表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第01章 : 恥ずか死お姉ちゃんとポンコツ魔王の転生録
14/174

#014 : チートスキルDE☆ネタスキル


前回までのあらすじ

→ クマが可哀想だと思いました。


◇◇◇


【現在地】パンジャ大陸南東部・常闇のダンジョン(魔王の間)

【視点】サクラ

【状況】異世界生活5日目。クマを八つ当たりで倒して食料確保に成功。


◇◇◇


ダンジョンに静けさが戻る。

なんだかんだで、魔王軍の “初めての戦闘” だった。


そして、このモンスターを食べて今日は休むことにした。

魔王の間にモンスターを持ち帰ったが、料理が出来ないので焼いて食べるしかない。


調理室の隅で火をおこし、クマ型モンスターの肉を串に刺して焼いた。

肉から滴る脂が炎に落ちるたびに、ジュワッと音を立てる。煙の香ばしい匂いが漂う。


サクラ「いやー……人間だった頃の私なら……こんな得体の知れない肉を食べるとか絶対に無理だったんだけどねぇ……」


串に刺した肉を持ち上げ、じっと見つめる。

外側はこんがりと焼け、肉汁が滴っている。


一口かじった。


肉はたんぱくで、それでいて意外なほど柔らかい。

血の味がしない。脂の甘みが舌に染み込んでいく。


……うまい。

それだけで、世界をちょっと許せる気がした。


その一口で、心も体も満たされていく気がした。

焦げ目の香ばしさ。脂の甘み。


噛むたびに、力が溢れてくるような感覚 ──!


食べながら、ふと考える。


(鬼の体に変わって、味覚も変わったんだろうな……。)


昔の私だったら、こんな得体の知れない肉、絶対に口にしなかった。

……昼休みのコンビニで、味のしないサラダチキンをもそもそ食べてたくせに。


でも今は躊躇どころか、「次はもっと美味いモンスターは無いかな?」とすら思ってしまっている。


サクラ「ま、ムダ様も『成長に努力は不要だ。利用できるものは全て利用しろ。』って言ってたしね?深く考えない。」


サクラ「……ムダ様、私、人間やめてくスピード早くないですか?」


《天の声:早い。けど効率的だ。》


サクラ「お前に言ってねーよ!!それに効率の問題じゃねぇ!」


(うーん。人間の感覚、どんどん薄れてきてるな……。)


そんな自覚があった。

だが、不思議と嫌悪感は無い。


むしろ、新しい自分の力に期待すら感じている。


サクラ「ビバ!ジビエ!」


エスト『お姉ちゃん、肉もっと焼くねー☆』


サクラ「はーい。お願いしまーす。」


(うん、もう気にしない。美味しければそれでいい。)


私はじっと肉の串を見つめた。

まだ熱が残る鉄串を、指先でくるくると転がす。


そして、おかわりのクマ肉を、ガブッと──いったその時!



\\ ぺったん♪ 新スキルを習得しました! //

====================

【新スキル習得】:冬眠(Lv1)

 → 体温を低下させて長期間の省エネ生存が可能になります。

====================


(静寂)


サクラ「え……なにこれ?クマの肉食べたら……冬眠……?できるようになったんだけど……?」


スキル欄に “冬眠” の文字が追加された瞬間、私は静かに目を閉じた。



……無言。(エスト様の鼻歌が響く)



焼けた肉の匂いだけがやけに強く残る。


調理をしながら鼻歌を歌うエスト様の声が小さくなっていく。

世界は変わらないのに、私だけが変わっていく気がした。


“冬眠”について考える。


サクラ「……スキル……なのこれ……?」


ギャグみたいなスキルだが、なぜか笑えなかった。


──なんか、嫌な予感しかしない。直感が脳裏をよぎる。


(私、このままずっとネタスキルしか覚えないのでは?)


(……うん。きっと何かの間違いだ。)


私は串を置いた。そっと深呼吸する。


(……すぅ)


焦げた肉の匂いが、少しだけ心を落ち着けてくれた。


こないだ "偏食" から進化した "暴食" ってスキルの効果か!?



\\ ぺぺぺぺったん♪ 暴食 を解析しました //

====================

【パッシブスキル】:暴食(自動発動)

 → 七つの大罪の一つ。倒した/食べた対象の特性を確率でスキル化します。

====================


(顔を擦り付けるようにステータス画面を確認)


サクラ「おおおおお?……チートだ!これ絶対チートだよね!?異世界転生者についてる系のやつだよね!?」


(やっと来た……まともそうなスキル……!)


私は鼻息荒く、勝利宣言を叫んだ。


サクラ「エスト様ぁあ!私、どうやら!“食べたらスキル取れる”タイプのチーターですッ!!」


エスト『えええー!?めっちゃレアだよそれ!?すごいじゃん!』


サクラ「見てください! "冬眠" です!!」

エスト『おおお!冬眠ッ☆』



\\ ぺったんこぉー♪ ステータスを更新しました //

====================

【スキル一覧・抜粋】

・怪力(Lv10)←殴りすぎ

・偏食(Lv5)←野菜嫌い進行中

・暴食(Lv3)←ネタスキル量産機

・冬眠(Lv1)

 → 体温を低下させて食料の少ない冬季間を過ごす事ができる。

 ←NEW!←役に立つかは未定!

====================



サクラ「とう……」

エスト『……みん』



サクラ(……。)

エスト(……。)

炎がパチ、と小さく弾けた。



サクラ「…と、ととととと冬眠?……エスト様……私、何か悪いことしましたか…?」


エスト『お姉ちゃん!泣かないで!』



サクラ「…………。」(膝から崩れ落ちる)



《天の声:冬眠は役に立たないように見えて、実は強力な生存スキルです。しかし、サクラのような「動いてないと死ぬようなタイプ」には、概ね向いてません。》


サクラ「うるせーぞ!?」


まぁでもチートスキル持ちと分かって少し嬉しかった。


(……でも、なんでクマの冬眠なんかが、スキルになるんだ?やっぱり私、この世界に遊ばれてる?)



《天の声 : ……“暴食”は巡りを乱す。》


(え?……なに今の語り口)


《天の声:サクラ。お前は未だ気づかぬ。己が、世界の“鍵”に触れていることを。》


(え、ちょ、マジで何なのこのナレーション!?)


《天の声:……まぁゴミみたいなスキルしか覚えないけどな。》


「最後に台無しにすんなや!!」



\\ ぺったん♪ 大サービス!新スキルを習得! //

====================

【新スキル習得】:鮭取り(Lv1)

 → 川で鮭を取るのが上手くなる。

  *鮭限定です。異世界には居ないかも。

====================


(沈黙)


サクラ「……こいつぅううううううう!!!」



(つづく)



サクラ「鮭取り……このスキル使うとどうなるんだろ?使って──」


《スキル:鮭取り 発動──》


サクラ「おい!勝手に発動したぞ!?」


(間)


《周囲に鮭がいないため、代わりに“似たもの”を召喚します。》


サクラ「ん?似たもの!?」


(ズゴゴゴゴゴ……)


《召喚対象:魔界超サーモンキング(Lv999)》


サクラ「ちょ!待てやああああああああ!!」



◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:0.18%(探索圏拡大+食糧自給の確立)

【支配地域】:常闇のダンジョン(魔王の間周辺)

【主な進捗】:クマ型モンスターを撃破し、食料源として活用。

       ダンジョン内の生態系とリスクを把握しつつ、

       生活基盤の足固めを進行。

【特記事項】:征服とは「慣れ」である。

       闇も、怪物も、クマの肉も──噛み続ければ、美味い。


◇◇◇


──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『成長に努力は不要だ。利用できるものは全て利用しろ。』


解説:

ムダ様の「努力不要」は怠惰のすすめではない。

“努力”って言葉を口にした瞬間、負けたと思ってる。

努力してる時点で、世界に使われてる。

利用してる奴は、世界を使ってる。

ムダ様は“使う側”だ。


だから言う。

「利用できるものは全部使え」

──敵の怒りも、観客の歓声も、照明の熱すらも。


ムダ様はかつて言った。

「リングに上がる時点で、空気も武器だ。呼吸で勝て。」

意味はわからない。

でも聞いた奴は納得した。勢いがあったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
異世界に居ないかもしれない鮭取りは笑うw
一か八かエスト様を食べれば……(; 'ω')ゴクリ いや、そんな事しないよねきっと! 冬眠いいなぁ、私も欲しい!!
 鮭取りwww  冬眠に鮭取りってネタスキルがツボるwww  鬼なのに熊寄りのスキルっ、ゆっくりですが楽しく読み進めて参りますっ。  あかん腹痛いっw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ