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紅の剣と呪いの魔剣 11


 バイスの様子を見ながら、俺たちも少し休む。

流石にしばらく立てなかった。


 顔色がよくなり、呼吸も安定している。

きっとバイスは大丈夫だろう。


 孤児院でお昼をごちそうになり、子供たちと少し遊んだ。

みんな以前よりも元気で笑顔が増えている気がする。


 エレインさんはバイスの事が気になるようで、ずっとバイスと一緒にいた。

そして、日も傾きかけたころ、再び三人でバイスの部屋に集まった。


「今夜は念のため、私は残りますね」


 エレインさんは孤児院に残り、俺は宿に戻ることにする。

俺も残ろうと話したが、断られてしまった。

ニコアもエレインさんと二人になりたいってことかな。


 宿に帰ってもまだリリアは帰っていない。

どれ、少し休んだら引越しの準備でもしよう。

そう思いながらベッドで横になる。


 気が抜けたのか、気が付くと俺は夢の世界に旅立っていた。


――

 

 バイスの呪いが解けたその日の夜。

街の隅にある酒場の裏に二人の姿が見え隠れしている。


 一人は長身のフードをかぶった女。

そして、もう一人はローブから金色の髪をちらつかせている少女。


「で、どうだった?」

「……。あのモンスター寄せのお香は、あなたが?」


 女の頬が吊り上がる。


「あぁ、私が手配した。なかなか良かっただろ? それで、あいつの……」

「死ぬところでした、あと少しでみんなが……」

「そんなことは聞いていない。ナイフは人になったのか?」


 しばらく沈黙の時間が流れる。


「なりませんでした。かなり危険な状況でナイフを渡しましたが、人の姿には……」

「そうか、無理だったのか……。それで、奴の家には潜り込めそうなのか?」

「明日、引っ越すらしいので、顔を出しに行きます。そのときに……」

「そうか、では引き続き調査を――」


 少女はフードを取り、真剣な目で女をにらみつける。


「もう、あなたの指示には従いません。人を殺めるのは嫌なんです」

「……そう。だったら、これはもういらないんだな」


 女の懐から小瓶が出てきた。

今までずっともらっていたバイスの薬。


「いらない。もう、必要ありませんから。二度と、私にと弟に関わらないで下さい」


 路地裏に響く声。


「……そうか、もういいのか。残念だな、もう少し使えると思ったんだが……。まぁいい、好きなようにすればいいさ」

「その……。薬は助かっていました。そこは感謝しています」


 小瓶を懐に戻し、女は暗闇に消えていった。

少女はフードをかぶり直し、路地裏を後にする。


 これで、もう終わり。

弟もきっと助かる。それに、アクトさんの事も……。


 うす暗くなった通りを一人の少女が歩いている。


 街はまだ眠りにつかない。

酔った冒険者、歌う吟遊詩人、市場もまだ開いているお店がちらほらある。

私はこの街に長く住んでいた。いい街だった。


 私は今日、一つ決意した。

それがいい事なのか、そうじゃないのかはわからない。

でも、自分のためには必要なこと。

エレインさんと話をして分かった。

私は自分の為に、バイスや孤児院のみんなのため。

そして、アクトさんの為に……。


 頬に流れる涙を拭き、少女は手を握りしめる。

きっと、わかってくれるはず。きっと……。




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