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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<三章> ミーアとアールヴ

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〘五十八話〙ミーアとリイ=ナ、驚きあって地固まる

 空に浮かんで大きな声出して気分に浸ってたら、今までに触れたことのない質の魔力を感じ取りました。


 動物や魔獣、人とも微妙に違うように思えます。


 とても気になるのでそろりそろりと空中を移動し、その魔力の出所を探ります。

 樹々が邪魔をして見通しが悪いですが、スライム体謹製魔力センサーにかかればそれくらいの障害、苦でもないです。


 魔力探索を始めてみれば、そちらも移動しているようで、なんと私の方に向かってきてるみたいです。向こうも魔力を探る手段があったりするのでしょうか?

 空を飛んでる今は、ミーア魔器官をフル活動してる状態ですから、魔力探知できるのであれば居場所バレバレな感じかもしれません。


 う~ん、少ない魔力で飛べるよう精進しないといけませんね。



 むむっ、あれですかね?



 ちょうど樹々の切れ目になったところで魔力の発生元っぽいのを覗き見ることが出来ました。


 ……って、ええっ?


 なになに?

 あれって……人、じゃない?


 こんな樹海(もり)の奥に……人?



 見つけたそれに思わず首をかしげてしまいます。



(あるじ)様、はじめまして!」



 ふあぁ?


 もしかして話しかけてきた?


 私に?



 いきなり大きな声で話しかけてきました、この人っぽい人。


 まだまだ離れてて、しかも高いところに浮かんでるっていうのに。


 っていうか『あるじさま』ってだれ?

 私に言ってるの?


 私は魔獣の楽園であるこの樹海(もり)の中、いきなり出会った見知らぬ人物に警戒しつつも、それ以上に湧き上がる好奇心を抑えることが出来ず、ジワジワ高度を下げ、その正体を(うかが)うことにします。



 ミーアアイに頑張ってもらいましょう。



 う~ん……。


 どこからどう見ても人です。


 男の子っていうより少年と言った方がしっくりくる見た目で、こんな場所にまったく似つかわしくないくらいのかなりの美少年です。


 けれど!

 そんなことよりです。


 この少年は今まで見た人たちと圧倒的に違ってるところがあります。


 そう!


 耳っ、耳がとんがっているんです!

 先っぽが上に向かってツンとしてるんです。



 エルフっ、きたーっっっ!



 せっかく異世界に生まれ変わったというのに、今まで普通の人しか見たことなかったのですが……、ここへきてついにファンタジーっぽいの、きた~!


 ゴブリンにオーク、オーガとかも居ないし、獣人(けもみみ)が居るって話も聞いたこともなかった。


 ゴブリンやらなんやら、そんなの居ない方がいいとは思いますが、どこか残念に思う私がいたのも事実。


 そんな私にとって、ここへきてのエルフ!


 なんたる僥倖(ぎょうこう)


 まぁ、ワイバーンは居ましたけれど、それはそれ。



 高さを下げに下げ、とうとうお互い顔が向き合えるところまで降りてしまいました。

 相対距離は三メートルほど、もう目と鼻の先です。


 でも足を下ろすことまではしません。

 

 なぜなら……背の高さ全然違うし!


 さすがにオルガには及びませんが、ドリスやアンヌよりは確実に大きいです。

 このまま地面に降りてしまったらチビな私は、恒例頭ナデナデポジションになってしまいます。


 何事も最初が肝心、対等なお話には目線を合わすのです。

 舐められたら終わりなのです!



「あ、あのっ」


 うわっ、美少年がまたなんか言ってきた。


 この美少年、癖のないグレーに近い茶髪が肩までまっすぐ伸びていて、肌もとても白くちょっと女の子っぽいですが、(まゆ)はしゅっとしてて、目付きも釣り目ぎみなので可愛いというイメージには至らず、やっぱ美少年ってことになります。深いエメラルドグリーンの瞳がとても綺麗です。


 それに今気が付きましたけど額の両脇、こめかみの少し上あたりに小さな角っぽいものがあります!

 

 何それ?


 属性が増えちゃいましたよ。

 鬼属性追加~。


 あっ、でもでも鬼と言うより、魔獣の属性に繋げた方がいいかもしれません。

 魔獣の特徴と言えば角や牙ですから!


 ああ、なんて興味深いんでしょう。


「あのっ! 主様っ」


「ふみゃ!」


 び、びっくりした。

 おかげで変な声出しちゃったじゃないですか!


 い、いけません。

 素性も知れぬ、見知らぬ人の前で考えに(ひた)ってしまっていました。


 油断しすぎです。


 ここは冷静に改めて少年の方をじーっと見つめます。

 私の視線に少年が少しひるんだ様子を見せましたが、意を決したのかしっかりこちらを見返してきました。しかも手の甲をこちらに向けるようにし、両腕を胸の前で交差させて立っています。


 な、なにそれ。


 どういうこと?


「主様、突然のお声がけ、すみませんでした。驚かせてしまったことお詫びします。えっと、その……、僕の名はリイ=ナ。主様の住まわれる崇高なる湖、オヴィリーネ湖のほとりに勝手ながら住まわせていただいてるアールヴ族の一人です」


 なんだか一気にいっぱい話してきましたが、言ってることが半分も理解できません。

 とりあえず名前はリイ……ナ? リイナかな? やっぱちょっと女の子っぽい名前だなぁ。でも美少年にはそれもアリなんだろね。


「その、主……様?」


 おっといけません、リイナ? がとまどっています。せっかく話しかけてくれてるんだから、ちゃんとお相手しないといけません。


 挨拶は基本、元日本のサラリーマンとしてはきっちり対応せねば。


「りいな? わたし、は、ミーア。よろしく、ね」


 返す私の言葉に一瞬キョトンとした表情を見せますが、すぐに嬉しそうな表情へと変わり、更に言葉をかけてきます。


「ミーア……、主様の御名(みな)はミーアと言うのですね? ミーア様、(とうと)き御名を教えていただき、僕感激です。じじ様もきっと喜びます」


 興奮しながらそう言ったかと思えば、腕は交差したままに片膝を立てて腰を落とし、私を見上げうやうやしく見つめて来るのです。


 とても満足げなその表情を見るにつき、私から変に突っ込みを入れるのもはばかられます。

 マジなんなのこれ?


「う、うん?」


 勝手に喜んでるのはいいとして、なぜこうもへりくだった態度をとり、妙に持ち上げる話し方をしてくるのかまったくわかりません。


 私のことを『あるじさま』とか呼んでるのと関係あるのでしょうか?


 あるじって、『主』でしょうか?

 なんで主?

 

 改めてリイナを見てみます。


 耳長エルフな美少年なことは置いておくとして、着ている服は腰下丈のありふれたチュニックで、腰にはベルトが巻かれ横に短めの剣を()いています。スリムなズボンに編み上げのロングブーツ。背負い袋をしょっていていかにも旅の途中のような(よそお)いです。全体的に暗い色合いでまとめられているのはなるべく樹海で目立たないようにするためでしょうか?


 それに先ほどからリイナを見ていると私の体がムズムズ(うず)くのです。


 どうにも落ち着けません。いったいなんだというのでしょう?


 だから更にじーっと見つめます。

 そんな私の様子に、まだ何か言いたげな様子を見せていたリイナも戸惑いが隠せないようです。


「ん?」

 

 ()()に気付いた私は相変わらず(ひざまず)いているリイナの目の前へとついに降り立ち、その胸元へと手を伸ばします。


「あっ」


 リイナが驚きの声をあげますが無視です。


 そのまま胸に下げられていたペンダントをむんずと掴んで手元まで引き寄せ、スライム体を(にじ)みださせた手でしばらくぎゅっと握れば邪魔な鎖やベゼルはぽろぽろと崩れてしまいます。


 広げた手のひらに残ったのは濃い紫色をした円錐(えんすい)状の魔石だけになりました。


 じっくり見てみると魔石は巧みにくり抜かれていて、中には()()()()()が少量が詰められています。


 リイナがつばを飲み込む音が私の耳まで届き、口をあうあうして物言いたそうにしていますが今は構ってられません。


 私は虹色魔石を創る要領でその魔石に魔力を送ります。それもめいっぱい。

 そうすればどうなるかは自明の理ですね。


 魔石は七色の輝きが入り乱れ、色彩が激しく変化したかと思えば、瞬く間に蜘蛛の巣状の亀裂がびっしりと入り、かすかな擦過(さっか)音を最後に(もろ)くも崩れ去って手のひらの上で細かな結晶の山となりました。

 残ったそれにふうと息を吹きかければ、チラチラと儚い光を目に残して飛散し、綺麗さっぱりなくなりました。


 手のひらに残ったのは中に入っていた液状のもの……。


 それは手のひらの上でびろんと広がり、少しの間プルプル震えた後、そのまま手の中に浸透し消え去ったのでした。



 …………。



 ふむふむ……、なる、ほど……。



 おかえり、ちっちゃな私。



 長い間のお出かけ、お疲れさま!



 うん?


 ()()()()が、まだ(ほう)けてる。


「いつまでぽけ~と、してる? みずうみ、もどる、でしょ?」


 仕方ないので声をかけてあげました。


「え、あ、はい! あれ? 僕そのことお伝えしましたっけ?」


 ふふ、驚いてる。


「むふふん、じじさま……アズ=イにいわれて、わたし、むかえにきた。だよね?」


 問いにずれた答えを返し、にやりと笑って上目でリイ=ナを見る。

 私って結構性格悪いのかもしれません。



 ――それはちっちゃな私から得られたもの。

 ちっちゃな私がアールヴたちの村で、今日まで蓄えてきた貴重な記憶――。



 っていうか、湖のほとりにそんな集落があっただなんて……。

 いったい私は何を見てたんだろ。


 いや、何も見てなかったわ……。


 ど、ど~せ私は引きこもりのスライム体ですよ~だ。



 まじ、びっくりだね……。



「そ、そうですけど! え、ええぇ~?」



 夕焼けに染まる樹海の空に、そんなリイ=ナの声が響き渡ったのでした。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 性格が悪いんじゃなくてたぶんドヤ顔したいだけや( ˘ω˘ )
[一言] ほほう あの貴族とは関わりたくないけど記憶の統合ができるならいつか奪い返しに… と思ったけど生かされ続けてること知らないんでした
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