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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<三章> ミーアとアールヴ

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〘五十九話〙非常識ミーア様とリイ=ナの受難?

 ミーア様と一緒にオヴィリーネの村へと向かうことになった。

 

 湖の現状についてどうやって話を切り出すか悩む必要すらなく、なぜかミーア様は湖のことをご存知で僕は気負ってた分、ちょっと肩透かしを食らった気分になった。


 まぁ、警戒もされず色々説明しなくて済んだから良かったしとても助かったんだけどね。


 出会ってから一緒に過ごした時間なんて、まだまだほんの少しでしかないけど、ミーア様にはただただ驚かされることばかり。

 湖の水霊さまというのはほんと、僕なんかじゃとても理解できるような存在じゃないんだってことを嫌というほど思い知らされた――。



 出会いからして驚きから始まった。


 オヴィリーネ湖の主様で湖の水霊と僕たちが(あが)めてるミーア様が、まさか空を飛んでくるだなんていったい誰が想像できると思う?

 しかもそのお姿が、小さくて可愛らしい女の子だったりして僕はもう混乱の極みだった。だってほら、僕らは樹上宮(ツリーヴィラ)にある主オヴィリーネの器のイメージしかないんだからね。


 じゃあどんなお姿なら驚かずに済んだのかと言うと、それはそれでなんとも言えないんだけどさ。


 いずれにしても人が空を飛ぶなんて、見たことも聞いたこともなくて。



 ミーア様は水霊様であるのだから、そもそも僕らと同列に考えちゃダメなんだ。うん、そうだよ、そうそう。



 そんな風に自分なりに無理やり納得しようとしてたんだけど……。

 驚きは続いた。


 出会って間もないにもかかわらず、僕やじじ様はおろか、アールヴ族のことだってご存じで、ここに来た理由までも言い当てられた。遠く離れたこの場所に居ながら、どうやってそれをお知りになられたのだろう?



 それも水霊様のお力なんだろうか?



 そんなすべてを見通してそうなミーア様だったけど、お話をする時の口ぶりはたどたどしくて、話し慣れてない様子はとても愛らしくて。


 どうしようもなく守ってあげたくなる気分にさせられるお方だった。


 水霊様相手にそんな心配、おこがましいことだとわかってはいるんだけど……。

 そんな勝手な思いを抱く中、更なる驚きの中身はちょっと複雑だった。


 神々しいほどの体の輝きが弱まり、背中から優美に伸びていた四枚の羽が緩やかに小さくなっていき、ついには消えてしまった。

 (なか)ば透き通って見えていた肌も普通になり、ミーア様はどこから見ても凡人族の女の子にしか見えない姿へと変わられてしまった。


 どうして()()()()()()()姿()になるんだろ……。


 少し考えてみれば、大きな羽を伸ばしたまま歩き回るのはきっと邪魔だろうし、ほのかに輝く体なんて目立つし(わずら)わしかったりするだろうしで、案外面倒な感じなのかもしれない……。


 それについては、地面の上を歩くしかない僕に合わせてくれたんだって考えることにして、少しばかり嫌な気分になったことを誤魔化した。


 戸惑いを隠せない僕の様子に、ミーア様が興味深そうな目でこちらを見てきた。なんだか心の内を見透かされた気がして、そんな自分に嫌気がさした。


 そうだよね。


 細かいことを気にしてても仕方ない。

 どんなお姿であってもミーア様は主様で水霊様なわけで……。


 僕はそんなミーア様を少しでも理解できるよう、頑張ってみようと思ったわけ。


 まぁ少しだけね――。




 オヴィリーネ湖へ向かうことになったとはいえ、すでに日が暮れて辺りは暗くなってきた。夜の樹海の移動は危険以外の何物でもないし、今日のところは野営したいとお願いした。

 ミーア様は特に反対をする様子もなく一安心。夜でも気にせず突き進んでいかれたらどうしようかと思ったよ。


 そうなったら無理してでも付いていくしかないもんね……、ほんとホッとした。


 危険な夜の樹海でやれることなんてないし、こんな時は早めに食事を終え、さっさと眠るに限る。

 かさばる天幕なんて持ってきてないので、起こした火で暖をとりながら毛布にくるまって寝るだけなんだけど、今はミーア様が一緒だし、どうしたもんかな?


 焚き火用に調整してもらった火属性魔石を投入してあるから、少なくとも朝まで火が消える心配はいらない。よく乾燥させた木炭以上に発熱してくれる火属性魔石はとても便利で重宝してる。


 オヴィリーネ湖に移り住んだ頃はアールヴに火属性魔法士は居なかったらしいけど、凡人族との混血が進むにつれ、火属性のアールヴが生まれるようになってきたのはなんとも皮肉な話だと思う。


「これ、ごはん」


 いつもと勝手が違う夜営に、どうしたものかと思案に暮れていた僕にミーア様が声をかけてくる。

 応じてみれば、ぷりぷりとした大ぶりの腸詰が紐でクルクルとまとめられたものが小さな両手のひらの上に置かれていて、それを僕に向けて差し出してくれていた。

 腸詰はアールヴでもよく作られてて、貴重なたんぱく源になってる。僕も燻製したものはいくらか持ってきてたけど、少ない手荷物の中、無くなるのは早かった。

 ここ最近の食料は狩りをして得ていたんだよね。幸い樹海は食べられる獲物も多いし、アールヴであるからには僕も狩りは得意だから食うに困ることはなかったわけだけど……。


「え、ええっ?」


 出会って間もないのに、こうして驚かされるのはもう何度目だろう?


 さっきまで何も持ってなかったよね?


 っていうか、そもそもミーア様、荷物とか何も持ってないよね?

 いったいそれってどこから出てきたの?


 早く持てって感じで、ミーア様が差し出した両手をフルフルされたので、僕は慌ててそれを受け取りお礼を言う。


「あ、ありがとうございます?」


 びっくりしたせいで、ちょっと変な口調になってしまった。

 けど、晩ごはんの品数が増えるのは素直にありがたいよね。受け取って脇の糧食用の袋にとりあえず収め、ミーア様の方へ顔を向ければ、また両手を差し出してる。


 手のひらの上にはまた何か置かれている。


 こ、今度は何?



 パンだった。



 こんがり黄金色の焼き目がついた、表面がつるっとしたパン。

 まるで焼きたてのようないい匂いが僕の鼻を刺激する。大きなお皿くらいのサイズで厚みも僕の拳くらいある。


 それがしかも三段積み!


 そんな驚きのやり取りが何度か続いたのちの晩ごはんのなんと豪勢だったことか。


 腸詰とチーズの組み合わせは最強だと思ったし、瓶に入った柑橘類を絞ったと思われる飲み物も、とても濃厚な味わいで疲れた体に染み入るおいしさだったし……、これはもうオヴィリーネの村に居た時よりよっぽど上等な食事になったのは間違えようのない事実だと思う。


 ミーア様は、にこにこと可愛らしい笑顔を僕に見せてくれるけど、全然しゃべらないので疑問ばかりが膨らんじゃうよ。


 数々の品物はミーアさまの脇の下、お腹の横あたりから現れる。地に降り立ち、羽を消した後、これもどこからか現れたローブを羽織られていたので、出てくるところは見れないんだけど、そんな感じでどんどん取り出されたものだから不思議で仕方ないよ。


 まるでお腹に無限にしまっておける収納袋があるみたいだ。

 しかも食べ物も腐ってないし、なんなら飲み物は熱いのやら冷たいのやら出てくるしで……、もう最高かっ!


 水霊様のなさることだからと納得するしかないのだろうけど、旅を続けるうえでミーア様のそんなお力はうらやましすぎるし、僕もそれ欲しい! なんて思っちゃうのは仕方ないことだよね?


 まあ絶対無理だけど。



 寝るときは寝る時でまた()()()


 外で焚火に当たりながら並んで寝るものと思ってたんだけど、ミーア様が一言二言つぶやいたかと思えば、たぶん土魔法で創り出された半球状の土の家が瞬く間に出来上がった。

 モリモリと地面が盛り上がり、中が空洞になり、ついでに天井部に魔力の明かりが灯されたりする(さま)にあっけにとられ、僕はもう驚き疲れて何も言えなかったよ……。

 

 そりゃあ土魔法で手間をかければ同じものは出来るのかもしれないけど、詠唱あったの? ってくらいの短い言葉で魔法を行使し、早さ、ち密さも段違い。僕なんか真似したくてもとても無理。


 ここまでするのに魔力だってどれだけ必要なことか。

 改めてオヴィリーネ湖の主である、ミーア様の力を見せつけられた気分になった。



 いざ眠る段になって、出入り口までぴたりと閉じられてしまったのには驚いたけど、その時は魔獣に襲われることを思えばまぁいっかとそのままミーア様と並んで眠りについた。


 水霊様とはいえ、可愛らしい女の子と並んで寝るとか初めてな僕は、ドキドキして中々眠れなかったのはナイショだ。




 なんとか眠ったのはいいけど、しばらくして息苦しさで目が覚めた。

 おかしいなとは思ったときにはもう遅く、息をずっと止めたような苦しさが僕を襲った。


 くぅ、まじ死んじゃいそう。

 なんだこれ?



「ごめん、わすれてた……」



 僕が苦しんでる横で、まったく平気そうなミーア様がそう言ってなぜか謝られた。

 申し訳なさそうな表情を浮かべてたけど、僕はそれどころじゃない。


 し、死ぬっ!


 僕がジタバタしてる横で、ミーア様が壁に小さく穴を開けてくれたことで、どういう訳か息の苦しさは治まり、僕はなんとか死なずに済んだみたい。



 やばい。



 水霊様と僕とでなんだか色々常識が合ってない気がする!

 このまま一緒に旅を続けて大丈夫なんだろうか?


 一抹の不安を胸に抱いてしまった僕は絶対悪くないと思う!


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― 新着の感想 ―
[一言] 脇から食べ物をポンと出す光景、某バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんを思い出してしまう。
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