魔剣退治と不気味な一軒家 5
キッチンで手に入れた包丁を片手に日記のあった部屋に戻ってきた。
もしかしたら日記に何かヒントがあるかもしれない。
「アクト様、日記を開きましたが何を?」
「その日記の中に、包丁とか料理とか、この包丁に関わりがありそうなものはないかな?」
リリアがページをめくり、読み始める。
その間に俺は包丁を手に持ち、じっくりと観察する。
普通の包丁と比べると少し長め。
だが、何度見ても特殊な包丁には見えない。
さっきまで見えていた光るもやもやみたいなものは消えてしまい、手に持つ包丁が少しだけ淡い光を放っている。
きっと、何かあるはずだ。きっと何かヒントが……。
「あ、アクト様」
日記を持ったリリアが俺の隣にやってきた。
そのページにはこの包丁について少しだけ書かれている。
旦那さんが奥さんの誕生日にプレゼントとして渡されたこと。
奥さんのため旦那さんがオーダーメイドで作ってもらったようだ。
そこの鍛冶師はよく調理器具も作っており、オーダー品にはそれぞれ名を打っている。
奥さんの手にした包丁には『セーラ』、鍛冶師の名前は『ノックス』と書かれていた。
「この包丁の名前はセーラさんですかね?」
「恐らくそうだろう。でも、さびていて刻印とか全く見えないんだよね」
「一度これを作った方に見てもらって、直してもらうのは?」
「そっか、もしかしたらまだ街にいるかもしれないな。セーラ、俺の声が聞こえる?」
ぼんやりと光る包丁に向けて、俺は語りかけた。
「はい。声は届いております」
「あなたの名前はセーラさんでいいのかな?」
「私の名前は、セーラ。セーラ=ノックス……」
どうやら間違いはなさそうだ。
バッグから少し長めの布を取り出し、セーラをくるむ。
刃の部分が完全にくるまったとき、淡い光も自然と消えてしまった。
「この日記、持ち出してもいいかな?」
「そうですね、後で返せばいいのでは?」
日記も念のためバッグにしまい、廃屋から外に出てみる。
外はすっかりと暗闇に覆われ、真っ暗になってしまっていた。
「さ、さすがに暗いですね……。そこに生えている木とか、ちょっと不気味ですよ……」
風が吹き、木々のざわめきが聞こえる。
「ま、何年も放置していたらこうなるよな。もし、この家がもらえたら、手入れしないとな」
「この状態をですか?」
「このままだったら住むことができないだろ?」
「確かにそうですが……」
廃屋を後に、一度ギルドに寄ってみる。
深夜の時間帯は受付の人も一人しかいない。
もちろんクエスト関係の受注や換金もできない。
「すいません」
「ん? なんだ、こんな時間に」
受付にいたおじさんは、嫌そうな目で俺を見てくる。
「えっと、ちょっと聞きたいことが」
「あーん、こんな時間にか? 子供は早く帰って寝ろ、明日だ明日」
受付カウンターにはどうやらお酒が入ったグラスが置かれている。
仕事中にお酒ですか……。
「子供じゃありません! それになんですか、そのグラスの中身は。まさかお酒とかではないでしょうね?」
リリアが強気になっている。
廃屋で見せていた、おどおどした態度は全く見せない。
もしかして、怖がりなのか? ナイフなのに。
「さ、酒じゃない。ただの……、水だ」
顔を少し赤くしたおじさんはグラスをカウンターの奥に移動させてしまった。
「わかりました。それは、水ですね。はい、水です。ところで、ノックスさんという鍛冶屋さん知りませんか?」
「ノックス? あー、ノックスな。あの変わり者の鍛冶屋だろ?」
どうやら有名人らしい。
「その方の店か家を知りませんか?」
「家はさすがに知らねーな。店だったら、この道をまっすぐダンジョンの方に向かって――」
おじさんはなぜか丁寧にお店の場所を教えてくれた。
急に態度を変えたけど、なんでだろう?
「ありがとうございます」
おじさんにお礼を言って、リリアとギルドから外に出ようとした。
が、おじさんは急に立ち上がり俺達に声をかけてきた。




