#026 : 地上到達☆ダンジョン100階ぶち抜きダイジェスト
── それから数週間。
それぞれの階層ボスを撃破し、全て私たちの配下に従えることに成功した。
以下、雑にダイジェストで解説しよう。
ダンジョンの各フロアボスは、みんな「正面」を向いて待ち構えている。
でも、私たちは“深部”から地上を目指して進んでいる。
そのため、なんと── !
ボスの「背後」からいくらでも奇襲できる!
《天の声:まぁ理屈はそうなるな》
だから、ボスたちは全く予想外の方向から登場した私たちに次々とやられていったのだった。
──サクラの脳にムダ様の言葉が蘇る。
『敵の背後を取ったら、まず一礼しろ。攻撃の後にも一礼だ。
そうすれば正々堂々になる。これがノブレス・オブリージュ。
貴族の嗜みだ。優雅か?』
サクラ「さすがムダ様……ジェントルメン……」(感涙)
◇◇◇
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☆90階層ボス:サタン
一礼
↓
背後から突然辰夫を投げつけてみた
↓
キョロキョロとビックリしてたところを背後からドロップキック
↓
逆水平連打
↓
ドラゴン・スクリュー
↓
逆エビ固めで勝利。
↓
一礼
*便利だったので【辰夫ロケット】と命名
辰夫「急に投げないでください!?」
サクラ「手頃だった。」
エスト『ドラゴンが手頃なお姉ちゃんの筋肉☆』
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☆80階層ボス:ワイト
一礼
↓
辰夫をけしかけて攻撃を引きつける
↓
背後から後頭部をドロップキック
↓
倒れたところを執拗にストンピングして勝利。
↓
一礼
*便利だったので【辰夫シールド】と命名
辰夫「……」(サクラを見つめる)
サクラ「なに?」
エスト『辰夫どうした?☆』
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☆70階層ボス:サイクロプス
一礼
↓
サクラ「いけ辰夫!辰夫ロケットォォォ!!!」
↓
外した
↓
「えっ、当たらないの!?」
↓
辰夫がズレた角度で天井に突っ込み、めり込む
↓
「……ふむ、便利だと思って乱用しすぎたか」
↓
結局、辰夫を引き抜いてから ”辰夫ハンマー” で勝利。
↓
一礼
*【新技:辰夫ハンマー】辰夫を逆さまに持って叩きつける技。
辰夫「帰って良いですか?」
サクラ「なんで?ダメよ?」
エスト『辰夫!がんば☆』
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☆60階層ボス:グリフォン
一礼
↓
新技:エスト☆マジックスティック爆誕!
↓
サクラがエストの両足を持って振り翳すと、エストがビーム魔法を連発して勝利
↓
一礼
サクラ「振れば振るほど魔法出るのすごい!」
エスト『酔うううううう!やめてぇええ!』
辰夫「遠心力で威力アップ……謎理論ですが効果抜群」
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☆50階層ボス:ワイバーン
一礼
↓
新技:エスト☆フルチャージ爆誕!
↓
サクラがエストのツノをギュッと掴む!
↓
エスト『そこはダメぇ!!』
↓
魔力が一気にチャージされ大魔法ぶっぱなして勝利
↓
一礼
サクラ「これぞ最強合体技!」
エスト「もう限界……ストレスマックス……」
辰夫「ツノにそんな仕様が…」
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☆途中のヴァンパイアの集落ボス:ヴァンパイアロード
自己紹介が長い
↓
自己紹介中に辰夫ロケット発射。
↓
ワンパンで沈黙。
*「あの…話…まだ終わって──」の途中で吹き飛んだ
辰夫「労災の手続きを…」
サクラ「そんなもんないよ?」
エスト『辰夫!お疲れ!』
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☆40階層ボス:フェンリル
一礼
↓
この辺から辰夫の目が死んでいることに気づいた
↓
仕方ないので連携技「エスト☆マジックスティック」再び。
↓
エストを振り翳すと遠心力で魔法威力アップ
↓
フェンリルワンパン。
↓
一礼
サクラ「私たち、確実に強くなってる……!」
エスト『世界征服、ちょっと本気でできそうな気がしてきた……!』(ぐるぐる)
辰夫「めちゃくちゃすぎる…」
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☆30階層ボス:キマイラ
一礼
↓
エスト☆マジックスティック回避されて大混乱!
↓
ピンチがチームを強くする!
↓
新技:エスト☆マジックドリル爆誕!
サクラがエストの両足を持って錐揉み回転!
↓
エスト『絶対回しすぎ!ちょ、魔法暴発するぅ!!』
↓
超回転のまま敵に魔法を放つ。
↓
なんと!
魔法に貫通効果を付与することに成功!無事に撃破!
↓
一礼
サクラ「威力すごない!?」
エスト『ちょっと泣いてくる……』(ぐるぐる)
辰夫「物理と魔法の新時代がここに……!」
エスト『辰夫!!!次はお姉ちゃんでサクラ・キャノンボールするよッ!!!』
辰夫「殺されますぞ……?」
なんと!!魔王軍に仲間割れの危機が!?
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☆20階層ボス:ゴーレム
一礼
↓
サクラ・キャノンボールをしようと辰夫が奮起
↓
あっさりと避けられカウンター辰夫ロケットされる
↓
ゴーレムに弾かれる
↓
辰夫撃沈
↓
逃げ回るエストが捕まる
↓
エスト☆フルチャージされる
↓
『だからそこはダメえ!?』
↓
効かない。クソ硬い。
↓
「よく見たらオデコに"E"って書いてあるぞ?」
↓
“E”を指でこすって消したら爆発四散。
↓
一礼
サクラ「ん?エスト様と辰夫の目から光が失われてるな?」
エスト『……。』
辰夫「……。」
サクラ「どうしたの二人とも!連携技は二人を信頼してなきゃできないんだよ?二人は最高の仲間だよ!?」
エスト『……。』
辰夫「……。」
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☆10階層ボス:ミノタウロス
一礼
↓
サクラ「……あれ?2人がいない。」
↓
仕方なく自分でワンパン。
↓
一礼
↓
「誰もいないって、私の扱いどうなってんのよ!」と後日会議
◇◇◇
途中で覚えたエスト様のスキルでいつでも配下を召喚する事ができるようになったので、それぞれの階層ボスはその場でとどまる事とさせた。
……そして、数週間にわたるダンジョン攻略の果てに、私たちは確かに強くなっていた──。
──そして私たちは、ついにダンジョンの出口にたどり着いた。
長い暗闇を抜けると、眩しい光が私たちを出迎えた。
サクラ「光だ…!」
思わず漏れた声が喜びと安堵に震える。
エスト『うわぁ…☆』
エスト様の声には、純粋な感動が溢れていた。
辰夫「ふむ……何百年ぶりか……。」
辰夫の呟きには、深い感慨が滲んでいた。
目の前に広がるのは、息を呑むような世界だった。
生命力に満ちた緑の大地。
遥か彼方に連なる雄大な山々。
果てしなく碧い空が頭上に広がっている。
そよ風が頬を撫で、花々の甘い香りが漂ってくる。
その光景は、ただの地上ではなかった ── 自由と、未来の象徴だった。
……その景色に、思わず息を呑んだ。
(……ムダ様……見えますか?……私たち、ついに……)
かつてムダ様が言っていた、あの言葉が胸に蘇る。
『今まで何度も転んだ。だが、転んだ数だけドラゴンスクリューの回転数が増えた。』
(そう……意味は分からない。でもきっと意味はある。だから私も…何度でも立ち上がる。起きあがれる。)
……そして、その先には──私たちの征服すべき世界が広がっていた。
サクラ「行きますよ。エスト様、辰夫。」
エスト『うん!世界征服だよ☆お姉ちゃん!』
辰夫「楽しくなりそうですな!」
サクラ「よーし!元気いっぱい!ニコニコしながら近くの街を火の海にして支配するわよー♪」
エスト&辰夫『「……。」』(ドン引きする2人)
サクラ「やだなぁ……冗談だってば~♪」
私たちは、この世界の“全て”を取りに行く。
ポンコツとヘタレを従えて ──!
(つづく)
\\次回予告☆//
ナレーション(天の声):
「数々の階層ボスを背後からボコり倒し、ようやくたどり着いた地上への出口!」
サクラ:
「ふふふ……ついに来たわね!この世界は全部、私が貰うッ!!」
エスト:
『お姉ちゃん!でも街を火の海にするのはダメだからね!?』
辰夫:
「やれやれ……我が背中の痛みは誰も気にしないのか……」
ナレーション:
「だがその裏で、エストの頭に奇妙な声が……!?」
サクラ:
「は?変な声?──ま、まぁ大体は筋肉のせいでしょ☆」
エスト:
『うん!?』
\\次回!//
『魔王チート解放☆便利すぎてポンコツ大混乱』
サクラ:
「世界征服はこれからだーッ!」
(キラキラBGM+謎に光るシルエットでEND)
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『敵の背後を取ったら、まず一礼しろ。攻撃の後にも一礼だ。
そうすれば正々堂々になる。これがノブレス・オブリージュ。
貴族の嗜みだ。優雅か?』
解説:
ムダ様は、暴力の瞬間すら“舞踏会の一幕”として捉えていた。
彼にとって戦闘とは無秩序ではなく、形式美を伴う社交だったのだ。
だから彼の戦いには“順序”がある。
まず一礼──これは「お邪魔します」の合図。
次に攻撃──それは「おもてなし」の実行。
最後にもう一度一礼──「本日はありがとうございました」。
ここまでで一連の儀式が完結する。
彼の哲学は、“角度よりもマナーを重んじる暴力”。
卑怯とは呼ばれない。むしろ“教育を受けた暴力”だ。
そして、敵が倒れた後に必ずムダ様は言った。
「礼は尽くした。優雅か?」




