟いた。それが一番近い診断かもしれない。》


村長「………」(パチクリパチクリーーーッ!!)


《*天の声補足:村長、まばたきが増えてきた。緊張のサインである。》


《*天の声補足:サクラが来たのでここからサクラ視点に戻します。》



エスト『と、とにかく!村への滞在許可が降りたんだよ!!辰夫のおかげでね☆』


サクラ「へぇ?辰夫が?」


辰夫「む?我は何もしてませんが?」


エスト『細かい話はまたあとでね☆ほら!いこいこ!』


サクラ「とにかく良かったですね!あ?村長さんかな?宜しくお願いしますね。」


村長「………。」

村長はその約束を無効に出来ないかなと思ってる顔をしてるけど、知らん。



村に行く前に1つの課題があった。


それは辰夫である。

このドラゴンの巨体をどうにかしなければならない。


—— そこで私はとても素晴らしい提案をした。


サクラ「辰夫は馬小屋で良いかな?」


エスト『馬達と並んでるドラゴンとか最高にシュールだね☆』


サクラ「牧場があれば、そこでも良いかも。」


辰夫『辰夫!しっかり羊さん達を見張るんだよ☆』



辰夫「馬………羊………?……村長?村に労働基準局とハローワークはあるのかな?」


辰夫はゆっくりと空を見上げ、震える声で言った。


村長「え…?ありません…。」


村長は申し訳なさそうに地面に応えた。


── そしてエスト様がファンタジーでは当たり前の事を聞いた。


エスト『辰夫は人型になれないの?』


辰夫「む。竜人族の姿にならなれますぞ。」


サクラ「へぇ。それは凄い。それなら早く言いなさいよw」


辰夫「許可なく発言すると……その……怒られる事があるので………ふむ…久しぶりだな。」


そう言うと辰夫は竜人族の姿に変身した。

年齢は30歳くらいの無精髭にロン毛の男性の姿だ。


エスト『おー☆ かっこいー☆』


サクラ「へぇ。なかなかイケメンですね。」


辰夫「そうか。そうか(笑)」


辰夫はこのパーティーに入ってから約1ヶ月で初めての笑顔を見せた。


サクラ「あ、でも今日中に髭は剃って髪は短髪にしてこいよな。ロン毛にして良いのは木村さんだけだからな?そこんとこ勘違いしてる奴が多すぎるんだわ。」


《天の声 : あくまでもサクラ個人の意見です。》

すかさず天の声がフォローをいれた。


辰夫「…………村長。村に床屋はあるかな…?」


辰夫はゆっくりと空を見上げ、絶望を噛みしめるように言った。


村長「あります……」


辰夫「そうか……案内してくれ……我のロン毛、今日で卒業だ……」


ふら……ふらふら……


村長「は、はい……こちらです……」


辰夫「……よし……じゃあ、サッパリしてこようか……髪は切っても我が誇りまでは切らん……」


辰夫が震え出した。


エスト『お姉ちゃん!辰夫を許してあげて!!』

エスト様が叫んだ。


サクラ「なんで?」


エスト『え……』



(沈黙)



(つづく)


\\次回予告!//


ナレーション《リンド村──静かな田舎に現れたのは、刀を抜く女と、ロン毛に絶望するドラゴンであった。》


サクラ「辰夫は馬小屋ね?羊小屋でもいいけど♪」

辰夫「ハローワークを……呼んでくれ……」

エスト『お姉ちゃんサイコパスかな?』

村長「…………(震)」


ナレーション《そして響く宣告──ロン毛卒業宣言。》


次回、

#038 : リンド村、選択を誤る☆サクラ帝国への第一歩


\\お楽しみに!//

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― 新着の感想 ―
 辰夫が……辰夫が不憫っwww  辰夫の不憫さが荒んだ心を癒します✨  
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