#024 : 最強魔王軍爆誕☆魔王・勇者・竜王=地獄の闇鍋パーティー
前回までのあらすじ
→ サクラがうるさかった。
◇◇◇
そして地面にめりこんでいるドラゴンの眼に刀を向けドラゴンを見下ろすと、憧れの最高に厨二っぽい言葉をドラゴンに放った。
サクラ「あはは!トカゲぇ?……チェック!メイちょ……ぁ……ょ…」
(沈黙)
ドラゴン「まさか…ここで…最高の見せ場で…噛んだ…?」
(間)(コウモリが飛び立つ)
サクラ「……ふ…ふふふ…戦う私は…美しい……。」
ドラゴン「ご、誤魔化した!?ぐぅぅ…なんという心の強さだ……。」
サクラ「おいおいおいーおぃいー?どぅしたぁー?」
ドラゴン「……。」
サクラ「もう終わりなのかぁー?くはは……げははははは!ぶひーぶひーぶひー!」
ドラゴン「ヒロインの笑い方ではないな……くっ……しかし、まさか光魔法だと……?」
サクラ「ぶひー?まだ続けるのかな?かな?かなーッ?」
ドラゴン「……鬼が勇者……なのか?なぜ魔王と一緒にいる?」
サクラ「かなーかなッ かなッ かなかなかなーッ!www」(興奮冷めやらぬ中)
ドラゴン「……そしてサイコパスなのかな……怖すぎる……」
(間)(コオロギの声)
サクラ「色々あってね……私は勇者ってやつみたいね。」
「……私はこの小娘が大好きなのよ。……妹みたいなものだと想っている。だから全力で守る。」
ドラゴン「……ふ…良いだろう。我の負けだ。魔王の怪我の治し方を教えてやる。」
サクラ「あ!それから配下になりなさい。」
(沈黙)
ドラゴン「は……ぃ?」
サクラ「配下になれと言ってるのよーッ!」
私は刀をドラゴンの眼の前でぶんぶん振り回した。
ドラゴンの目の前で刀の風切り音がピュンピュン!と鳴り響く。
ドラゴン「……ちょッ! 刀……危なッ!?」
「……ふははははは!面白い!気に入った!」
ドラゴン「勇者と魔王が一緒にいるだと!? さらにはこの竜王も従える?」
サクラ「……。」
ドラゴン「これは非常に興味深い。とても面白い事になりそうだ!」
サクラ「……。」
ドラゴン「良いだろう!魔王の配下になってやるわ。」
サクラ「……いやいやいや!バカなの?」
ドラゴン「む?」
サクラ「エスト様の配下じゃなくて、わたしよ。わ・た・し。」
ドラゴン「ん……ぁ…?」
ドラゴンは考え込んでいる。
サクラ「私に負けたんだから、お前は私の下だろうが!この世は弱肉強食だろ?舐めんなトカゲ!おいコラ!トカゲーッ!」
地団駄を踏みながら刀をドラゴンの眼の前でめちゃくちゃに振り回した。
刀の風切り音がピュピュピュン!と鳴り響く。
風圧でドラゴンのまつ毛が揺れた。
ドラゴン「刀……危なッ……ちょ!眼はやめてください!!今のは危なかった!」
サクラ「おいどうなんだよトカゲ!」
(沈黙)
ドラゴン「……あれ……?この人……前回…… 靴を舐めて謝ろうと思いましたが靴を履いてないから爪でも良いですか! って…泣きながら命乞いした人ですよね……?マウントを取るとこんなにも変わるのか…?」
サクラ「おぃい!!聞いてるのかよぉおお!?」
刀の風切り音──ピュンピュンピュンピュンピュンッ……サクッ(鼻をかすめた)
ドラゴン「鼻ァ!!……わ、わかりました……」
サクラ「よし。よろしい。」
サクラ「あ、言っとくけど、私が勇者だとエスト様に喋ったら……お前の尻尾が何回まで再生できるのか確認するからな?楽しみだな!?」
ドラゴン「は、はい……」
サクラ「よし。私の名前はサクラよ。これからよろしく。」
ドラゴン「はい…。」
私はニッコリ微笑むと刀を収めた。
その私の姿をドラゴンはしばらく見つめていた。
その視線に、少しだけ、懐かしさと……哀しさが滲んでいた気がした。
ドラゴン「……ユズリハ殿……」
その言葉に、私は思わず眉をひそめる。
サクラ「は?何それ? 私のことじゃないわよね?」
ドラゴン「……いえ、失礼しました。少し、記憶が混ざったようです」
(……ユズリハ?誰だそれ?)
(……なんか引っかかるな……なんか懐かしい……?)
サクラ(ふーん?ま、いいか。)
サクラ「で、お前の名前は?」
地面にめりこんでいたドラゴンが起き上がりながら言った。
ドラゴン「我の名は リンドヴルム です。」
同時に私の脳内にムダ様の言葉が蘇る──。
『支配ってのはな、威張ることじゃない。
“名付けた責任”を背負うことだ。
俺は昔、サボテンに「愛子」って名付けた。
愛が欲しかった。三日で枯れた。責任、重かった。
愛ってなんだ?』
(ムダ様。分かりました……愛と責任ですね……)
(……え、サボテン?まあいいか。ありがとうございます。)
(大切なのは責任と愛ッ!!)
サクラ「うん。"ヴ" が言いにくい!"辰夫"で良いな!」
(沈黙)
辰夫(☆New☆)「……リンドヴルムとは誇りある──」
サクラ「辰夫な!はい終わり!次!」
辰夫「誇り……」
そんなこんなでドラゴン(竜王)の辰夫を配下に従えた。
── その時である。
(♪テレレレッテッテッテー)
【サクラのレベルが205に上がりました】
【新スキルを習得しました】
・格闘
・刀技
【新称号を獲得しました】
・竜王を従えし者
【エクストラスキルを習得しました】
・光の加護(※なぜか習得できた)
【スキル進化】
・怪力 → 熟練度上昇により《肉体強化》へ派生!
《天の声:お!スキル進化もできるぞ!やるか?やろうぜ!》
【進化候補】
・スキル《体温調節》:進化可能です。
・スキル《冬眠》:進化可能です。
《なお、私含めてみんな望んでます。面白そうだから》
(沈黙)
サクラ「誰が進化すんだよバカァ!!出てこい天の声!!」
辰夫「……。」
やたらと煽ってくる天の声にツッコミを入れている私を見つめながら辰夫は怯えていた。
サクラ「そんな事より辰夫!エスト様の怪我の治し方を教えなさい。魔王に光の回復魔法はダメなの?」
辰夫「は、はい!……光の魔法は魔王の肉体に害をなします。ですが──」
辰夫は真剣な顔で続けた。
辰夫「我の負の魔力なら、魔王種の身体に調和します。治癒の効果を発揮できるはずです。」
サクラ「ブレスで治すの?」
辰夫「いえ……ブレスは破壊の力。危険すぎます。」
サクラ「なるほど?」
辰夫「我の魔力を直接、魔王様の傷に流し込みます。それが最も安全です。」
サクラ「やっぱりそんな感じなのね。では辰夫!最初の命令よ!エスト様に魔力を!」
「はい。」
フォオオオオオ……
辰夫は両手をエスト様の傷口にかざした。
禍々しい黒い魔力が、まるで夜の霧のようにエスト様を包み込む。
エスト様の傷を覆った瞬間──傷口がまるで時間を巻き戻すように閉じていく。
(静寂)
エスト(寝言)『ぅ……ん……むにゃむにゃ……うるさい……』
サクラ「良かった…。これで一安心ね。」
辰夫「そうですな。じきに目を覚ますかと。」
ホッと胸を撫で下ろした私は、その場に座り込んだ。
ドサッ。
サクラ「はぁ…疲れた…ぁ……」
── こうして、前代未聞の魔王と勇者と竜王のパーティーが誕生したのである。
(つづく)
※次回!エスト様が復活!?そしてダンジョンの攻略開始ッ!?
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】 :0.6%
【支配地域】:竜王リンドヴルム(通称:辰夫)/ 常闇のダンジョン100層
【主な進捗】:異世界初のドラゴンにドラゴンスクリュー成功。
竜王を配下に加え、エストも無事回復。
【特記事項】:ムダ様の夢が叶った。
配下の名付けセンスは崩壊中。
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『支配ってのはな、威張ることじゃない。
“名付けた責任”を背負うことだ。
俺は昔、サボテンに「愛子」って名付けた。
愛が欲しかった。三日で枯れた。責任、重かった。』
解説:
ムダ様にとって“支配”とは、上下関係ではない。
それは「呼び名を与えた瞬間、自分の一部になる」という、恐ろしく人間臭い哲学だ。
ムダ様もかつて、コンビニのポイントカードに「チャッピー」と呼びかけていた。
だが、ポイントは有効期限で消滅した。
名付けには常に“喪失の覚悟”が要る。
彼は言う。
「名付けとは魂の契約だ。責任を持って愛せ。たとえそれがサボテンでも。」
……なお、ムダ様はその翌週、新しいサボテンに「愛美」と名付けた。




